第280回:新型トヨタ・アベンシス試乗
乗ってビックリの“二重人格性”(小沢コージ)

2006.09.19 エッセイ

第280回:新型トヨタ・アベンシス試乗乗ってビックリの“二重人格性”

■ドイツ流に仕上げても結局昔のコロナ?

いや驚いちゃったよ、新型トヨタ・アベンシス。マイナーチェンジされたってんで、ちょいとワゴンを借りて乗ってみたんだけど、最初はあんまり感心しなかったのね。
確かにマイナー前より、味がしっかりしていて、ヨーロッパ向けらしいダンピングの効いた走りを十二分に楽しめる。ドアの重さ、立て付けなども含め、全体の剛性感も増しているようだ。

でもねぇ。マイナー前に感じたチグハグさは十分に残っていた。それは例えば足は硬く、締まっていて、なおかつステアリングも十分に重いのに、不思議とフラフラする部分。路面の凹凸に妙に敏感だし、乗り心地もバタバタした感じが残ってて、どうにもドイツ車のようにキモチよくないのだ。

アクセルやブレーキを踏んだ時の動きも、ダイレクト感があっていいんだけど、踏み初めが鈍かったり、ギクシャクしたり。

なんていうかな。“仏作って魂入れず”というか、“辛いだけで味のないキムチ”というか、ドイツ流にクルマを仕上げても結局素材は昔のコロナ? って感じなのよ。その印象は残念ながら相変わらず。

■トヨタ車共通の欠点

ところが高速で乗ってみてビックリよ。目が覚めたかのようにキモチいい。「これ、ホントに同じクルマ?」って感じ。まさに“二重人格的”だ。

最大のポイントはエンジン。その2.4リッター直4は、街なかじゃ「まあ、吹けはいい方だな」って思う程度なんだけど、高速道路で中回転から高回転領域までじっくり回してみると、結構濃密なフィーリングを持っているのがわかる。
排気音がフォォォォオンってキモチよく伸びると同時に、きっちりとトルクを積み上げていく感覚があって、4気筒なのに6気筒っぽい質の高さを持っているのだ。

それからね。妙に重く感じたステアリングや足まわりも、高速道路では逆に安心につながるのだ。つまりハイスピード領域では、クルマのいいところだけを抽出して味わえるのよ。

要するにキンキンに冷やしたおかげで、細かい味なんかどうでもよくなったビールとか、暑いなか、しっかりスパイス効いてればそれなりに美味しく感じるカレーライスとか、そんな感じよ。いやはや我ながら全然ホメてませんね(笑)。

しかし、こういうやり方、こういうクルマの調理法もあるんだなぁって感じたのも事実。要するにね。一部高級車を除き、トヨタ車共通の欠点というか、個性はステアリング・フィールやブレーキの踏み応えをほとんど捨てているところにあるのだ。
それはハッキリと割り切っている。というか、かえってそういう繊細な味わいがあるとジャマになると考えているフシすらある。

トヨタはそういう部分で勝負しないのだ。徹底的に高品質に感じるインテリアやエンジン、安心感や燃費で勝負する。そして今回も、新型アベンシスは高速走行比率の高いヨーロッパではある程度成功するんでしょう。高い安心感と品質とお買い得感でもって。

つくづく戦略のしっかりした会社だなぁって思う次第であります。オレも頑張らんと!

(文と写真=小沢コージ/2006年9月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』