第266回:W杯のオマケにどう? 新メルセデス・ベンツ・ミュージアム
コイツはちょっとズルすぎる!?(後編)(小沢コージ)

2006.05.31 エッセイ

第266回:W杯のオマケにどう? 新メルセデス・ベンツ・ミュージアムコイツはちょっとズルすぎる!?(後編)

1935年の「グローサー・メルセデス」。展示車は、かつて我が国の皇室が御料車として使っていたもの。
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このあたりからは、お馴染み「300SL」シリーズ。
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■クルマの歴史を体感できる

前回からの続き)大雑把に詳細を紹介すると、エレベーターを降りた最上階にはやはり“パテント”こと世界初の自動車、1886年の3輪「ベンツ・パテント・モトールヴァーゲン」(残念ながらレプリカ)があって、そこから4輪の「ダイムラー・モーター・キャリッジ」やら「ダイムラー・トラック」、「ダイムラー・フェニックス・レーシングカー」などへと続く。
まさにアウストラロピテクス→ホモ・エレクトス→ホモ・サピエンスと続く人類の進化の歴史を見るように、クルマの進化の歴史を垣間見ることができるのだ。
やはりここがこのミュージアムの白眉で、展示車両はほとんどが実物だから、 “俺は遂に本物を見たぜ〜!”的感動が得られる。なんちゅーかな。やっぱ図鑑やレプリカで見るのとは、リアルさが違うのよ。たとえば○×王家の財宝にしても、○×王家直系の子孫の城でみたら、感慨深いものあるでしょ。考古学的な面白さもあり、なんだかんだ“クルマ知的好奇心の爆発だ〜”となるのよ。

それ以降も、最初に“メルセデス”という名前が付いた本物の車両やら、有名な「300SL」「300SLR」やら、各国首脳が乗った「グローサー・メルセデス」の本物があり、非常に見事な知的クルマ料理ぶり。

それから驚いたことに、メルセデスはこういうミュージアムの設立を前から想定していて、量産車は最後の1台を常に展示用に保存してるんだって。つくづく、しっかりしたメーカーだよね。

その先頭に鎮座するのは「300SLR」だ。
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レースカーも、初期のモノから展示される。
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■素材を堪能できるミュージアム

そのほか面白かったのが、やはり最初のほうでクルマ以外に、自社製の船や飛行機などの乗り物もあること。まさしくゴットリープ・ダイムラーさんとカール・ベンツさんが陸・海・空の3つの世界を制覇したかったってのがよくわかる。スリーポインテッドスターの意味が実感できるのだ。それから実は最初のパテントの前に、二輪車、つまりバイクを作った事実もあって、へぇ〜って思っちゃった。

で、まあそれが最終的には今のSクラスだ、Aクラスだっていう、メルセデス・ベンツやF1マシンのシルバー・アローに繋がってくわけで、なんちゅうか、まさに教科書=ブランド書なのよ。繰り返しになるけど、ホントにこんなのメルセデス・ベンツにしかできないことでしょう。対抗できるとしたら、時計のパテック・ミュージアムとか、ブレゲ・ミュージアム。それにしても、ここまで単独で歴史の生き証人を独占できるメーカーはない。

写真手前のマシンは、1955年の「W196」。ファン・マヌエル・ファンジオのドライブにより、イタリアグランプリで優勝を飾った。
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近代のレースカーまで勢揃い。
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ダイムラー・ベンツのエンジンが、航空機にも搭載されたことを示す展示。
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■値段もお手頃

だからね。正直、アウトシュタットに比べると手の込んだ演出はないわけだけど、逆に素材がよすぎるから当然っちゃあ当然。まさに最高の牛フィレ肉を、塩と胡椒と厚手の鉄板だけで焼いて食べるっちゅうか、最高のナイスバディを小さめの水着で堪能するというかね。そういう凄さであり、ズルさを感じるミュージアムなのです。ま、そこにもテクニックは介在してるわけだけどね。
唯一、残念なのが歴史を見れば見るほど、今のメルセデス車が普遍的になってきてるのを実感すること。人にもよるとは思うけどさ。

ちなみに入場料は大人8ユーロ、15歳以上の学生4ユーロ、15歳以下はタダとこれまたスンばらしい。月曜日が休館で後は毎日9時〜18時にやってます。マジ、今回のドイツW杯ではこのシュトゥットガルトで6月13日のフランス−スイス戦を皮切りに、全6試合もやるから、ついでに見に行くベシ。そうじゃなくても、オススメよーん!

(文=小沢コージ/ダイムラー・クライスラー日本/2006年5月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』