【スペック】全長×全幅×全高=4795×1930×1810mm/ホイールベース=2745mm/車重=2590kg/駆動方式=4WD/4.2リッターV8DOHC32バルブスーパーチャージャー(390ps/5750rpm、56.0kgm/3500rpm)/価格=1090万円(テスト車=同じ)

ランドローバー・レンジローバースポーツ・スーパーチャージド(4WD/6AT)【試乗記】

英国紳士の筋肉 2005.12.12 試乗記 ランドローバー・レンジローバースポーツ・スーパーチャージド(4WD/6AT) ……1090万円 「ランドローバー」から第5のモデル「レンジローバースポーツ」が登場した。スポーティな派生車種と思いきや、それはこれまでの英国紳士然としたたたずまいから大きく飛び出したクルマなのだった。

獰猛で、まがまがしい

英国紳士というと、伝統を重んじて軽佻浮薄なところはなく、上質なものを好むけれどこれ見よがしにはしない、というイメージがある。あからさまなマッチョは慎ましやかな英国趣味にはそぐわないもの、と思っていた。「レンジローバースポーツ」に乗るまでは。

フラッグシップの「レンジローバー」をちょっとスポーティにしただけのものかと思っていたのだが、まったく違うモデルだった。2002年に3代目となったレンジローバーは、モダンなデザインをまといながらも初代の無骨な面影を宿していて、近くで見ると小山のように悠々たるボリューム感をたたえている。しかし、このレンジローバースポーツは、一見して攻撃的だ。低く構えた姿は、力の凝縮を感じさせる。

フロントマスクの獰猛なことに、一瞬たじろぐ。硬質なメッシュグリルが、まがまがしい表情を形作る。巨大な電気ヒゲ剃りの刃のように見え、そこから剛毛が連想される。そう、このクルマにはシャツのボタンを三つ開けた胸もとやシルバーのゴツいブレスレットをはめた手首に、黒々とした毛がのぞいているフェロモンなオヤジが似合いそうだ。地味なツイードジャケットを着こなす、上品な枯れた紳士が乗るクルマではない。

全高は低いがアイポイントは高い

乗り込んでみると、これがまた普通のレンジとはまったく異質な空間なのだ。ウィンドスクリーンははっきりと寝かされ、インストゥルメントパネルも傾斜がつけられている。二つの面が鋭角を形作るので、どちらも立っていたノーマルモデルとは居心地が全然違う。全高が低くなっているのに、高いアイポイントの「コマンドポジション」は踏襲されているから、居住空間はどうしたって狭くなる。ただ、それが息苦しさをもたらすのではなく、タイト感がスポーティな雰囲気を作り出しているように感じられた。

試乗したスーパーチャージドモデルは、センターコンソールなどのトリムがウッドではなくロジウム仕上げとなっていた。レンジローバーといえば木と革で室内が飾られるのが当然という感覚からすれば、懸隔は大きい。かくして、あっけらかんと広く明るいスペースを身上としていたレンジとは、きっぱりと一線を画した設えであることが了解されるのだ。

視覚から得た印象は、走らせてみるとそのまま具体的な形となって現れた。エンジンを始動させるだけでも、荒々しい力強さを印象づけられる。電子式のパーキングブレーキを解除し、ゆっくりと右足に力を込めると、2.5トンの巨体は勇み立つように身を震わせて前へと進む。あまりお上品ではない振る舞いである。そのまま踏み込んでいけば、スムーズなZF製6段ATの手助けのもとに目覚ましい加速が始まる。もちろん、勇猛なサウンドの高鳴りを伴って。

明らかに次元が違う

レンジローバースポーツには、「ディスカバリー3」で採用されたテクノロジーが取り入れられている。モノコックとラダーフレームを融合させた「インテグレイテッド・ボディフレーム」構造をとり、オン/オフロードで最適な走行モードをロータリースイッチで選択する「テレインレスポンス」も採用された。今回の試乗ではオフロードを走る機会はなかったが、ディスカバリー3に乗った経験からすると、悪路走破性の高さは期待が持てそうだ。

新たに導入されたのは、「ダイナミック・レスポンス・システム」と名付けられたアンチロールコントロール装置である。コーナリングフォースを感知し、油圧モーターによってアンチロールバーの硬さを変化させるシステムだ。その恩恵なのか、山道でタイトなコーナーが連続するような場面でも、いささかの不安も感じることはなかった。レンジローバーが3代目になった時もそのハンドリングには感心したものだが、このモデルは明らかに次元が違う。

ハイパフォーマンスSUVのジャンルは、「ポルシェ・カイエン」「VWトゥアレグ」「トヨタ・ハリアーハイブリッド」など、多士済々である。「ジープ・チェロキー」も参入してきたし、「アウディ」のニューモデルも待ち構えている。オンロードでの使用がほとんどであるのはどのモデルにも共通していて、高速道路での移動や街中での使い勝手が商品性を大きく左右するのは当然である。そして、それ以上にユーザーにアピールするのはブランド性であることも確かだ。オフロードでの確かな実績を背景にした「マッチョな英国紳士」は、この激しい競争の中で間違いなく特別なポジションを手に入れそうな気がする。

(文=NAVI鈴木真人/写真=日高正嗣/2005年12月)

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