【スペック】全長×全幅×全高=4850×1795×1460mm/ホイールベース=2880mm/車重=1640kg/駆動方式=FR/3.2リッターV6 DOHC24バルブ(223ps/6000rpm、30.4kgm/3400rpm)/車両本体価格=624万7500円(テスト車=同じ)

キャディラックCTS 3.2(5AT)【ブリーフテスト】

キャディラックCTS 3.2(5AT) 2004.06.04 試乗記 ……624万7500円総合評価……★★★★キャディラックが久々に後輪駆動を採用した、4ドアセダン「CTS」。独ニュルブルクリンクで鍛えた、新生キャディラックの先鋒を、自動車ジャーナリストの笹目二朗がテストした。
自動車ジャーナリストの笹目二朗

最上のスモール・キャディラック

FF(前輪駆動)コンパクトセダン「シマロン」(1982年)や、「オペル・オメガ」を流用した「カテラ」(1999年)など、これまでもV6エンジンを積む“小さなキャディラック”は登場してきたが、あまり芳しい評判は聞かなかった。「CTS」も同じ轍を踏む恐れがある。たとえ小さくとも、高級ブランドにとって“安物感”は禁物。たとえば、排気量を3リッター位に抑えたとしても、あえて象徴的にV8エンジンを載せるなど、キャディラックならではの演出が欲しいところだ。新設計の3.6リッターユニットも発表されたが、6気筒では「らしさ」が足りないのではないか。
長らくFFをつくり続けてきたのに、CTSを開発するにあたり、FRへ逆戻りしたのはなぜなのかも、イマイチ理解できない。アメリカ本国、北部の厳しい冬を、オールシーズンタイヤを履くだけで過ごすのは無理と思われる。CTSにも4輪駆動版を用意するとしても、それならばFFベースの方が製造効率が高かったはずだし、なにより素のままでもFFの方が雪に強い。

とはいえ、2003年に導入された初期のCTSに比べて、04年モデルは改善のあとが著しく、クルマとしてよい仕上がりになった。これまでのスモール・キャディラックのなかでは最上と思われる。日本市場(ほか)に向けて、右ハンドルを用意したことも評価したい。「セビル」や「ドゥビル」と同様、ワイパーやブレーキもちゃんと右専用とは気が利いている。



【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
アメ車の古典的イメージ「デカイ」「ユルい」から、「カッコいい」「クール」「スポーティ」への転換を図るべく打ち立てられた、キャディラックの新テーマ「アート&サイエンス」。それを反映した1号車が、スポーティセダン「CTS」である。左右ハンドルの設定、1.8m以下の全幅など、北米のみならず、世界市場を視野に入れて開発。さらに、独ニュルブルクリンクサーキットを3年間走り込むなど、従来のキャディラックとは異なるクルマに仕立てられた。日本への導入は、2003年3月から。
ここしばらくFF(前輪駆動)をつくり続けてきたキャディラックが、久しぶりにFR(後輪駆動)を採用したことも特徴。CTS用に、新プラットフォーム「シグマ・アーキテクチャー」を開発した。フロントに縦置きされるエンジンは、新開発の2.6リッターV6(182ps)、またはオペル譲りの3.2リッターV6(223ps)。トランスミッションは5段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
CTSは、エンジンの違いがそのままグレードとなり、3.2リッターV6搭載モデルがトップグレードとなる。装備品にほとんど差はなく、電動調節機構付きレザーシートやエアコン、車両を安定させる「スタビリトラック」をはじめとする電子デバイス、SRSフロント&サイド&カーテンエアバッグの主要装備は、いずれにも標準装着。3.2リッターのみ、DVDナビゲーションシステムが備わるほか、CDチェンジャーが3連奏から6連奏にグレードアップされる。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
黒地に白文字の正調派デザインの計器類は読みやすく、落ちついた高級感がある。無闇に円周を枠で縁取らないすっきりした処理もいい。部分的に配された木目は、アメリカ流に節目のない真目を使うためか、“いかにも”なイヤ味がないことも好印象。ボタンやスイッチ類の数多さに最初は戸惑うが、“見ればわかる”式の単純操作ゆえ、時間とともに馴染む。ナビゲーションのモニターも見やすい位置にある。
(前席)……★★★★★
革張りシートながらアメリカ流のソフトな感触で、クッションが沈み込むため、それほど滑りやすくはない。両端の盛り上がりは適切に横Gから守ってくれるし、たっぷりしたサイズで包まれる感覚は上々だ。ランバーサポート調整をはじめ、各種調節もパワーで楽々。ボンネットがすこしみえる、前方の眺めも良好である。パーキングブレーキはキャディラックの伝統に反し、ATシフターをDレンジに入れることで開放される方式ではなく、手元のレバー操作で解除する方式へと一般化されてしまった。
(後席)……★★★
やや高めに座るポジションといい、センタートンネルの大きな張り出しといい、FR化した弊害がみられる。ヘッドルームが不足するわけでもなく、座り心地は悪くないのだが、リアに置かれたディファレンシャルやドライブシャフトの存在は、音や振動面で確実に不利に働く。そうした意味でも、CTSはドライバーズカーなのかもしれない。ドア開口部は広く乗降性は悪くないし、Cピラーによる隠れ具合もいい関係にある。つまり、よくできたサルーンの要素を持っているのだが。
(荷室)……★★★
フロアは高めでサスペンションの張り出しもあり、床面積は限られる。しかし、デッキが高いので天地方向の余裕はある。スプリット可倒式のリアシートバックを倒せば、室内と繋げて使うこともできる。内張りの処理などもきちんとしているところは、キャディラックの名に恥じない。トランクリッドはバンパー高から開くが、敷居は高め。開けたとたん荷物が転げだすことはない。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★
エンジンは、クラスを考えるとややノイジーながら、活気がみなぎり高回転までストレスなく、かつ気持ちよく吹け上がる。オペルなども使う54度の狭角V6エンジンは、不等間隔爆発による体感できないような極微の振動が、自然のトラクションコントロールとして作用する。これはレーシングカーなどに見られる隠し味であり、うっすら湿ったような路面でトラクションを得るのに有効だ。しかも、最新のV6ユニットでは聞くことができない、独特のメカニカルサウンドを放つ。5段ATは、1〜3速がクロースしたギアレシオを持ち、スムーズで元気な加速を実現。特に、2〜3速間を繋げる設定は絶品だ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
1640kgの車重は、装備を考えれば軽く仕上がっている方だろう。むしろ、重量を活かしたどっしり落ちついた挙動は、ゆったりくつろげる高級感を醸し出す。ダンピングスピードの遅さと、よく動くバネ下の追従性もこれに貢献し、ヒョコヒョコ動くような安物感がない。
ハンドリングは軽快。磁気を使ったパワーステアリング「マグナステア」は、低速から高速域までの操舵力変化が自然だ。“軽い操舵力=フィールが悪い”というワケではないし、分別臭く「重めに設定した」と説明するライバル車群に比べて、実用域である普段の操舵力が軽めで疲れない。

(写真=荒川正幸)

【テストデータ】

報告者:笹目二朗
テスト日:2004年1月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)225/50R17 93W(後)同じ(いずれもグッドイヤー EAGLE RS-A)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(2):山岳路(7)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

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