「スポーツカー冬の時代」なんて、ウソだ! (ケイターハム・スーパーセブン)


月刊webCGセレクション10月号

「スポーツカー冬の時代」なんて、ウソだ!




















クルマそのものの魅力が引き立つ



ケイターハム・スーパーセブン Kレーシング(FR/6MT)
……650万円

1957年にロンドンショーで発表された「ロータスセブン」。そのロードゴーイングスポーツの思想は、1973年からケイターハム社が受け継ぎ、今もなおクラシックなたたずまいと共に生き続けている。現代においての魅力とは?

キーは無いが、消火器がある

スポーツカー特集のはずなのに、1台レーシングカーが紛れ込んでしまった。用意されたケイターハムは、「Kレーシング」と呼ばれるモデル。そのエンジンは、吸気抵抗の少ないローラーバレル式インテークなどの採用で、素のエリーゼでは112psしか出していない1.8リッターのローバーK型ユニットから、実に225psを引き出している。しかも今回のクルマは、キーは無く、代わりにキルスイッチがあるのみ。フロントスクリーンはレーシングタイプに替えられ、レース用のロールケージが組まれ、助手席はなくそこには消火器が置いてあるという“ホンモノ”だったのだから、そりゃ尻込みもするだろうというものである。

フツウのスーパーセブンでは、特に幌が付いていたりするととても難儀する乗り込みだが、このKレーシングならある意味、簡単だ。ロールケージを上からまたいで固定式のバケットシートに身体を滑り込ませ、6点式のレーシングハーネスを締め上げればオッケー。幸い、ポジションはバッチリでペダルにも足が届く。キルスイッチをひねり、スターターボタンでエンジンを始動させると、周囲には野太いエグゾーストノートがこだました。














楽しいというより、怖い

こんなナリをしていて身構えるなというほうが無理な話なのだが、転がすだけなら実は難しいことではない。クラッチは軽くはないが不当に重くもなく、またエンジンもアイドリングから少し踏み込めば思いのほかトルクがあるため、発進は思ったより全然容易である。
しかし、そこから先は話が別。インジェクション仕様ではあってもバルブオーバーラップが大きいのだろう、低速域でアクセルを一定にしていたり、あるいは不用意にオンオフを繰り返すと咳き込むことがある。スムーズに走らせるなら、意を決して踏み込むべし!

するとKレーシングは、車体のマスというものをまったく感じさせることなく、弾けるように速度を上げていくのであった。いや、本当はそんな冷静なものではなく、あまりの回転上昇の速さに優雅にタコメーターなど見ている暇はない。レスポンスもこれ以上ないほど鋭く、少しでも踏み過ぎればリアタイヤがむずかるし、逆にわずかに右足を緩めただけのつもりでもグッと減速Gが立ち上がってしまう。楽しいというより、ここまでくるともはや怖い。

おまけに今回のテスト車はレースに使われている車両らしく、足はガチガチ。タイヤもセミスリックが付いていたから、路面の不整はすべて拾うし、コーナーでもまるでロールなんかしない。何とかタイヤが暖まるまでは、コーナー出口のたびにリアがスキッドして、気が休まる暇が無かった。









【スペック】
(ベース車):全長×全幅×全高=3200×1580×1090m/車重=470kg/駆動方式=FR/1.8リッター直4DOHC16バルブ(約225ps/7500rpm、20.7kgm/5750rpm)/価格=650万円




フィルター無しの一体感

これは、やはりサーキットで乗りたかったというのが正直なところである。でも、この日も決してつまらなかったわけではない。超クイックなステアリングと直結したかのようなフロントタイヤのレスポンスや、腰でトラクションを感じながらの強烈な加速そしてスライド、慣性マスの小ささがハッキリ体感できる前後左右へのムダの無い荷重移動など、持てる力の数割しか引き出せなくたって、スーパーセブンはそれでしか味わうことのできない独特の走りの魅力を堪能させてくれたのだ。

ここ数年のスーパーセブンは、オーナーの指向がそうさせるのか、どんどん過激化が進んでいる。けれど、やはり実は全開にせずゆったり走るだけでも楽しめる、すべてが手足の延長というか素肌に裸足のようというか、とにかくフィルター無しの一体感こそが、スーパーセブン本来の持ち味のはずである。だからもっとおとなしいモデル、現在のラインナップでいえば、1.4リッター120psのエンジンを積む「ネオクラシック」など改めて試すことができたらと思う。

最近、景気の影響なのか、スーパーセブン周辺はあまり元気がないように見える。しかしクルマそのものの魅力は何も変わっていない。いや、それどころかその純粋さは、周りが変化していることにより、一層引き立っているようにすら感じるのだ。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2005年10月)




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