【スペック】全長×全幅×全高=3920×1680×1445mm/ホイールベース=2485mm/車重=1130kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(155ps/6000rpm、19.4kgm/4500rpm)/価格=249万円(テスト車=同じ)

フォード・フィエスタST(FF/5MT)【試乗記】

野太く骨っぽいホットハッチ 2006.09.12 試乗記 フォード・フィエスタST(FF/5MT)……249万円  2006年6月、フォード・チームRSが手がける「STシリーズ」が一新された。「フォーカスST」「モンデオST」に少し遅れて発売された末っ子の「フィエスタST」。内外装が変更され、よりスポーティな印象になった新型は、どんな走りを見せてくれるのか。

あっさりしょうゆ顔

現在買える輸入車で、特定の国籍に属さない唯一のブランドが、ヨーロッパ・フォードである。そのためか、エクステリアデザインはどれもシンプル&クリーンだ。他のブランドが、グリルをガバッと大きくしたり、フェンダーをドカッと張り出したりしても、知らんぷり。減塩醤油並みのあっさりフェイスである。

もしかしたらヨーロッパ・フォードは、グローバルカーとしての責務を意識して、どの国の景観にも違和感なく溶け込むデザインを目指しているのかもしれない。先日マイナーチェンジを受けたフィエスタSTを前にして、そう思った。

ヘッドランプやリアコンビランプは、円を基調としたデザインに変わった。でも全体的な印象は、あっさりすっきりのまま。ここまで徹底していると、いさぎよさを感じてしまう。濃厚化が進む純血のライバルに感化されず、今後も素肌美人であり続けてほしいと思った。

インパネまわりは若干変更

一方のインテリアはマイナーチェンジ前に比べると、お化粧を覚えた感じだ。黒一色だったインパネはセンターパネルを残してブルーになり、メーターは大径になって、オーディオは流行のセンターダイヤルを取り入れた。たしかにこのほうが目立つが、フォードらしさは前のほうが上ではないかと思えた。

ブラックレザーとブルーのファブリックをコンビさせ、STのロゴを縫い込んだフロントシートは今までどおり。クッションはやや硬めだが厚みはあるし、もものあたりをしっかりサポートしてくれる。シートバックは剛性感があり、背中の張りが心地よい。ヨーロッパ生まれを実感する、手抜きのない作りだ。

リアシートは、サイズは小さく形状は平板になるが、身長170cmの自分が前後に座った場合、ひざの前には約15cmの余裕が残り、頭上も余裕がある。空間はこのクラスのトップレベルだ。ラゲッジスペースも同じことがいえる。

写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。





走りはイギリス風味!?

デザインはグローバルカーの匂いがするヨーロッパ・フォードだが、走りはドイツ車とイギリス車の美点を合わせ持った存在に思える。そしてスポーティなモデルほど、イギリス車寄りになる感じがする。

ヨーロッパ・フォードといっても、主要拠点はイギリスとドイツであり、WRCを戦いSTを生み出したチームRSの本拠地は英国にある。見た目はグローバルでも、走りには生まれた場所が反映されているというわけだ。

それをまず証明したのがスタートの瞬間。スロットルレスポンスが鋭く、ボトムエンドのトルクが細いエンジンと、スパッとつながるクラッチのために、発進にやや気を遣わせるあたりが、日本やドイツのホットハッチと違う。

でも動き出してしまえば、1130kgのボディを2リッターで動かすだけあって、低回転からグイグイ加速していく。高回転も苦手ではなく、5000rpmで吹け上がりが勢いづいたあと、レッドゾーンに吸い込まれるように伸びていく。2リッターで150ps/6000rpmというスペックに現れないドラマを秘めている。

音は昔のミニを思わせるような、少しこもり系の重低音。車格からするとかなり豪快で、ボリュームはそれなりなので、クルージングでは2リッターのトルクを生かし、高いギアを使い回転を抑えて走りたくなる。

シフトレバーのタッチはややねっとりしていて、ストロークはさほど短くはないが、動きはコクコクと確実。ペダルはヒール&トゥに最適な配置だ。このあたりはWRCという厳しい現場を知っているチームRSの作品らしい。



強靱なボディ剛性

乗り心地はそれなりに硬め。ステアリングの切れ味はスパッと鋭い。このあたりも、いまのミニよりミニっぽい。ただし街なかレベルで試した限り、コーナリングはけっこう安定していて、立ち上がりでフルスロットルにしても確実なトラクションで駆動力を前進力に変えてくれる。ボディの剛性感は、強靱という言葉がふさわしい。このあたりはドイツ車を思わせる。

軽快さ、繊細さが目立つラテン系のライバルと比べると、フィエスタSTは野太く骨っぽいホットハッチだった。グローバル・ファッションの内側では、ジョンブル魂とゲルマン魂がいいカタチで融合していた。作りはしっかりしているのに、味はちょっとなつかしい。国籍にこだわらないからこそ手にできる個性もあることを教えられた。

(文=森口将之/写真=高橋信宏/2006年9月)

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