【スペック】全長×全幅×全高=3895×1655×1275mm/ホイールベース=2275mm/車重=1110kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC16バルブ(130ps/6300rpm、16.1kgm/4300rpm)/車両本体価格=292万9500円(テスト車=同じ)

フィアット・バルケッタ(5MT)【ブリーフテスト】

フィアット・バルケッタ(5MT) 2004.12.28 試乗記 ……292万9500円総合評価……★★★★イタリアン2シータースポーツの「フィアット・バルケッタ」がフェイスリフト。ライバルがモデルチェンジする中で、デビューしてからすでに10年が経つ古株モデルに、自動車ジャーナリストの森口将之が乗った。


爽やかな清涼剤

「フィアット・バルケッタ」は、「マツダ(ユーノス)ロードスター」に触発されて、ヨーロッパの自動車メーカーから送り出されたオープン2シーターのひとつだ。輸入車ではもっとも安価な部類に入るピュアスポーツ、イタリア生まれならではの情熱的なボディライン、横置きパワートレインによる前輪駆動方式などが、このクルマの持ち味だ。
そのバルケッタがデビューして、すでに10年になる。この間「MG F」「メルセデスベンツSLK」「BMW Z3」はモデルチェンジを経験し、ブームの火付け役となったマツダ・ロードスターは2度目の全面変更を実施しようとしている。ところが、そんな状況の中で日本にやってきた新型バルケッタは、マイナーチェンジを施したにすぎなかった。
新しい顔は少々厚化粧気味。時流に合わせて15インチから16インチにアップされたホイール/タイヤも、フォルムに合っているとはいいがたい。好意的な気持ちを抱けないまま、新型バルケッタに乗り込んだ自分だった。しかし5分後にはそんな不満が頭の中から消え失せ、15分後には夢中になってワインディングロードを駆け回っていた。
回すほど元気になるエンジン、コクコクと心地よく決まるシフト、前輪駆動とは思えない鋭いターンイン、アクセルを離せば瞬時に繰り出すタックイン。それを光と風の中で味わう。スペックや価格とは無関係の、純粋無垢なドライビングプレジャー。それがバルケッタにはそのまま残っていた。走りを愛するドライバーなら例外なく惚れ込んでしまう陽気さを、いとも簡単に表現していた。これこそがイタリア人の天性なのかもしれない。
いつの日かバルケッタもモデルチェンジを迎えるだろう。しかし現在のフィアットの状況を考えると、もしかしたら後継車はないかもしれない。そのときまで、今の陽気さを失わないでいてほしい。500psや300km/hがあたり前になった現在だからこそ、このクルマが演じる走りは、まぶしいほど爽やかな清涼剤になってくれる。



【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
イタリア語で小舟を意味する「バルケッタ」を車名に与えられ、1995年にデビューしたのがこのモデル。コクピットは2シーターで、ソフトトップは畳んだときは背後のカバー内に収納される。この種のオープンモデルとしては珍しい横置きパワートレインによる、前輪駆動方式をとるのも特徴だ。
現行モデルは、本国イタリアで2002年12月にフェイスリフトを受け、2004年7月から日本導入された。
(グレード概要)
オプションも無く、シンプルなモノグレード展開。レザーシート、CDプレイヤー、キーレスエントリーなどが標準装備される。フェイスリフトによる機関面の変更はなく、エンジンは可変バルブタイミング付き(吸気側)の1746cc直列4気筒DOHC16バルブ(130ps/6300rpm、16.1kgm/4300rpm)。5段MTの左ハンドルのみが販売される。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
ボタンを押すとレバーが飛び出すドアオープナー、インパネやドアの一部をボディ同色としたキャビンは今までと同じ。スポーツカーが特別な乗り物であることを強調した演出がうれしい。その一方で、インパネ表面はざらっとした手触り、センターパネルやメーターパネルはチタン調塗装になり、ステアリングとシフトレバーは本革巻きになったことで、質感は確実に上がっている。ただし助手席エアバッグが装備されたために、グローブボックスはなくなってしまった。ソフトトップは依然として手動で、リアウインドーもビニール製のまま。このあたりは時代を感じさせる。
(前席)……★★★★★
スポーツカーとしてはやや高めの着座位置を持つ。座り心地は硬め。サポートはそれほどタイトではないが、腰まわりのホールド性は優れている。簡潔な作りながら、街乗りにもワインディングロードにも不満なく対応できる、優れたシートだ。立ち気味で丈の短いウィンドスクリーンのおかげで、開放感は抜群。それでいて、新型はウィンドディフレクターが追加されたおかげで、後ろからの風の巻き込みをほとんどシャットアウトできるようになった。
(荷室)……★★★★
トランクリッド中央にハイマウントストップランプが追加された以外は、旧型と同じ。開口部は限られているが、中はかなり広い。とくに深さはスポーツカーとしてはトップレベル。2人の旅行用の荷物は、楽に収めることができるだろう。さすが前輪駆動ハッチバックのプラットフォームをベースとしただけある。リッドを支持するダンパーが、センターに1本あるだけなのが個性的だ。

【ドライブフィール】 運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
エンジンは基本的に今までと同じ、可変バルブタイミング機構付きの1.8リッター直列4気筒DOHC16バルブ。なめらかな吹け上がりが身上で、4000rpm以上ではその伸びが鋭くなり、フォーンという心地よいサウンドを響かせてくれる。アルファ・ロメオの2リッター・ツインスパークの弟のような性格で、手頃な価格のイタリアンスポーツの心臓にふさわしい。トランスミッションは5段MTで、これも旧型から受け継がれた。ストロークが短く確実なタッチは、横置きパワートレインとしては最上レベル。エンジンの性格を生かしきる、低めのクロスレシオがまた楽しい。さらにペダル配置はヒール&トゥがしやすいなど、スポーツカーのなんたるかを知り尽くした作りがうれしい限り。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
マイナーチェンジでホイールは15インチから16インチ、タイヤは195/55R15から195/45R16に変わったが、乗り心地はハードではない。今となってはそれほどカッチリしていないボディがいい方向に働いているのかもしれないが、鋭い突き上げや細かい上下動をたくみに抑えてくれる。10年前のボディに45タイヤを組み合わせたわりには、うまくまとまっている。一方、扁平タイヤの採用によってノーズの動きはさらに機敏になり、フロントにエンジンを積んでいるとは思えないほどクイックになった。コーナリングスピードもアップしていて、前輪のグリップは今日の目で見ても満足できるレベルにある。アクセルやブレーキできっかけを作ると、リアがわりと簡単に滑り出す性格は旧型から受け継がれたが、その動きはクイックになった。

(写真=荒川正幸/2004年12月)

【テストデータ】

報告者:森口将之
テスト日:2004年11月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:−−
タイヤ:(前)195/45R16(後)同じ(コンチネンタル ContiSportContact)
オプション装備:なし
テスト形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(3):高速道路(2):山岳路(5)
テスト距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

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