第268回:サッカー日本代表も見習ってくれぃ!
スバル・ステラに見る軽自動車の理想と現実への対処法(小沢コージ)

2006.06.29 エッセイ

第268回:サッカー日本代表も見習ってくれぃ!スバル・ステラに見る軽自動車の理想と現実への対処法

「スバル・プレオ」以来、約8年ぶりに放った背高ノッポ系「ステラ」
第268回:サッカー日本代表も見習ってくれぃ!<br>スバル・ステラに見る軽自動車の理想と現実への対処法(小沢コージ)

■軽自動車の理想と現実

つくづく軽の理想と現実を突きつけられた気分ですよ。スバルの新型軽自動車、ステラ。
そう、デキはフツーにいいんです。フツーに素直な背高ノッポ系の軽自動車。それはさておき、その出生ストーリーがちとツラくて痛いんですね。実際、試乗会で会った正直なスバル関係者いわく、
「R2がもっと売れていたらこのクルマは出てなかったでしょうね」とズバリ。なんとも男らしく率直な……。

ってなわけで関係者が認めるまでもなく、このステラ、2003年に出たスバルの軽「R2」の反省から生まれたんですな。といっても商品の出来が悪かったというより、市場を読み違えた結果を踏まえての潔い決断!

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こちらは、自分が購入した「R2」
こちらは、自分が購入した「R2」
横からみると、R2とステラの方向性が全然違うのがよくわかる。
横からみると、R2とステラの方向性が全然違うのがよくわかる。

■現実はキビシイのだ

R2はその名の通り、往年の名車「スバル360」&「R2」のイメージの復活なだけでなく、今の味気ない、実用一点張りの軽市場にカウンターパンチを浴びせるべく作った力作で、最大のポイントはとても軽自動車とは思えない斬新なスタイリング。
まるでアルファロメオ顔負けのアートっぽさで、そのぶんリアシートとラゲッジは小さめだけど、そこにはエンジニアの「クルマはやっぱカッコだろ!」という魂の声が秘められていたわけです。で、俺もその思想と出来に共鳴し、買ってしまったと。といってもかなり安い新古車だったんだけどさ(笑)。

R2が出た当時、スバルは言っておりました。
「箱っぽい軽自動車は他にいくらでもある。ウチが同じことをやっても仕方ないでしょ」
と。なにしろトヨタ、日産、ホンダだけでなく、スズキ、ダイハツと強豪ひしめく日本のクルマ市場。その中で小さなスバルが生き抜くためには、個性を徹底的に活かすしかないと踏んだんですな。その後、R2よりさらにトンがったデザインの「R1」まで出したりしてさ。いやはや素晴らしい決断ではあーりませんか!

ところが現実は厳しい。いまやR2の月販台数はときに2000台を切るありさまで、なんと後発の個性派の軽、三菱「i」にも負けてしまう始末。
「あちらはミドシップ、個性的なスタイルだけでなくリアシートも広いんですよ」
とは、またスバル関係者の弁。なんてこったぁ! その通り!

スポーティな「ステラカスタム」のインテリアは黒。
スポーティな「ステラカスタム」のインテリアは黒。
いわゆる軽自動車な親しみやすさを狙った「ステラ」のインテリアは、明るい色づかい。コンポーネントの多くは、R1、R2と共用している。
いわゆる軽自動車な親しみやすさを狙った「ステラ」のインテリアは、明るい色づかい。コンポーネントの多くは、R1、R2と共用している。

■R1&R2にジーコ・ジャパンを見た

でね。ここまで聞いて俺は思ったなぁ。ある意味、サッカーのジーコ・ジャパンに似ていると。あれも今となっては情けない限りだけど、元はと言えば高邁(こうまい)な思想に満ち溢れていた。Jリーグ誕生の最大の功労者とも言うべき“神様”であり“白いペレ”ことジーコが、日本人の意見を尊重し、小さな体を活かすテクニック勝負の集団で世界に挑戦していくと。

ところがどっこいフタを開けてみれば、なんのことはない。甘えた日本人選手を尊重しすぎたせいか選手は走らないわ、テクニック中心で選手を選びすぎたせいか、チキンハートな人間を重要なポジションに置いてしまったわと、散々な結果。あと、単純にジーコの監督としての才能のなさも露呈してしまったな。あまりにも効果の薄い采配。

ただね。今思うけど、その“夢”自体は悪くなかったと思うのよ。ジーコは戦略家としてはともかく、人格者でサッカーの天才。ある部分、選手を育てる意味はあったんだろうし、小さな日本人がテクニックで勝負するってのも決して間違いではなかったと思う。
ただし、ハートの強さ、自主性に対して日本人に期待しすぎたね。やはり鬼軍曹となって、絶対に走り負けしない集団にすべきだったし、単純にもっとハートの強い選手を選ぶべきだった。具体的には小さなブラジルではなく、メキシコのサッカーを目指すべきだった……とまあ、これは週イチサッカープレーヤーとしてのシロウト意見ね(笑)。

■スバルみたいに頑張ってくれぃ!

でね。要するにクルマもサッカーも、それ以外なんでもだけど、“失敗の次”が問題なのよ。その点スバルはエラかった。R2の売れ行きを踏まえ、直後に国内販売の約3分の1、今後もシェアを伸ばす勢いの軽市場をまだまだあきらめるわけにはいかないと判断。R2をベースに、開発期間約2年というショートスパンで見事、軽の“業界標準”とも言うべき、背高ノッポのステラを発売したのだ。
「具体的には言えませんが、スバル始まって以来の突貫工事でした。もちろんちゃんとクオリティを確保したうえですけど」
とは、前出エンジニア氏。また、
「逆にこうやってメインディッシュができた今、R2、R1も効果的に売れると思います」
とも。

ってなわけでね。いい部分はイイ部分、失敗した部分は失敗した部分とハッキリ認識して、事後対策に最善を尽くす。そうやってスバル・ステラは出てきたわけです。ヘンなプライドは捨ててね。

だからサッカー日本代表も今回の失敗をちゃんと分析して、いい部分、悪い部分を冷静に判断して次を狙って欲しいよ。なぜジーコをもっと前の段階で代えられなかったのか、あるいは彼のいい所をもっと抽出するような体制が作れなかったのかと。
ま、次に予想されているオシムには期待しちゃうけどね。あの高齢なところ以外は。

(文と写真=小沢コージ/2006年6月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』