【スペック】全長×全幅×全高=3815×1645×1440mm/ホイールベース=2490mm/車重=1050kg/駆動方式=FF/1.2リッター直4DOHC16バルブ(75ps/5600rpm、11.2kgm/4000rpm)/車両本体価格=169.5万円(テスト車=同じ)

オペル・ヴィータスポーツ(5MT-オートマチックモード付)【試乗記】

サーフィンやスノーボードのよう 2003.02.07 試乗記 オペル・ヴィータスポーツ(5MT-オートマチックモード付)……169.5万円「ドライビングは知的なスポーツだ」とカタログで謳う「オペル・ヴィータ スポーツ」。オートマチックモードをもち、必要とあらばシーケンシャルシフトを楽しめるブリッツマークの末弟に、自動車専門誌『NAVI』の副編集長、佐藤健が乗った。
ヴィータ スポーツのボディカラーには、「紺」「水色」「銀」「赤」「赤茶」が標準設定され、「青」と「金」も受注生産ながら選択可能だ。組み合わされる内装は、グレーのクロスとなる

ヴィータ スポーツのボディカラーには、「紺」「水色」「銀」「赤」「赤茶」が標準設定され、「青」と「金」も受注生産ながら選択可能だ。組み合わされる内装は、グレーのクロスとなる
スポーツには、「MDプレイヤー付きラジオ+6スピーカー」が標準で装備される。ステアリングホイールのスイッチで、コントロール可能だ。

スポーツには、「MDプレイヤー付きラジオ+6スピーカー」が標準で装備される。ステアリングホイールのスイッチで、コントロール可能だ。

一粒で二度オイシイ

このクラスのヨーロッパ車に試乗するときには、いつも気合いが入る。日本でも「トヨタ・ヴィッツ」「ホンダ・フィット」「日産マーチ」などコンパクトカーの支持が高まりつつあるけれど、ヨーロッパでは昔から「Bセグメント」と呼ばれる小型車クラスが大激戦区なのだ。ヨーロッパ全体で見ると乗用車の3割以上、イタリア、スペインなどの南欧では実に4割以上を“Bセグ”が占めている。
つまり、欧州各メーカーの屋台骨を支えるのが、今回試乗した「オペル・ヴィータ」が属するクラスである。他メーカーをブッちぎってやろうという並々ならぬ意気込みでつくられていることは想像に難くない。だから欧州小型車に乗るときには、いつも以上に気を引き締める。

ステアリングホイールを握ったヴィータは、“ スポーツ”のサブネームが与えられ、「Easytronic」と呼ばれる2ペダル式マニュアルを搭載したモデル。「良-低排出ガス車」認定を受けると同時に、「2010年燃費基準」をパスした1.2リッター「ECOTEC」ユニットを積む日本での最廉価版(169.5万円)である。
結論から書くと、ヴィータ・スポーツはできのよい小型車というだけでなく、一粒で二度オイシイという、ライバルにはない長所をもっていた。



オペル・ヴィータスポーツ(5MT-オートマチックモード付)【試乗記】の画像


オペル・ヴィータスポーツ(5MT-オートマチックモード付)【試乗記】の画像
ヴィータは小柄ながら、5人乗車時で260リッター、6:4の分割可倒式になった後席背もたれを倒せば、最大1060リッターという積載量をほこる。
写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。

ヴィータは小柄ながら、5人乗車時で260リッター、6:4の分割可倒式になった後席背もたれを倒せば、最大1060リッターという積載量をほこる。写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。

ドライバーを心地よくする

「ブリーズブルー」という名称を与えられたボディカラーは、東京の春の空みたいにちょっとくすんだ青。シックないい色だと思ったのは、“小型車ならではのファニーな雰囲気”と“引き締まったカタマリ感”を兼ね備えたヴィータのエクステリアに好感をもったせいかもしれない。
乗り込んで目をひくのが、マットなシルバーのお化粧を施したセンターパネルと、白い盤面のメーター類。些細なことではあるけれど、新しさを醸そうという努力が報われている。

スポーツに組み合わされるトランスミッションは「イージートロニック」のみ。これは5段MTをベースに、オートマチックモードが与えられた、つまり、オートマチック車の安楽さとマニュアル車の楽しさを、一粒で二度味わおうという機構である。クラッチペダルはないから、AT限定免許で運転することができる。
これがなかなか使い勝手のよいものだった。オートマチックモードにしておけば、通常のATと同じようにギアチェンジを意識せずに運転することもできる。また、シフトレバーを左のゲートに入れ、MTモードにすると積極的にシフトしながらのドライブが楽しめる。個人的には、MTモードのほうがヴィータの小気味よい走りを引き出せるように感じた。シフトアップ、シフトダウンともに、期待以上に素早いし、そのときのショックも小さい。熟練したドライバーのようなシフトを誰でも行うことができる。

1.2リッター直4エンジンは、75psという最高出力から想像するより、はるかに活発だ。その要因としては、低い回転域から有効なトルクを発生するエンジン特性があげられる。たとえば、信号待ちからの発進で歯がゆい思いをすることはないし、混雑した市街地で緩やかな加速と減速の繰り返すような場面に遭遇しても、何ら不満はない。アクセルペダルの操作に対するエンジンの反応も良好だ。
トルクだけでなく、滑らかな回転フィールにも触れておくべきだろう。リミットの6500rpmまで引っ張ると、エンジン音は相応に高まるものの、スムーズなフィールは失われない。低回転から高回転まで、どこでも美味しい。バカッ速くはないけれど、ドライバーを心地よくする術に長けたエンジンだ。

サスペンション形式は、フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームというコンベンショナルなものだ。タイヤのサイズは、前後とも「185/55R15」。

エンジョイできる

乗り心地に関して、初めて欧州車に乗るかたは「硬い」と感じるかもしれない。けれど、長い距離を長い時間ドライブし、様々なシチュエーションで接すると、この乗り味が頼もしさに変化する。
まず、高速道路ではふわふわしない、小柄なサイズに似合わないしっかり感が頼もしい。曲がりくねった山道では、行くべき方向にしっかりと進路をとることができる安心感がある。とはいっても、けっして鈍重なわけではなく、キビキビとした敏捷な動きも兼ね備える。“頼もしさ”と“楽しさ”。ココでも一粒で二度オイシイ。

試乗する前から気になっていたのが、なぜ「スポーツ」というグレードを一番小さなエンジンを積む最廉価版に設定したのか、ということだ。国産車なら、最高性能バージョンのグレードが「スポーツ」だろう。
けれど、試乗を終えて考えを改めた。スポーツというと、ついつい他者と競争することをイメージしてしまう。けれど、ヴィータの“スポーツ”はそうじゃない。休日に楽しむサーフィンやスノーボードのように、誰かと競わなくてもエンジョイできる種類のスポーツなのだった。

(文=NAVI佐藤健/写真=清水健太/2003年1月)

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