第28回:『あまりにも不憫な』ダイハツ・アプローズ(1989〜2000)(その2)

2006.09.13 エッセイ

第28回:『あまりにも不憫な』ダイハツ・アプローズ(1989〜2000)(その2)

■『CAR GRAPHIC』では称賛された

徹底的にパッケージングを追求し、優れた居住性と走行性能、そして経済性を実現したリッターカーの初代「シャレード」によって、ダイハツの小型車づくりの技術は、玄人筋には高く評価されていた。発売された「アプローズ」も、地味ながらダイハツらしく真面目につくられた小型車という評価を自動車メディアから与えられた。

「4ドア+テールゲートの巧みな5ドア。魅力的な室内と多用途に向く後席。4ATの性能は平均的だが低速トルク十分。シャシーの総合性能は新しいスタンダード。燃費とブレーキは平均的、ABSもあり。内容に対して割安。長く育てて欲しい良心的な一台」
これは1989年11月号でFFのトップグレード「16Ri」をフルテストに供した『CAR GRAPHIC』に記された要約だが、同じく『CAR GRAPHIC』90年2月号では、アプローズは「自動車の良識を貫いた」として、「CG's CHOICE 1989-1990」全5台のうちの1台に選ばれている。

選出の理由は、「普通は普通でも、世間の平均値よりは高いところで見事にバランスが取れており、どこか欠点を指摘しろといわれても、すぐに思い浮かぶところがない」というクルマ自体のデキもさることながら、バブルさなかで国中が浮き足立っていた日本で、あえて“普通のクルマ”を世に出したダイハツの勇気と見識に敬意を表して、とのことだった。

ちなみにほかの4台は、「フェラーリ348」(もっとも輝いたスポーツカー)、「ユーノス・ロードスター」(もっとも話題を沸かせた)、「スカイラインGT-R」(技術の進歩を具現した)、「フェラーリ640/F189」(モータースポーツをおもしろくした)というラインナップだったといえば、いかに『CAR GRAPHIC』がアプローズを高く評価していたかがおわかりだろう。実際に16Riを長期テスト車として購入、90年1月号から91年7月号までリポートを掲載している。(つづく)

(文=田沼 哲/2004年5月25日)

16Xのインパネ。インパネは基本的には全グレード共通だが、16Riのみ空調関係のスイッチがプッシュボタン式となっていた。CDデッキはオプション。
16Xのインパネ。インパネは基本的には全グレード共通だが、16Riのみ空調関係のスイッチがプッシュボタン式となっていた。CDデッキはオプション。
リアシートの可倒機構は、座面を前方に引き起こしてから分割式のバックレストを倒す形式を採用しており、フラットで広大なカーゴルームが出現した。ちなみに366リッターのトランク容量もクラス最大だった。
リアシートの可倒機構は、座面を前方に引き起こしてから分割式のバックレストを倒す形式を採用しており、フラットで広大なカーゴルームが出現した。ちなみに366リッターのトランク容量もクラス最大だった。

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田沼 哲

田沼 哲

NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。