【スペック】全長×全幅×全高=5020×1845×1465mm/ホイールベース=2955mm/車重=1990kg/駆動方式=FR/4.4リッターV8DOHC32バルブスーパーチャージャー(446ps/6400rpm、60.8kgm/3600rpm)/価格=977.0万円(テスト車=同じ)

キャデラックSTS-V(FR/6AT)【試乗記】

大味のなかに光るこだわり 2006.07.04 試乗記 キャデラックSTS-V(FR/6AT)……977.0万円キャデラックのミドルサルーンに、スーパーチャージャー付きエンジンと専用チューンされた足まわりを与えたスポーティモデル「STS-V」。日本で馴染みの薄くなった“アメ車”のテイストが、STS-Vにはバリバリ感じられたという。


キャデラックSTS-V(FR/6AT)【試乗記】の画像
(写真=高橋信宏)

(写真=高橋信宏)

“異文化”に溢れた1台

日本での“アメ車人気”は、正直ちょっとイマイチだ。というか、相変わらず日本で輸入車というと、それは大方ドイツ車を示すという状態が続いているし、そもそも「アメリカでのアメ車も元気がない」のが昨今の状況だから、それもまぁムベナルカナではあるのだが……。

それにしても、小さな国土のなかに名だたる乗用車メーカーを8つも抱え、“クルマ余り”の状況もすでにここ極まれり! という日本に住みながら、それでもあえて“舶来車”に乗る理由は一体どこにあるのか? 改めてそう問われたとき、そこに「異文化と触れ合いたいから」という思いが少しでも湧き上がるのであれば、そんな期待感を満たしてくれる輸入車というのは、実は今の“アメ車”のなかに決して少なくないと思う。

たとえば、「ハマー」の各車などはその最たるもの。日本はもとより、ヨーロッパの各都市でもその姿を意外なほどに見かけるが、そんな人気を博しているのはあれがまさしく「アメリカの文化そのもの」だからだ。洋の東西を問わず、アメリカ大好き! という人には堪らない一品なのだろう。
そして、ハマーほど自己顕示性は強烈でないけれど、それでもやはり、バリバリにアメリカンなテイストを発していると思えたのが、この「キャデラックSTS-V」というモデルだった。

アメ車ならではの大胆さ

デザイン・モチーフはステルス戦闘機か!? と思えるほどに、気持ちよく(?)パキパキしたエクステリアデザインは、同じ“プレミアム”を標榜するものではあってもレクサスなどとは正反対のスタンス。専用バンパーやエアロパーツ類はなんともエグいデザインだし、LEDを縦に並べたリアコンビネーションランプ「クリアテール」も、随分と思い切ったものだ。スポーティなメッシュグリル……なんて代物はこのところのスポーツモデルの定番ではある。とはいえ、メッシュといっても、まるで焼肉網のごとく粗い目のメッシュを使うその大味さ(大胆さ?)は、やはりアメリカ車ならではだ。

一方のインテリアは、そんな外観から予想するほどにはトンでいなかった。
たしかに、ウッドパネルの色調がトーンダウンされたり、アルミ製のアクセントパネルが用いられたりと、スポーツモデルの定番的な化粧が施されてはいる。が、それでもさほど走りのイメージを直接的にアピールしてこないのは、室内の多くの部分を占有するシートのデザインが、ベースとされたオリジナルのSTSから変更されていない点も大きいはずだ。

ちなみに、このモデルを含めキャデラックSTSシリーズは、すべて左ハンドル仕様のみ。日本には右ハンドルが適しているのはいうまでもないが、しかし「右ハンがあれば売れる」というロジックが必ずしも正しくないのは、そんな“いい訳”を聞いて無理矢理右ハン仕様を作った(?)過去何台かのアメ車が証明してもいる事柄。現在のGMにそんな余力がない、というのも現実だろう。それでも、ステアリング・コラムにリーチ調整機能が付いて、ドライビングポジションの自由度が高いのは幸いだ。







巧みなボディコントロールに驚く

「キャデラック史上最強のパワー」を誇るSTS-Vの心臓は、メカニカル・スーパーチャージャー付きの4.4リッターV8。DOHCヘッドを備えるこのユニットは、アメリカ車としては高い6400rpmという回転数で446psの最高出力を叩き出す。ちなみに本国仕様では469hpと発表データがグンと高いのだが、コレは彼の地における騒音規制の緩さが影響してのことだろうか。“Vシリーズ”はSTSよりも先に「CTS-V」が発表されたが、いまだ日本にやってこない。その理由として「日本の騒音規制がクリアできない」(GMジャパン)というから、さもありなん、である。

車重はほとんど2トンに達する、決して軽くはないSTS-Vだが、さすがに加速の余裕度はタップリだ。が同時に、それはあらかじめ想定していたほど刺激度の高い加速感ではなかった。低回転域から太いトルクを生み出す一方、回転の高まりに伴う伸び感は今ひとつという、メカニカル・スーパーチャージャー付きエンジンゆえだろうか。

乗り心地は意外だった。低速域ではサイドウォール補強型ランフラットタイヤ特有の、硬さ感を伴う乗り味の持ち主であるものの、ある程度速度が乗ると予想以上にしなやかで、ばね下の動きが軽快なことにちょっと驚かされた。いわゆる“ボディコントロール”はなかなか巧みで、ここではちょっとアメ車らしからぬ印象を受ける。「アメ車らしからぬ」と言えば、連続するハードな使用にもペダルタッチの悪化を一切示さないタフなブレーキにも感心……と思ったら、採用しているのはブレンボ製だった。
大味と言えば大味。だが、そうしたなかにキラリと光るこだわりの走りを随所にちりばめている。やっぱりアメリカンなSTS-Vなのである。

(文=河村康彦/写真=峰昌宏、高橋信宏/2006年7月)

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