【年末年始特別企画】徳大寺有恒随想――2004年、新しい日本車の姿は見えたか

2004.12.31 自動車ニュース

徳大寺有恒随想――2004年、新しい日本車の姿は見えたか

高級セダンが次々に登場し、新たな日本車像を探る試みがあった2004年。日本的な規制の象徴であった280馬力「自主規制」も消滅して、「世界」に向けて開かれた自動車作りが期待されている。しかし、徳大寺有恒は、まだ未来の日本車像は見えてこない、という。

■いいクルマの判定者が必要

今年を思い返してみて、1年を言い表す明確な言葉が浮かんできません。レジェンド、フーガがこの1年を象徴しているとは思えませんし、輸入車のゴルフでもない。確かに、カー・オブ・ザ・イヤーは、クラウンとレジェンド、フーガの争いになりました。高級なセダンをなんとかしようというのが、日本車のテーマになりましたね。みんな「ヨーロッパのセダンに負けない」と言っていましたが、そういう戦略でいいのかは疑問です。

ニュルブルクリンクを何千キロも走ったからといって、いいクルマができるものでしょうか。高級車3台の登場で、クルマの未来が見えたかというと、そうは思いません。1台のクルマがどうということだけではなく、どんな交通社会を想定しているのかが重要なんです。

いま、日本が育てなくてはならないのは、いいクルマとは何か、カッコいいクルマとは何か、価値あるクルマとは何かということを判断する判定者なんです。ヨーロッパの価値観を追いかけただけでは、「いい日本車」を作ることにはなりません。ヨーロッパの価値観を知って日本の価値観も知っていることが必要で、そこで思い浮かぶのは白洲次郎さんですね。ああいう人が、今まわりを見渡しても、見当たらないんです。

■国際性とは、高速性能ではない

クラウンも、以前のものとガラッと変わってしまいました。輸出しないというのがあのクルマの大きな意味だったのですが、中国に出すということで、国際性を持たなければならないということになった。それで、国際性とは何かというと、高速性能だろうと考えた。その考え方は間違っていると思うんですね。

日本はヨーロッパから見れば、ロースピードの国です。日本人はドイツがいちばんの高速交通の国だと思っているけれど、それは違っていて、本当はフランスなんですよ。フランス、スペインは、平均速度が高くて、ドライバーの技量も高い。要するに、ヨーロッパ全土が速いんだ。

ヨーロッパの真似ではダメなんです。新しい価値観を作らなくてはならない。今度のクラウン、レジェンド、フーガは電子制御技術をたくさん盛り込んでいますが、これは日本が得意とするところです。あれをどんどん推し進めると、自動運転に行き着く。それはそれで、日本的なことなんだと思います。自動車の事故は人間が運転するから起こるのだとすれば、人間が運転しないようにするというのは、ある意味で正しいと思いますね。現に、飛行機はそうなっているんですから。

■自動車は、20世紀とともに去った

この秋は、パリサロン、東京モーターショーに行きましたが、あまりワクワクするものがなかった。世界的に、自動車というものが人々のいちばんの興味ではなくなったんでしょう。それをまず認めなくてはいけませんね。自動車は、20世紀とともに去ったという認識が必要でしょう。

もし自動車をよみがえらせたいと思うなら、もっとパーソナルで、もっと簡便で、たとえば軽自動車の新しい考え方を作るべきなんでしょう。それは、日本発ということがあり得ます。スマートに先を越されてしまいましたが。

システムとして考えるならば、カーシェアリングのようなことも視野に入ってきます。ただ、そういう新しい動きが出てくるまでには、もう少し時間が必要でしょう。自動車の時代が終わったと、多くの人が感じるようになるのはいつでしょうか。自動車メーカーが先に気づいていないといけないわけですが、トヨタあたりはわかっているんじゃないでしょうか。ホンダは気づいていない素振りを示しておいて、でもやはりロボットを作って保険をかけている。世界でも、みんなGMもメルセデスもわかってはいるんですが、自動車に代わるものを見つけられないでいる。

■日本を知ること、クルマを知ること

クルマ以外のことにも、面白いことがたくさんあります。僕が今いちばん興味があるのは、「ディスカバー・ジャパン」ということです。日本をもっと知りたいという思いが強くなってきました。行きたいところはたくさんあって、そのためには自動車が必要です。そして、日本を知ることは、クルマを知るためにも必要です。

2005年は、義経伝説ゆかりの場所をまわってみたいと思っています。東北には、義経の残した足跡があちこちにあります。1週間ぐらいかけて東北を旅するなら、普通のセダンに乗っていきたいな。ホンダのアコードあたりがいいでしょうか。レンジローバーもいいんだけど、ガスを食いすぎる。ホンダは燃費がいいからな。

クルマに乗ればどこでも行けるし、寺をめぐってもいいし、そうすることでプラスαの魅力が感じられるはずです。東京にいても、クルマを飛ばしていくと、何時間かで東北の静かな寺にいることになる。これがクルマの魅力のひとつです。そうやって、もう一度クルマを見つめ直してみようと思っています。

(文=徳大寺有恒/2004年12月)

 
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徳大寺有恒(とくだいじ・ありつね)
1939年東京に生まれる。成城大学経済学部卒。トヨタ・ワークスドライバーとして第2回日本グランプリや各種ラリーに出場した。その後、モータージャーナリストに転身、76年に上梓した『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)が、一大ベストセラーとなる。近著は、「大人のためのブランドカー講座」(新潮社)「間違いだらけのクルマ選び(05年冬版)」(草思社)など。
 
徳大寺有恒(とくだいじ・ありつね)
	1939年東京に生まれる。成城大学経済学部卒。トヨタ・ワークスドライバーとして第2回日本グランプリや各種ラリーに出場した。その後、モータージャーナリストに転身、76年に上梓した『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)が、一大ベストセラーとなる。近著は、「大人のためのブランドカー講座」(新潮社)「間違いだらけのクルマ選び(05年冬版)」(草思社)など。
	 

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