【スーパーGT 2005】 GT特別講座その3「総合力こそが最大の武器」

2005.09.24 自動車ニュース

【スーパーGT 2005】 GT特別講座その3(最終回)「総合力こそが最大の武器」

全日本GT選手権(JGTC)から「スーパーGT」と改名した国内GTシリーズについてわかりやすく解説する特別講座。最終回では、スーパーGTをいかに闘い、王者の座につくのか、その舞台裏をお伝えしよう。

■レースにおけるキホンの「キ」

GTレースの駆け引きや戦略を知る前に、基本事項を触れておこう。レースはペースカーに先導され、予選順位順に全車が隊列を組んだ状態でコースをゆっくりと周回(フォーメーションラップ)し、その流れに沿ってスタートする。これを「ローリングスタート」というのはご存知のとおりだ。

ペースカーの直後にいるのは、予選順位に隊列を組んだGT500クラスのマシン。そこから少し距離をおいてGT300クラスのマシンが並んでいるのだが、GT500がスタートラインを通過したからといって、GT300も同様にアクセルオン! というわけにはいかない。メインストレート上にあるスタートラインを通過するまで、隊列を崩さずに走行することが義務付けられているのだ。

ドライバーふたりによって1台のマシンを走らせるスーパーGTでは、当然ながらレース途中でドライバー交代が必要(規則上、1人のドライバーがレース全体距離の3分の2を超えて運転してはならない)。そのときにあわせて燃料補給やタイヤ交換などを行う。
なお、安全面を考慮し、燃料補給の間はタイヤ交換など作業の一部が禁止されているため、各チームとも制限ある中でスピーディな作業を行うための創意工夫を凝らす。

現場ではメカニックたちがピットストップの作業で無駄のない働きに全力を尽くす。もしピットでのタイヤ交換や給油作業ミスがあれば、いとも簡単に数秒のタイムロスが生まれてしまう。これをコース上でリカバーするにも限度があるから、とにかくミスは許されない。

■速さと強さの象徴、ウェイトハンデ

スーパーGTでは、「ウェイトハンデ」という特別規則がある。マシンの性能引き下げがその目的だから、わざわざ秀でたマシンの性能をスポイルするのはナゼ?と思うだろうが、これは多種多様なマシンがシーズンを通じて最後まで緊迫した闘いを繰り広げることを目論んだ措置である。
各車の性能を特別調整することで限りなくイコールコンディションを継続させ、接近戦の頻度を増すために用いられるのはウェイト、つまり「おもり」。定型の鉛板で、最低重量はGT300クラスで5kg、GT500クラスは10kgとなる。

ウェイトハンデは、予選、決勝を通じて対象車に課せられる。内訳は、次のとおり。

(1)予選各クラス上位3台に、各10kg。
(2)決勝各クラスベストラップ上位3台に、各10kg。
(3)決勝各クラス上位4位入賞車に、該当するウェイト。
(GT500 1位:50kg、2位:30kg、3位:20kg、4位:10kg)
(GT300 1位:30kg、2位:20kg、3位:10kg、4位:5kg)
ただし、ウェイトハンデの最大積載量は、GT500が120kg、GT300が100kgまでと決まっている。

これらのウェイトは次レース出場時に積載が義務付けられる。速さと強さを証明できたという意味では“栄えある勲章"には違いない。したがって、このウェイト積載を免除するのはたやすいことではない。特に、速さの証である(1)と(2)は、シーズンを通じて積載の義務があり、(3)においては、次レースの結果次第で軽減の措置をとることができる。

(4)決勝各クラス6位以下の場合、ウェイトが軽減される。
(GT500 6位:10kg、7位以降:20kg)
(GT300 6位:5kg、7位以降:15kg)

なお、この“勲章”は観客からも見てわかりやすいよう、マシンのリアウィンドウ部に定められたステッカーを貼付することになっている。決勝の各上位4位入賞によるウェイトは、白(5kg)、橙(10kg)、緑(30kg)、赤(50kg)で表記。鶯色の10kg、30kgのステッカーは(1)もしくは(2)に該当し、シーズンを通じて貼付されるので、「レースで上位入賞しているマシン」なのか、「速さはあるのに、レースの結果はイマイチ」なのか、マシンに貼られた“成績表”を見比べるのも楽しみのひとつといえる。

■シーズンの闘い方――いかにタイトルをとるか

名実ともに“ハンデ”を負いながら闘いを続けた結果、レースでは各クラス上位10台にポイントが与えられる。
両クラスとも、1位:20点、2位:15点、3位:12点、以下8、6、5、4、3、2、1点となる。
加えて先述の(1)と(2)の該当車にも、ポイント(予選1位は2点、その他は各1点ずつ)が付随する。

速さを見せ、ウェイトが加算されるだけであれば、当然のことながら誰もポールポジションなど狙いはしない。ウェイトと引き換えに、この1点や2点の積み重ねがあったからこそ王者の座をモノにした例も過去の闘いには存在するだけに、速さをとるのか、予選は控え目に決勝で全開! というパターンにするのか、まさに頭の痛いかけひきでもある。

セッション後、監督やエンジニアらと難しい顔をしながらドライバーたちがヒソヒソと話をしているのは、マシンの状態を伝えているだけでなく、こうした戦略を踏まえながら、いかに闘うかを検討している姿なのだ。

一昨年前までは4位以下からウェイトを軽減することができたため、シリーズ戦を踏まえて決勝を3位で終えるより、敢えて4、5位狙いでレースをコントロールするケースも見受けられた。だが、レギュレーションの見直しによりウェイト軽減は6位以下、さらに3位と4位のポイントが4ポイント差(以前は2ポイント差)と開いたため、安易な思惑による順位狙いはできなくなった。

ドライバー自身も、その変化を認める。「今まではレースコントロールもあったし、レース前から“今回は4位狙い”なんていう話がチームでもあった」と言うし、実際、取材中に「今回はウェイトを下ろすのが狙いなので」といったコメントを何度も耳にした。
ところが近年では、「予選で一発の速さを見せて、決勝では安定したスピードと強さを継続できれば」という話が主流となった。さらに、戦闘力が拮抗している今季のGT500クラスにおいては、「様子見なんてしている場合じゃない」と、現状はどのチームも全開モードだ。
以前、ウェイトを軽減するためのレースコントロールは時としてシラけた場面を生み出し、観客にも後味の悪さを与えることもあっただけに、この傾向は好ましい変化であることには違いない。

速さと強さを兼ね備えているからこそ、与えられるハンデはいうならば有名税のようなもの。この有名税をいかに味方につけ、有利なレース運びをするか。チームでは事前に策を練り、闘いに挑んでくる。
観る側としては、レースの結果を踏まえ、次レースの展開を読みながら、チームがどのような戦略を立ててくるのかを予想するのも面白い。ドライバー同士のバトルだけに限らず、決勝でのピット作業、ライバルとの駆け引きなど、あらゆる要素がレースの行方を支配する。それがスーパーGTの醍醐味といえるだろう。

3回にわたってお伝えしたスーパーGTのアレコレ。フォーミュラとは異なる“ハコ車”同士の攻防戦は迫力満点だが、その瞬間を余すことなく堪能できるのは、やはりサーキットという現場が一番。完全武装したストリートカーの爆走ぶりを見に、ぜひサーキットへと足を運んで欲しい。

(文=島村元子)

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複雑な要素が絡み合うレースをいかに闘い、勝利するか。ドライバーとチームが一丸となって取り組まなければ、それを成し遂げることはできない。(写真=トヨタ自動車)


(写真=日産自動車)


予選で、レースで、好成績をあげれば、そのぶんウェイトハンデが重くなる。シーズンを通してイコールコンディションを保つためのルールは、GTレースならではのもの。(写真=日産自動車)

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