第26回:『さりげなさすぎ』マツダ・エチュード(1987〜89)(その4)
2006.09.13 これっきりですカー第26回:『さりげなさすぎ』マツダ・エチュード(1987〜89)(その4)
■次世代への練習台?
当時の日本には、マツダの考えたような都会派の“センシブル・ピープル”は1万人もいなかった、というと皮肉に聞こえるかもしれないが、事実としてエチュードが提案した「さりげない洒落っぽさ」に共感する人々は、それだけしか存在しなかったのである。
とはいえ「クルマもファッション」とする発想が早すぎたというわけではけっしてない。たとえばエチュードとほぼ同時期に限定1万台で発売された“着せ替えマーチ”である日産Be-1は、プレミアムが付くほどの人気商品となったし、1987年から88年にかけてフルチェンジされたホンダ・プレリュードと日産シルビアは、昼より夜が似合うデートカーとしてブームを巻き起こした。
ただしそれらがいずれもひとめ見てわかる“可愛らしさ”や“カッコよさ”を備えていたのに対して、エチュードはあまりに地味だった。「さりげないところが都会的でカッコイイ」という主張は理屈としては理解できるが、結果的には「さりげなさすぎ」て、ごく一部の人々にしか伝わらず、埋没してしまったのである。オシャレに着替えたファミリアとは言っても、ジーンズからチノパンに履き替えたくらいにしか、消費者の目には映らなかったのではないだろうか。
エチュードは一代限りで終わったが、ファミリアベースのパーソナルカーというポジションは、88年に登場した6代目ファミリア・シリーズの「アスティナ」に受け継がれた。ファミリアの名を冠するものの、背の低い専用の5 ドアハッチバックボディにリトラクタブルライトを備えるなどして差別化が図られたアスティナと“普通の”ファミリアの違いは、エチュードと先代ファミリアのそれより明確に見えた。そして正確な数字は不明だが、少なくとも街中で見かける頻度においては、エチュードよりアスティナのほうが高かったと思う。
そう考えると、エチュードの運命は儚かったものの、その名のとおり大衆車ベースのパーソナルカーを作る際の練習台としての役割は果たしたということなのだろうか。(おわり)
(文=田沼 哲/2003年11月25日)

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