フィアット復活物語 第2章「狙うはプレミアム、新チンクエチェントはキミが作る!」(大矢アキオ)

2006.08.17 エッセイ

第2章:「狙うはプレミアム、新チンクエチェントはキミが作る!」

チェントロスティーレのトレピウーノ。フィアットの創業家によるチェックにも使われるプレゼンルームで。
2004年ジュネーブショーではスター的な1台だった。
コクピットのCGレンダリング。

■MINIのような「おいしい企画」を

第1章で記したように、フィアットは、グランデ・プントと新型パンダの成功によって、ヨーロッパにおけるシェアを着々と回復している。

現在販売台数において欧州第6位にあるイタリアの巨人が次に狙うのは、BMWに代表される“プレミアム・コンパクト”である。

イタリア国内でMINIは毎月1500〜2000台ペースで売れているが、セグメント内シェアとしてはグランデ・プントの10分の1程度に過ぎない。だが車両価格は高く、自動車メーカーとしては、いわば「おいしい企画」である。

小型車造りがお家芸のフィアットが、これを逃す手はない。
そこで登場するのが、新型500、つまりチンクエチェントである。

2004年3月のジュネーブショーで公開されたコンセプトカー「トレピウーノ」は、専門家・一般ユーザー双方から大きな賞賛を浴びた。
筆者は同年のヴァカンス前にトリノのチェントロスティーレ=スタイリングセンターでふたたびトレピウーノと対面する機会があった。その時点ではまだ、スタイリング部門のボス、H.ロドリゲス(当時)の答えは「発売は未定」だった。

しかし冬近くになると、あるフィアット関係者が「あれは生産します」と明かしてくれた。どうやら夏と冬の間に生産化に動いたようだ。

2005年9月になると、さらに生産化への動きは本格的になってきた。
新型チンクエチェントは基本的にパンダをベースとする。さらにそのプラットフォームは新型Ka用として、欧州フォードにも供給されることが決まった。
生産は、現在パンダを手がけているポーランド工場が充てられる予定だ。

現在流布している情報を総合すると、エンジンはガソリンは1.1リッター、ヨーロッパで売れ筋となるであろうディーゼル・ターボは1.3リッターが用意される。ガソリン仕様には、1.2リッターやよりハイパワーなアバルト仕様もあるという説もある。最低価格は9000ユーロからとも、1万ユーロとも伝えられている。

担当デザイナー、R.ジョリートが筆者に描いてくれた図。助手席側ダッシュボードを畳み室内を拡大できる。生産型に流用するかは不明。
新型チンクエチェントの公式ホームページ。
プレミアム・コンパクト進出の切り札となるに違いない。

■500 wants you

新チンクエチェントのお披露目は2007年ジュネーブを目指しているらしい。ただし公式サイトによる発売500日前から始めたカウントダウンの数字は、この原稿を書いている時点でようやく400日を切ったところである。とすると、あと13ヶ月後ということになる。フィアットがたびたび行ってきたように、発表はジュネーブ、発売はヴァカンス後ということかもしれない。

それはさておき、すでにオープンしている新型チンクエチェント公式サイトでは、5月から「500 wants you」と称するプロジェクトがスタートした。広く一般から新チンクエチェントのアクセサリーやグッズのデザインを募る企画だ。
現在は、イメージ・キャラクターのデザイン募集に切り替わっている。優秀作は広告キャンペーンに使用される。締め切りは9月上旬だ。

この手のユーザー参加型企画は、告知キャンペーンの一手段として日本では似たものがたびたび見られる。しかしヨーロッパでは珍しいことで、その先鞭を今までおカタかったフィアットがつけたことになる。

ところで、イメキャラ・デザインの賞金は3000ユーロである。ここはひとつ、新型チンクエチェントの頭金稼ぎにちょうどいいのでボクも応募しようと思った。

しかし中学生時代の1981年、日産製小型車の車名公募に応募して落選したのを思い出した。事前情報のひとつだった1000ccにひっかけ、「千太郎」とか「千尋」とか、人が考えないであろうネーミングを狙ったのがまずかった。小型車はマーチという名前になった。

それどころかボクの母親は、1960年にトヨタ・パブリカの車名公募に応募して落選していたことが判明。家系的にも恵まれていないと悟ったボクは、当時人気職業だったコピーライターになる夢を諦めた。

閑話休題。前述の公式サイトには、チンクエチェントにちなんだビデオ/フォトコンテストもあって、すでに作品もたくさん掲載されている。「我こそは」という人は、http://www.fiat500.com/を訪ねてみるといい。

(文と写真=大矢アキオ-Akio Lorenzo OYA/2006年8月)

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大矢 アキオ

大矢 アキオ

イタリアコラムニスト。1966年東京生まれ。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒。 二玄社『SUPER CG』編集部員を経て、1996年独立と同時にイタリア在住。 著書に「イタリア式クルマ生活術」光人社刊 ほか著書多数。