【スペック】全長×全幅×全高=3800×1690×1635mm/ホイールベース=2540mm/車重=1070kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブ(109ps/6000rpm、14.4kgm/4400rpm)/価格=170万1000円(テスト車=203万4900円/G-BOOK ALPHA対応HDDナビゲーションシステム=27万900円/VSC&TRC=6万3000円)

トヨタbB1.5Z“Q version”(FF/4AT)【試乗速報】

音と光の「恋愛仕様」 2006.01.20 試乗記 トヨタbB1.5Z“Q version”(FF/4AT)……203万4900円トヨタ「bB」の2代目は、走ることよりも停まっている状態に重きを置いて開発された。若者にウケる「くつろぎ空間」とはいかなるものかを知るべく、試乗し、試聴した。
試乗した「Z“Q version”」は、“もっともbBらしい”グレード。9つのスピーカーと11のイルミネーションが備わる。オーディオを操作するアームレスト上の円盤コントローラーは使い方にコツを要する。

クリックして、「マッタリモード」への変身を見てみよう!

高校生の視線が集中

試乗会の行われたお台場で信号待ちをしていると、横断歩道を渡る修学旅行の高校生たちの視線がいっせいに集まった。クルマなんぞに興味がないはずの高校生の目を向けさせるのだから、「bB」の外観は相当なインパクトがあるのだ。いかにもワルそうでアクの強い顔つきは精悍というよりむしろ邪悪ささえ感じさせるのだが、それを「都会的でクール」と解釈できる年代には歓迎されるのだろう。先代bBは、スペースの広さを評価して乗っていた年配層もいるらしいが、新型はオヤジにはハードルが高そうだ。

「ミュージックプレーヤー」と自ら称するぐらいで、ターゲット層である20代の若者のニーズを分析して構想された商品なのだ。もともと「音・光・まったり」というコンセプトで開発されていたモデルが、途中からbBの後継に、ということに決まったのだという。先代bBに乗っていた人たちの中に、走りを楽しむというよりも室内で音楽を聴きながら過ごすことを選んでいた人が多かったことが、背景にあるわけだ。コンピューター会社が音楽機器で経営を支える時代なのだから、こういうのもアリなんだろう。

リアシートをたたんで、荷室を広げてみよう!



心身ともに弛緩する

新bBのウリは、まずは「マッタリモード」。フロントシートを目一杯低く落とし込み、外界から隔絶した空間を作るというものだ。リクライニングと組み合わせれば、高いウエストラインと相まって、完全に隠れ家状態となる。もちろん、これは停車している場合しか使ってはいけないモードだ。運転中にうっかりこのモードにしてしまうことがないように、ボタンを押しながらレバーを引き上げるという2段階の操作を必要とする。体重をかけながらマッタリモードに移行するわけだが、ドライビングポジションに復帰する時はステアリングに手をかけて腰を浮かさなくてはならない。結構腹筋を使うので、カラダがなまっているオヤジにはこのあたりもツライものがある。

マッタリモードを何に使うのかと聞くのは、野暮というものである。ホンダが以前「S-MX」のキャッチコピーに使った「恋愛仕様」という言葉が、このクルマにも当てはまるということなのだろう。さらに音と光でラブスペースをゴージャスに演出するのだから、クルマというのは進化するものだ。暗闇の中ではスピーカーに設えられた青いイルミネーションが妖しく浮かび上がり、サウンドにあわせて明滅する。アームレストには円形のコントローラーが備わり、これもイルミネーションで彩られている。ただし、この装備は「Q version」のみの設定なので、ほかのグレードを選ぶと少々寂しい思いをするかもしれない。

マッタリモードポジションでカラダを楽にして音と光に包まれていたら、だんだん心身ともに弛緩してくるのがわかった。生きる意欲とかアクティブな姿勢とか、そういった前向きな要素がだんだん削ぎ落とされてくるような気がした。それが狙いなのだから仕方がない。停まっている状態を重視して着想されたクルマである。寝ころんで天井を眺めていたら、そこが暗いのが物足りなくて、小型プラネタリウムで星空を映し出したらいいんじゃないか、などと考え始めた自分に驚いた。

こちらは「1.3S」。「S」および「Z」はスピーカーが4つ、イルミネーションが2つのベーシックグレード。

エンジニアの苦労

運転してみて、特に不満はないし、とりたてて感動する点もなかった。これも、開発の意図どおりである。「クルマ型Music Player」なのだから、走りで妙に引っかかる部分があってはいけない。ただ、音楽空間、恋愛空間としてクルマをとらえるならば、乗り心地が悪くてはいけない。騒音に包まれるのも、もってのほかである。そのあたりは、さすがによく躾けられていた。快適性を何よりも優先させ、それでいて走りに不自然なところがあってはならず、安全にも気を配らなければならない。さまざまな条件をクリアすることに心を砕くエンジニアの苦労が推し量られる。

bBのベースとなったのは「パッソ/ブーン」で、開発の主役となったのはダイハツのチームである。以前の体制ではとてもこんなコンセプトのクルマは作れなかった、とダイハツのエンジニアが話していたそうだ。トヨタ/ダイハツのコラボレーションは、そういう意味では自由な開発環境を作り出しているのかもしれない。bBがクルマの歴史にどんな足跡を残すのかはにわかに判断できないが、クルマのさまざまな可能性を追求するシステムができているのだとすれば、今後とてつもなく斬新な発想で新たな自動車像が生み出されることもありえよう。

(文=NAVI鈴木真人/写真=峰昌宏/2006年1月)

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