【スペック】全長×全幅×全高=5000×1895×1490mm/ホイールベース=3050mm/車重=1940kg/駆動方式=FR/5.7リッターV8OHV16バルブ(340ps/5000rpm、53.5kgm/4000rpm)/価格=646万8000円(テスト車=同じ)

クライスラー300C ツーリング 5.7HEMI(FR/5AT)【試乗記】

アメリカを象徴するカタチ 2006.09.05 試乗記 クライスラー300C ツーリング 5.7HEMI(FR/5AT)……646万8000円2006年7月8日、クライスラーのフラッグシップ300Cにステーションワゴン版が登場!ミニバンが人気の日本市場で、アメリカンワゴンはどう受け入れられるのだろうか。その魅力とは。

ワゴンはオーストリア製

なにげなく見たルームミラーに映ったリアウィンドウは、想像以上に遠くにあった。その瞬間、クライスラー「300Cツーリング」は貴重なクルマだと思った。
300Cツーリングは現在買える正規輸入車では唯一の5メートル級ワゴンであり、しかも唯一のアメリカン・ステーションワゴンだからだ。正確にはオーストリア製なのだが。

セダンの300Cは北米での生産販売がメインだが、ツーリングは母国では作られず、売ってもいない。同じプロポーションを持つダッジ・ブランドのマグナムが、その役目を担っている。しかし現在、北米で売られるアメリカンブランドのワゴンはこのマグナムだけだ。

かつてアメリカ車には、ステーションワゴンが数えきれないほどあった。それは日本人にとっては、クルマ以上の存在だった。アメリカという国の豊かさの象徴でもあったのだ。それが特別天然記念物並みに淘汰されてしまった理由は、もちろんミニバンとSUVが増えたことである。

昔のアメ車ワゴンそのもの

そもそも300Cが、メルセデス・ベンツEクラスのシャシーを流用して作られたうえに、それのワゴン版は母国アメリカでは生産も販売もされない。これはホンモノのアメ車のワゴンなのかと異議を唱える向きもあるだろう。でも300Cツーリングは、そこまで細かいことにこだわる乗り物ではない気がする。

江戸前のお寿司みたいなもので、産地よりも様式を堪能すべきではないかと思ったのだ。旧き佳き時代のアメリカン・ステーションワゴンの雰囲気を、新車で味わえる貴重な存在。あえて北米を外し、欧州や日本をメインマーケットとしたのも、そのあたりをアピールするという狙いゆえではないか。

ツーリングのボディは、リアドアまではセダンと共通だ。ジャスト5メートルの全長が、なぜかセダンより10mm短いほかは、スリーサイズも等しい。つまり前後席の広さも、リアのヘッドルームに少し余裕がプラスされたほかは同じだ。ということで早速ラゲッジスペースを観察すると、そこには典型的なアメリカン・ステーションワゴンの世界が広がっていた。

ルーフの一部まで開くことでアクセスをしやすくしたというリアゲートを開ける。後席を立てても630リッターを確保するという荷室は、奥行きこそたっぷりしているけれど、床は高め。床下にパーテションつき収納スペースを用意しているためもあるが、薄くて長いこの空間が昔のアメ車のワゴンそのもので、思わずうれしくなってしまった。

豪快なハンドリングを堪能

日本仕様のツーリングはV6の「3.5」とV8の「5.7HEMI」の2車種。セダンにある6.1リッターの「SRT8」はヨーロッパにも設定がない。どちらも5段AT、右ハンドルのみの設定だ。

今回乗ったのは5.7HEMI。1940kgの車重はセダン比で80kg重くなっているが、340ps/53.5kgmの前にはさしたる差ではない。アクセルに軽く足を乗せただけで、フーッという軽い吐息とともにスルスル速度を上げて行く。右足に力を込めれば豪快なダッシュを味わうことも可能だが、ルームミラー越しのリアウィンドウを一度目にしてしまうと、いい意味でやる気が失せ、ハイパワー&ビッグトルクを余裕に回すドライビングになる。

ちょっと残念だったのは乗り心地。これがEクラス・ベースか?と疑うほどアメリカンなルーズフィットを実現していたセダンと比べると、リアがやや硬めになっていた。ロードノイズも、以前試乗会で乗ったツーリングほどではなかったが、セダンよりはリアからの音が届いてくる。
逆にハンドリングは、試乗会で山道を走った経験を含めていえば、ボディ後半部の重さや剛性感の低下などを感じることはなかった。大きな後輪駆動車ならではの自然にして豪快なハンドリングを、このツーリングでも堪能することができる。

ボディが魅力

試乗会では3.5にも乗った。セダンと違うのは、やっぱり300CはHEMIじゃなきゃ、という意識にならないことだ。それだけツーリングには、ボディの魅力があるということなのだろう。

ちなみに北米版300Cツーリング(妙な表現だが)たるマグナムは売れ行き好調とのこと。この調子でいけばワゴン復活となるかもしれない。もしその夢が叶ったら、シボレー・カマロやダッジ・チャレンジャーと同じように、かつてのネーミングを復活させてほしい。ノマドとかカントリー・スクワイアとか。
ステーションワゴンはスペシャルティカーと同じか、それ以上に、佳き時代のアメリカを象徴するクルマのカタチなのだから。

(文=森口将之/写真=高橋信宏/2006年9月)


 
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写真をクリックすると荷室からのシートアレンジが見られます。
 
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