第230回:改めて日本で乗ってわかった……判明!ロードスターはラーメンだ!?

2005.09.20 エッセイ

第230回:改めて日本で乗ってわかった……判明!ロードスターはラーメンだ!?

■較べると、どこもフツー

ついに日本でも発売されました、「マツダ・ロードスター」! 早速借り出して、富士スピードウェイまで往復したんですけど、ハッキリ言って基本的な印象はハワイ試乗会とまったく変わっておりません。やっぱり楽しい!  やっほ〜!!ただね。日本で乗って改めてわかったことがある。確信したっていうか。それは“ロードスターはラーメンだ!?”ってこと。いやマジでね。

というのも、ロードスターにやっぱり特別スゴい部分ってないのよ。たとえば、エンジン。170馬力の2リッター直4は、たしかに旧型よりよっぽど回るし、パワーもある。トルクの素直な伸び方もよろしいかと思う。ただ、正直、「そんなに素晴らしいユニットか?」ってそうでもない。最高出力発生回転数は6700回転だし、ホンダS2000の8700回転、レブリミットは9000回転! なんてのに比べるとフツー。吹け上がりの滑らかさ、パンチもドラマチックとは言いがたい。

ハンドリングもそう。仕方ないんだけど、重量増加により、初代にあった「初めてフリチンでプールに入ったときの衝撃!?」のような軽さはなく、S2000のように「公道を走れるフォーミュラカー」といった風情の切れ味もない。ブレーキも「死ぬほど効く」ほどではなく、ボディにもアルミをやけに多く使ってるとか、マグネシウムやカーボンみたいな新素材系を使っていることはない。

■三つ星料理じゃないけれど

ようするに、メルセデス・ベンツSLRマクラーレンやポルシェ・カレラGTみたいに、“松坂牛"(カーボン)や“黒マグロの大トロ"(マグネシウム)を贅沢に使ったミシュラン三ツ星料理じゃないのよ。ほどよくアルミパーツや超高張力鋼板は使ってるみたいだけどさ。

ところがどっこい、それが合わさったときの味のよさ、深さったらない。それは世界の名だたるスポーツカー、BMW Z4やポルシェ・ボクスター、あるいはロータス・エリーゼと比べても、決してヒケを取らないと思う。それどころか、パッと乗った瞬間、誰にでも感じとれる「ああ、ロードスターに帰ってきた……」みたいな懐かしくも固有な味わいは勝っているようにすら感じる。

そう感じる一番のポイントはハンドリングで、その自然な切れ味、ボディが自分を中心に回っていく感じは他に比べようがない。黒マグロではなく、メバチマグロのトロぐらい(失礼!)なレベルのエンジンだが、その伸びを心ゆくまで味わえる、ボディの軽さ、ギア比の設定、ハンドル&シフト&ペダルのバランスは格別。競泳プールを、ゆっくり楽しんで歩くように「俺は運転してるなぁ〜」って気にさせてくれる。

■究極の大衆的娯楽

その変わらぬ味は、おそらく世界の運転好きのココロをしっかりと捉えているわけで、要は日本で言う「人気のラーメン」みたいなものだと思う。
俺もそうだけど、海外出張から帰り、成田に着くなり、いきなり立ち寄るラーメン屋がある。それは特別有名店でもないけど、一度覚えたらクセになるっていうか、俺の心のよりどころになっている。いわゆるひとつのソウルフード。ロードスターもそう。いつ乗っても楽しく、乗るたびに「やっぱウマイ!」って感じる。おそらくその味は、ちょっとした性能のバランスや努力不足で崩れるんだろうけど、それをマツダのガンコかつ生真面目な料理人(エンジニア)たちがしっかりと支えている。
俺はラーメンに、ロードスターほどの万国的な人気があると思ってないけれど、1000円以下で食べられて、こんなにも努力して作られている日本のラーメンは、世界に誇るべき食文化だと思ってます。素材的には全く大衆的。それを工夫し、煮詰めて、感動的なまでの「クセになる味」に仕立て上げている。元々は中華料理だったが今は完全に日本の料理。それは元々イギリス生まれのライトウェイトオープンが、ロードスターで“和食"になったのにも似ている。
いろんな意味で、ロードスターはまったくもってラーメン! なのである。日本発の究極の大衆的娯楽カーにほかならない。

惜しむらくは他メーカーからも、ロードスター系車種がいろいろ出ていないコトで、ある意味、トヨタMR-Sやコペンにはもっと頑張ってくれって感じ。ま、ロードスターが今、一番ポピュラーな「とんこつ醤油」だとしたら、MR-Sやコペンはちょっとマニアックな「塩」とか「ミソ」かな? 異論反論あるだろうけど。唯一の不満はアレだね。内装。俺はそれに対してもゴーインに結びつけると、あれはまさしく凝りすぎたラーメンのウツワ。うまいラーメンは、シンプルな白か黒のどんぶりで十分! 同様に、ロードスターは本来ならば鉄板むき出しのインパネに、大きめのメーターが貼り付けてあるだけでよかったように思う。法規その他が許さないのかもしれないけどさ。ってんわけで小沢はとんこつ醤油ラーメン!? じゃなかった新型ロードスターを支持しますですよ!

(文と写真=小沢コージ)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』