【スペック】S6(欧州仕様車):全長×全幅×全高=4916×1864×1449mm/ホイールベース=2847mm/車重=1910kg/駆動方式=4WD/5.2リッターV10 DOHC40バルブ(435ps/6800rpm、55.1kgm/3000-4000rpm)

アウディS6(4WD/6AT)【海外試乗記】

V10を得てもなお奥ゆかしい 2006.05.03 試乗記 アウディS6(4WD/6AT)ハイパフォーマンスカーにV10エンジンという組み合わせは珍しくなくなった。ここに新たに加わったのが、アウディの5.2リッターユニット。それを搭載する新型「S6」にドイツで乗った!

時代に遅れないように

「ランボルギーニ・ガヤルド」に「ポルシェ・カレラGT」、そして「BMW M5/M6」……。さらにはトヨタやホンダまでもが、近い将来に同様デザインのエンジンを搭載したモデルをリリースする事を明らかにした今の時代、“V10”という記号はハイパフォーマンスカーの心臓を指し示す記号として、一気にポピュラーになりつつある印象が強い。

「V8エンジンよりもプレミアムなイメージが強く、V12エンジンよりはコンパクト」――単純ではあるがやはりこうしたポイントがこのところの“V10ブーム”へと繋がるひとつの理由である事は間違いないだろう。そして、そんな時代の流れに乗り遅れるなとばかり今、また新たなブランドがV10エンジン搭載モデルを発表した。2005年の東京モーターショーで「S8」を、明けて2006年のデトロイトショーでは「S6」を立て続けにお披露目したアウディがそれだ。両車が搭載するのは共通のV10ユニット。ただし、S8がS6の上に立つというヒエラルキーを明確にするためか、その最高出力はS8用が450ps、S6用が435psと、敢えて微妙な差が付けられている。

ここまで読み進んで「おっ、それではアウディはランボルギーニ用のユニットをリファインしてA8とA6のボディに積んだんだナ」と推測する人もいるだろう。なるほど、今やランボルギーニはアウディ傘下にあるグループ企業。が、本国ドイツで開催された国際試乗会へと赴き、ガヤルド用ユニットとの関連性を担当エンジニア氏に問うてみると「S8/S6用のユニットはそれとは全くの別物」という答えが返ってきた。「ピュアなスポーツカーであるガヤルドと、高級リムジンであるS8/S6とは求められる特性が異なるし、全長が5cmほど長いガヤルド用のユニットはそもそもA6のボディには収まらない。エンジン組み立てのラインは同じだがボア・ピッチも異なるので、両者は完全に別物」というのが、アウディサイドの公式コメントだ。

カリスマ性は感じない

果たして、フロントグリル内にアルミ調の縦ラインを加えたり、(片バンクが5気筒である事を示すために)5つのLEDから成るDRL(デイタイム・ランニング・ライト。ただし日本仕様ではポジション・ランプとされる)をフロントバンパーの左右にビルトインしたりという軽いドレスアップを行ったS6の動力性能は、走り出しの瞬間から「いかにも高級車然とした上質な力強さ」が印象に残るものだった。

その心臓が放つフィーリングは高回転・高出力型というよりはむしろ低回転・高トルク型と実感できるもの。最大トルクの発生回転数は3000rpmに過ぎないし、さらに「その90%の値はすでに2300rpmで発揮する」という点からもそれは明らかだ。実際、組み合わせるトランスミッションがトルコン式ATという事もあり、1000rpm台でも十分なトルク感が味わえるその心臓は、日常シーンでは気筒数の事など意識させない「高級なパワーユニット」という印象。耳に届くサウンドも低中回転域では、一般的なV8ユニットのそれとほとんど区別がつかない。

一方、アクセルペダルを深く踏み込むとV8エンジンよりもきめの細かいサウンドに「特別な心臓」らしさが一瞬顔を覗かせる。そうはいってもレッドラインは7000rpmと控え目な設定。0→100km/hが5.2秒という速さにもちろん文句はないが、やはり既存の“V10モデルたち”ほどのパワーフィールのカリスマ性はそこには感じられない。







サスペンションは少々不快

幸か不幸かテストデーは時に小雨という状況。しかも、もう春も真っ盛りという季節なのに場所によってはそこに白いものも混じるという荒天に見舞われてしまった。

が、そうしたシーンでもドライ路面の場合とほとんど変わらぬ気分でドライブを続けられたのは、「Sのバッジを付けるモデルにはマストアイテムとして採用する」という“クワトロシステム”が備わっていたからでもある。イニシャル状態でフロント40/リア60という割合でのトルクスプリットを行う4WDシステムを介し、S6のシャシーはそんなV10ユニットが放つオーバー400psのパワーを、どんなシーンでもしっかりと受け止めてくれるのだ。

ただしそうした目的をことさらに追求したゆえか、時に少々不快なほどに、路面凹凸を拾っての上下Gが強く感じられるのはちょっと残念だった。ちなみに、その印象はセダンよりもアバントのほうがやや顕著。やはりボディ後端に大きな開口部を備える事が影響しているのか、もしくはセダン以上の“重積載”を想定してサスペンションのチューニングも大きく異なっているのであろうか。

すでに述べたように外観上のドレスアップは――14mm張り出しを強めたというフロントフェンダーのリデザインも含めて――わずかなもの。インテリアでも、サポート性を高めた専用フロントシートの採用といったニュースはあるものの、それでもやはり“標準のA6”から比べても雰囲気の違いはさほど大きいとは思えない。
しかし、ちょっと“奥ゆかし過ぎる”と思えるほどのこの程度のドレスアップのレベルというのも、また計算づくというところなのだろう。何故ならば、このモデルの後にはきっとさらなるハイパフォーマンスを誇示する「RS6」なるスーパーモデルの存在も控えているはずなのだから……。

(文=河村康彦/写真=アウディジャパン/2006年5月)

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