【スペック】全長×全幅×全高=4520×1850×1290mm/ホイールベース=2685mm/車重=1670kg/駆動方式=FR/4.6リッターV8 DOHC32バルブ(324ps/6400rpm、42.9kgm/4400rpm)/価格=1207.5万円(テスト車=同じ)

キャディラックXLR(5AT)【ブリーフテスト】

キャディラックXLR(5AT) 2004.07.17 試乗記 ……1207.5万円総合評価……★★★★キャディラックが“ウルトラ・ラクシュリー・ロードスター市場”に投入した「XLR」。「メルセデスベンツSL500」や「ジャガーXK8」を向こうにまわす、新世代“キャディ”に、自動車ジャーナリストの金子浩久が乗った。
自動車ジャーナリストの金子浩久

“妖しさ”すら魅力

「キャディラックXLR」に試乗して、電動ハードトップ付き高級2シータースポーツカーとして、まず成功していると感じた。
低く、エッジを効かせたエクステリアの造形が個性的で、他の何にも似ていない。トップを上げても下ろしても、カッコいいデザインだ。ファーストカーはもちろん、セカンドカーにすらなりにくい、こういうカテゴリーのクルマは、何よりも強烈なアピアランスが大事である。その点、XLRの存在感は抜群に高い。生活感をまったく感じさせない、ある種の“妖しさ”のようなものさえ、魅力に転化できている。
走らせれば、アメリカ的なラクシュリー感を伴いながら、十分以上に速い。しかも、かつての“アメ車”に見られた粗野なところや、大味な感触がほとんどないのは驚きだ。総じて、キャディラックが標榜する「アート&サイエンス」をうまく表現して商品化されたといえるだろう。

写真をクリックするとハードトップの開閉が見られます。

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
「XLR」のオリジンは、1999年のデトロイトショーで発表されたコンセプトカー「エボーク」。2003年に、XLRとしてデビューした。プラットフォームのコンポーネンツを、2004年1月のデトロイトショーで発表された「シボレー・コーベットC6」と共用。GMジマンのハイドロフォーム(水圧成形)スチールフレーム、センタートンネルやアルミ製コクピット、樹脂パネルなどを組み合わせて構成される。4ドアセダン「CTS」と共通するデザインテーマ“アート&サイエンス”に基づく直線と平面を多用したボディが特徴だ。オープン機構の電動格納式ハードトップは、開閉に約30秒を要する。
エンジンは、(ぼぼ)新開発の4.6リッターV8 DOHC32バルブ「ノーススターV8」(324ps、42.9kgm)をフロントに縦置きする。5段オートマチックトランスミッションをリアに置くトランスアクスル方式を採用し、前:後=50:50の重量配分を実現した。前後ダブルウィッシュボーン+リーフスプリングサスペンションには、磁力で減衰力をコントロールする「マグネチックライドコントロール」を装備。ほかに、同じく磁力で制御する可変パワーステアリング「マグナステア」や、ABSとTCS、それらを統合した「スタビリトラック」など、多彩な電子装備を誇る。
(グレード概要)
XLRはモノグレードの左ハンドルのみ。日本に導入されるのは装備満載の豪華仕様で、前述の電子装備はもちろん、速度などの情報をフロントスクリーンに投影する「ヘッドアップディスプレイ」や、前方の走行車を感知して速度調節する「アダプティブ・クルーズコントロール」を搭載。機能装備のフルオートエアコンはもちろん、シートにもヒーター&クーラーが備わるほか、DVDナビゲーションシステム、BOSE製オーディオ+9スピーカーなどを標準装備する。



キャディラックXLR(5AT)【ブリーフテスト】の画像


キャディラックXLR(5AT)【ブリーフテスト】の画像
写真をクリックすると、ハードトップの収納時の荷室が見られます。

写真をクリックすると、ハードトップの収納時の荷室が見られます。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
豊富な装備を煩雑にすることなく、わかりやすく配置されている。ウッドとレザー、樹脂や金属など、さまざまな素材の色やカタチを変え、加工してインパネやインテリアを構成するが、デザイン的にも使い勝手の面からも混乱は見られない。うまく調和した空間をつくり出すことに成功している。
大径の速度&回転メーターは、とても見やすい。ただし、速度メーターの外周部に刻まれた「BVLGARI」の文字になんの意味があるのか、理解できなかった。ちなみに、リモコンキーにも同じ装飾が施される。
ブランドとしてのブルガリは、由緒あるイタリアの高級宝飾品メーカーである。最近は大量生産品のクォーツウォッチや、指輪なども販売するようだ。XLRのメーターデザインも手がけたというが、マークだけ(しかもプラスチック)をキャディラックの速度メーターに張り付けて、それをありがたがる人が何人いるのだろう。キャディラックだって、100年以上の立派な歴史があるのだから、いまさらこんなカタチでブルガリのチカラを借りなくてもいいのではないだろうか。24金ムク+ダイヤのトッピングでも付けているのなら、まだしも納得できるが。ヘンリー・リーランドが草葉の陰で泣いている。
(前席)……★★★★
8ウェイ電動調節機構付き革シートは大振りでゆったりとしており、しかも上半身をよくサポートする。外側からは太く見えるAピラーは、運転中それほど気にならなかった。シートの後ろにウインドディフレクターなどを装備しないわりには、オープン時の風の巻き込みはすくない。
ただし、トップの開閉に約35秒(実測)もかかるのがじれったい。遅くとも20秒台でないと、「ウルトラ・ラクシュリー」の面目が立たない。
(荷室)……★
荷室の面積は大きいのだが、エンジンをフロント、トランスミッションをリアに配置するトランスアクスル方式を採ることもあり、床面が高く容積はすくない。そのうえオープン時には、畳んだトップを収納するために空間がさかれてしまい、実質的な荷室スペースはほとんどない。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★
後輪駆動用に開発された4.6リッターフォーカム「ノーススター」V8エンジンは、連続可変バルブタイミング機構を吸排気カムに採用したこともあって、軽快かつスムーズにまわる。大排気量のトルク感もあり、新時代のアメリカンV8として魅力を有している。5段ATの変速もスムーズで、シーケンシャルモードを搭載。ワインディングで不満を感じることはなかった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
XLRの足まわりは、世界最速という1000分の1秒単位で減衰力の可変制御を謳う、磁気感応流体ダンパー「マグネチックライドコントロール」が備わる。乗ってみると、ふれ込み通り、路面からのハーシュネスや細かいバイブレーションなどを抑え込み、快適な乗り心地を実現している。しかも、車重1670kgの軽量(メルセデスSL500は1850kg)なボディとは思えないほど、重厚で安楽なものだ。一方、キビキビと軽快なハンドリングからはほど遠いが、それがまたアメリカ車らしさをかもし出している。

(写真=清水健太/2004年7月)



【テストデータ】

報告者:金子浩久
テスト日:2004年1月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年(初年度登録)
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)235/50ZR1897W M+S(後)同じ(いずれもMicheline Pilot HX)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(3):山岳路(6)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

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