【スペック】全長×全幅×全高=3925×1695×1535mm/ホイールベース=2500mm/車重=1110kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブターボ(154ps/6000rpm、21.4kgm/3500rpm)/価格=197万4000円(テスト車=230万4750円/UV&ヒートプロテクトガラス=5250円/RECAROシート+アクセントサイドパネル+エアアウトレットリング=16万8000円/MMES+4スピーカー=15万7500円)

三菱コルト・ラリーアート Version-R(FF/5MT)【試乗記】

実は、まじめなんです 2006.10.24 試乗記 三菱コルト・ラリーアート Version-R(FF/5MT)……230万4750円三菱のコンパクトカー「コルト」のスポーティグレードである「ラリーアート・バージョンR」MTモデルで、ホットハッチの鍛えられた走りを味わった。

ワルっぽい変貌

オーバーフェンダーにはくっきりとブラック塗装が施され、前後バンパーも黒で存在感を際立たせる。エンジンフード上にエアインテークが大きく開き、リアにはスポイラーが装着される。
このクルマの目指すものが非常にわかりやすく表現された外観だ。これ見よがし、といってもいいほど、スポーツモデルであることをアピールしている。コルトがデビューしたときに「まじめ まじめ まじめ」というキャッチフレーズを使っていたことを思うと、劇的なほどのワルっぽい変貌ぶりだ。

室内を見ると、これはワルというよりも、何というか、戦隊ヒーローものチックなセンスのデコレーションだ。コンソールのパネル、エアの吹き出し口のリングがメタリックなレッドになっていて、少々気恥ずかしく居心地が悪い。
オトナにはちょっとつらいんじゃないかと思ったら、これは標準の仕様ではなくて、レカロシートを選ぶと自動的に付いてくるものなのだった。レカロ好きがみんなこのインテリアを好むとも限らないように思うのだが。

とにかく、ほとんど死語になりかけていた「ホットハッチ」という言葉を全身で体現しているモデルであることはよくわかる。もともとデキのいいコンパクトカーであるコルトに強力なターボエンジンを搭載し、ボディ剛性を上げてサスペンションも強化して、走りに特化し、「ラリーアート」を名乗らせたのだ。とはいえ、従来はなぜかCVTモデルしかなかったのだが、新たにゲトラグ製5段MTを備えたモデルを追加し、パワートレインから内外装まで大きく手を入れて「バージョンR」となったわけである。今回は、5MTモデルに試乗した。

古典的なダイレクト感

ギアを1速に入れようとクラッチを踏んだ瞬間に、懐かしい感覚を味わった。まず、重い。チューニングが施されているとはいえ超ハイパワーとはいえないエンジンであり、昨今の軽いクラッチに慣れていたせいもあって、予期していない重さだったのだ。
そして、スプリングの反力がそのままつま先に伝わるようなダイレクト感も古典的で、ちょっとうれしくなる。響いてくるエンジンの鼓動は重くくぐもっていて、やり過ぎなほどその気まんまんな風情を漂わせている。

従来よりピークパワーが7馬力向上したエンジンは、低回転でもトルクが不足することはないものの、ターボエンジンであることははっきりと意識させられる。
1速に入れてアクセルを踏むとグッと盛り上がるトルクを感じるや否や2速にシフトアップしなくてはならず、3速までは瞬く間だ。ギアチェンジを急がされる感じはあざといとも言えるが、ホットハッチというのにはそんな演出が似合う。

ローダウンされたサスペンション、205/45R16のタイヤはダテではなく、コーナリング時の接地感は頼もしいものがある。ゴツいオーバーフェンダーは、スタイルだけではなく走りにも貢献しているのだ。
クルマ自身が低く低くと欲しているように感じられるのは、いかにも三菱車である。車高は1535ミリと低くはなく、ロールはそれなりに大きいが、不安感はない。ABSはもちろん、MTモデルにはASC(アクティブスタビリティコントロール)が装着されていることも、当然とはいえありがたい。



写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。



走りを支えるボディ剛性

山道での元気な走りっぷりはうれしいのだが、町中ではどうも分が悪い。心地よかったエンジン音は単にノイズとして耳についてくるし、しなやかさに欠ける乗り心地がだんだん煩わしくなってくる。そうなると、派手な外観が気恥ずかしくなってくるのだ。
このクルマが決して日常の穏やかなシーンにとどまるものではないことを、思い知らされる。ランエボほどではないにせよ、硬派なスポーツモデルを作ろうという開発者の意図が伝わってくる。

三菱では、このバージョンRに関して、ボディ剛性の強化に努めたことを強調している。スポット溶接の増し打ち、サスペンション取り付け部の剛性アップ、ハッチバック開口部の補強などでねじれ剛性を約30パーセント向上させたというのだ。走りを支える基礎の部分について、地道な開発努力を行ったということだ。ワルっぽい外観に似合わず、中身にはまじめさが詰まっているらしい。

正直言って、個人的には年齢的にこのワルぶった佇まいや先鋭なスポーティさはちょっとしんどかった。でも、ホットハッチが今もまだ生き残っていることを確認できたのは、うれしい驚きである。クルマを操る歓びを知るには、恰好のモデルだと思う。特に若い人にとって、ワルぶるには地道でまじめな努力が必要であることを、身をもって教えてくれるクルマだ。

(文=別冊単行本編集部・鈴木真人/写真=峰昌宏/2006年10月)

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