第260回:生きてて良かった〜歴代SL大ゴージャス試乗会(その1)
発見! トマトは昔のほうが味が濃いの法則(小沢コージ)

2006.04.20 エッセイ

第260回:生きてて良かった〜歴代SL大ゴージャス試乗会(その1)発見! トマトは昔のほうが味が濃いの法則

手前から、300SL クーペ&ロードスター、250SLロードスターなど、歴代SLの面々。奥にはさりげなく、SLRマクラーレンとマイバッハが停まっている……。
手前から、300SL クーペ&ロードスター、250SLロードスターなど、歴代SLの面々。奥にはさりげなく、SLRマクラーレンとマイバッハが停まっている……。
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走る「300SL ロードスター」!
走る「300SL ロードスター」!

■乗りましたっ! 裕次郎が持ってたSL

前回お伝えしたけど、「メルセデス・ベンツSLRマクラーレン」にチョイ乗りできたその日、行われたのは『メルセデス・ベンツ スタードライブ』!! という夢のようなプログラム。そう、歴代SLに、まとめて乗れるという超スンバらしい大試乗会だったのだ〜。マジ、自動車ジャーナリストになってよかった〜と心底思える瞬間であります。15年以上この仕事やってるけど、こんな贅沢初めてかも?

とにもかくにも試乗車のメンツがすごい。1997年式の4代目600SLに始まり、85年式の3代目500SL、68年式の2代目「280SL ロードスター」と「250SL ロードスター」、そして極めつけはあの“石原裕次郎が乗ったSL”、初代SLに2種類まとめて乗れることだ。

その2台は、58年式「300SL ロードスター」とななんと55年式ガルウィングの「300SL クーペ」!!! どちらも現在30万ユーロは楽勝でくだらないそうで、ざっと1台5000万円! 2台合わせて1億円!!
いやはや、なんという幸せ……なんという贅沢! 吉永小百合と黒木瞳と藤原紀香とエビちゃんとまとめてデートするようなもんか。いつ、この仕事を辞めても悔しくないと思いました。半分、マジで。

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「250SL ロードスター」。1996〜68年まで、ロードスター、ハードトップ、クーペがつくられた。屋根付きモデルは、独特の形状から「パゴダルーフ」と呼ばれた。エンジンは2.5リッター直6 OHC。
「250SL ロードスター」。1996〜68年まで、ロードスター、ハードトップ、クーペがつくられた。屋根付きモデルは、独特の形状から「パゴダルーフ」と呼ばれた。エンジンは2.5リッター直6 OHC。
250SLのインテリア。コレはマニュアル仕様である。
250SLのインテリア。コレはマニュアル仕様である。

■古くなると、美味しくなる!?

さて、端的に感想を申し上げますけど、実感したのは「トマトは昔のほうが味が濃い!」の法則。
というのも俺は4代目の600SLに始まり、3代目の500SL、2代目の280SL、250SL、そして2台の300SLと、徐々に年代をさかのぼるように試乗していったんだけど、古くなればなるほどある意味、味が濃くなるのだ。

もちろんより完成されてるのはより新しいSLよ。天から巨人に操られてるような、懐の深いハンドリングはやはり4代目600SLが最高で、V12気筒エンジンの具合も素晴らしく、おそらくは高速でも街なかでも一番安定して走れるんだろうけど、残念ながら若干ボディが重く、ダルに感じられてしまう部分があります。
だからスポーティさとSL独特の懐の深さとのバランスは3代目が最高。試乗した107型は、その昔オーナーズクラブの会長さんが所有するクルマを取材したことがあるんだけど、初めて彼が気に入っている理由がわかったような気がいたしました。

だけどね。SL全ラインナップを通じての凄さというか、深みはさらに古くなるに従い、ある種の完成度は落ちるが、逆に野性味というか、複雑さを増し、確実に美味しくなっていくとこにあるのだ。

「280SL AUTOMATIC」。280SLは1967〜71年まで生産。2.8リッター直6は170psを発生したという。
「280SL AUTOMATIC」。280SLは1967〜71年まで生産。2.8リッター直6は170psを発生したという。
ATシフトレバーはジグザグ式ゲート。
ATシフトレバーはジグザグ式ゲート。
300SL クーペとSLRマクラーレンのツーショット! 夢の競演?
300SL クーペとSLRマクラーレンのツーショット! 夢の競演?

■五感で走れ

旧いSLの凄さっていうか深み……それはまさに「昔の野菜は味が濃かった」というような感覚。もちろん加速もハンドリングも新しいほうがいいに決まってるわけだけど、古くなるにつれ、確実に運転の楽しみをダイレクトに身体で感じられるようになる。まさしく“五感でクルマを感じられる”のである。

それはエンジン音であり、各種振動であり、匂いであり、クルマ進化の歴史そのもの。もしやそれは俺が多少経験を重ねたからわかるもので、ハタチ前後だったら単純に「古臭い」「ボロい」と思っただけだったかもしれない。

だからね。今回乗ってわかったけど、正直、最近のヒストリックカーレースブーム、あるでしょ? 「あれはジジイの懐古趣味」だとか、「お金持ちのヒマつぶし」って決め付けてたところもあるけど、それだけじゃないと思ったなぁ。

(文と写真=小沢コージ/2006年4月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』