【スペック】全長×全幅×全高=4710×1875×1318mm/ホイールベース=2740mm/車重=1800kg/駆動方式=FR/5.9リッターV12DOHC48バルブ(450ps/6000rpm、58.1kgm/5000rpm)

アストンマーティンDB9(6AT)【海外試乗記(前編)】

優しいハイパフォーマー(前編) 2004.03.27 試乗記 アストンマーティンDB9(6AT)2003年のフランクフルトショーで登場したアストンマーティン「DB9」が、ついに市販を開始した。「DB7」から、ひとつ飛んで「9」に、長足の進歩を遂げた最新ブリティッシュスポーツはどうなのか? 『webCG』コンテンツエディターのアオキが南仏ニースで乗った。


DB9には、6速ATにほか、フロアシフトの6段MTも用意される。マニュアルモデルは、ファイナルレシオが3.07から3.54に低められることもあって、0-100km/h加速は、オートマの5.1秒に対し、4.9秒と優位に立つ。

革のストリップが貼られたDB9のパドル。このパドルを操作したとたん、6ATはマニュアルモードに移り、「AUTO」には、センターコンソールのボタンを押し直さないと復帰しない。ノーマルのMTモードでは、レブリミット直前に自動的にシフトアップするが、フロアコンソールにある「Sport」ボタンを押すと、あくまで現状のギアを維持する。「Sport」モードか否かは、右後ろ斜め下を見て、「Sport」ボタンのランプ点灯を確認しないとわからない。少々不便。メーターナセル内でモードが表示されるようになるといいのだが……。

伝統とハイテック

「アストンマーティンDB9」を運転して印象的だったのは、なんとまぁ、ラクに、リラックスして、スーパーなドライビングプレジャーを手に入れられるものよ、ということだ。たとえば、「ランボルギーニ・ムルシエラゴ」が「ディアブロ」と較べて運転しやすくなった、とか、「フェラーリ360モデナ」は「ポルシェ911」同様、日常的に使える、といったレベルではなく−−ミドシップのエグゾチックカーと比較するのは公正を欠くが−−。キーを捻り、センターパネルのスターターボタンを押すだけで、ラクシャリーなレザーシートに身を任せ、映画『007シリーズ』のテーマ曲をハミングしながら街を流してウィンドウショッピング(とガールズウォッチング)することも、また、ジェームズ・ボンドを気取って山道をそうとうな速度で、エクサイトしながら、しかし余裕をもって走ることもできる。赤いライバルとの対決も完全に現実的だ。DB9は、ケとハレが完璧に同居したクルマである。

2003年のフランクフルトショーで姿を見せたDB9は、モデルレンジからいうと、DB7の後継にあたる。ただし、ジャガーとシャシーを共有した「7」と異なり、まったく白紙から開発された。そのため、飛躍した進歩を表して、デイヴィッド・ブラウンの後には、8ではなく9がつけられる。DB9は、ヴァンキッシュの下、来2005年に登場するV8モデルの上に位置する、2000万円級の「2+2」スポーツカーということになる。
450psを発生する5.9リッターV型12気筒を搭載、トルクコンバーター式6段ATをリアデファレンシャルの前に置いた「トランスアクスル」レイアウトを採用。前:後=50:50の重量バランスを実現したというのが、開発陣のジマンだ。

ギアの切り替えを電子的にコントロールする、ZF製の“バイ・ワイヤ”オートマチックはちょっと驚きのデキで、「AUTO」モードではなんら気構えのいらないトルコン式ATの気楽さを示す一方、「SPORT」モードに切り替えれば、必要に応じて、スパッ、スパッと、あたかもクラッチ付き2ペダル式MTのようなシャープなギアチェンジをみせる。もちろん、ステアリングコラムから生えたパドルを用いて、任意にシフトすることも可能だ。場合によっては、器用にブリッピングして回転数を合わせることまでやってのける。リポーターは、ここまでスポーティに仕立てられたオートマチックトランスミッションを、ほかに知らない。
妙なたとえになるが、アウディが「DSG」で、クラッチペダルをもたないマニュアルギアボックスにオートマチックを凌ぐスムーズさを与えたのと180度逆の方向からアプローチしたのが、DB9に採用された6スピードのATといえるんじゃないか、と思う。

使いやすい「フロントエンジン−リアドライブ」のコンベンショナルなレイアウトを、最新のハイテクノロジーで高度に構築したクルマが、アストンマーティンDB9である。



ゲイドンの新社屋

姉妹モデルとオープンボディ

プレス試乗会は、フランス南部で行われた。ニース空港からヘリコプターで基点となるホテルに到着すると、エントランス前に、シルバーのDB9が置かれる。
ヘンリク・フィスカーの手になるスタイリングは、DB7、ヴァンキッシュの流れを汲む、まがうことなき新世代アストンのもの。共通性の強いルックスの採用は、フォード傘下、1993年にリリースされたDB7が7000台を超える、“アストンマーティンというバッヂを付けたクルマとしては”異例の成功を収めたのに意を強くしたことが影響していよう。さらにこの英国の伝統ブランドは、数の限られるハイエンドスポーツの市場においてもまだまだ圧倒的な少数派であるから、モデルごとに異なったデザインを与えて、全体のイメージが拡散するのを恐れたのかもしれない。

DB9のローンチにおいて重要なのは、ラインオフされるクルマ同様、工場そのものもブランニューだということ。1913年に設立された「Bamford and Martin Ltd」までルーツをたどることができるアストンマーティンとして初めて、“purpose-build”と謳われる新しい本社、工場、そしてデザインセンターが英国ウォリックシャー州ゲイドンに建設された。
DB7で命脈をつなぎ、ヴァンキッシュでトップレベルのパフォーマンスカーをつくる能力を証明したアストンマーティンは、新たに加わったDB9と、まもなくラインナップされる妹分V8モデルによって、ブルーオーバルの一員として、イメージのみならずグループに貢献できることを示す必要があるわけだ。投資は回収されなければならない。

ゲイドンにて。

アストンマーティン・ヴァンキッシュ

アストンマーティンDB9ヴォランテ

意欲的なラインナップ

そのため採られた手段が「VH(vertical/horizontal)プラットフォーム」と呼ばれる基本構造で、ホイールベースの長さを延長/短縮することで、複数のモデルを産み出すことができる。といっても、モノコックボディの量産車と違い、ブリティッシュスポーツカーメーカーは、アルミのモジュール構造を採るところが凄い。
「ロータス・エリーゼ」が先駆となり、2001年に出たヴァンキッシュが採り入れた手法を工業的に洗練させたもの。アルミのモノコックタブをベースに、アルミ材をリベット、接着剤を用いて組み立て、骨格を形成、アルミ/樹脂(フロントフェンダー)パネルを貼って外殻をつくる。アルミに加えカーボンコンポジットが惜しげなく投入されたヴァンキッシュからノウハウを学び、コスト面からも商品としての妥当性を探ったつくりといえる。
12気筒のDB9とこれから来るV8モデルを、フロントバルクヘッドから前を共有する姉妹車とすることで、開発/生産コストを抑えることができる。また、はなからオープンボディの追加を考慮することで、たとえ屋根がなくとも、十分な車体強度を確保することが可能となった。

DB9、2004年のデトロイトショーでお披露目されたDB9ヴォランテ(カブリオレ)、2005年に市販車が出るV8クーペ、そのオープンボディ、さらに次期ヴァンキッシュと、今後、意欲的にシリーズモデルが送り出される予定だ。(つづく)

(文=webCGアオキ/写真=野間智(IMC)/2004年3月)

・アストンマーティンDB9(6AT)【海外試乗記(中編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015024.html
・アストンマーティンDB9(6AT)【海外試乗記(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015025.html

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