ITSは世界を救うか!?――トヨタが描く近未来交通の青写真(後編)

2004.11.16 自動車ニュース
 

ITSは世界を救うか!?――トヨタが描く近未来交通の青写真(後編)

自動車を中心とした高度道路交通システム=ITSの国際的な会議、「第11回ITS世界会議 愛知・名古屋2004」が、2004年10月に名古屋で開かれた。
10月15日、ご当地の大企業トヨタ自動車は、同社の最新ITS技術を披露するプレゼンテーションを行った。後編では、より具体的な開発中の技術を紹介したい。

 

■クルマが注意を喚起

「ITS世界会議 愛知・名古屋2004」に向けて自社の最新技術を披露したトヨタ自動車。
体験試乗ができたプログラムは、すでに商品化されているプリクラッシュセーフティや低速追従モードに対応したレーダークルーズコントロールをはじめ、研究開発中の「ナビ協調安全運転支援システム」や「路面描写」といった技術が中心。限られた時間内で行なわれたなか、われわれが実際に体験できたのは研究開発中とされた後者の二つの技術である。

まず「ナビ協調安全運転支援システム」だが、これは地図データより一時停止位置の情報を入手して、注意喚起のための音と画面上での情報提供を行なうもので、ドライバーが停止操作をしないと判断されれば警報とともに強制的にブレーキを作動させる。

また、スクールゾーンにクルマが入ると自動的に速度が20km/h以下に制御される。これによって人間のうっかりミスから生じる事故の発生を未然に防止しようというわけだ。


「路面描画」技術
 

■昆虫が触角によって状況判断するように

もう一つは「路面描画」技術。これはクルマから進行方向の路上に、レーザー光線による有色光を描写し、それらはクルマの進行を予測して路面に描画する。これによって、見通しの悪い交差点などで死角に存在するクルマの存在を事前に知らせ、とくに出会い頭事故などの死角事故全般の低減を図ろうというのだ。

この技術では昆虫が触角によって周囲の状況を判断するように、路面の段差を検出したり、路面描写搭載車同士なら相互の描写が重なった状態を検出して衝突回避を実現しようというものだ。
このほか、なかなか体験することができないプリクラッシュセーフティや、レーダーコントロールによる追従走行などのデモも体験できるなど、その内容はかなり充実したものだった。

 

■実用化までの課題

もちろん、これらのシステムは、あくまで開発途上にあるもので、すぐにこのまま実用化されるものではない。たとえば「ナビ協調安全運転支援システム」では、カーナビの地図データを整備するのが容易ではないこともあるし、カーナビだけに頼っていたのでは精度的にも不安要素が大きい。

開発担当者によれば「路車間通信によってより確実な制御を行なうのが確実な方法であるが、それはインフラの整備を待つ必要がある。この技術が確立すれば単独でこれらの制御が可能になる」と話す。

また「路面描写」技術にしても、歩行者認識で、着ている服装の色によって反応しにくい場合もあった。

ただ、これらの技術的積み重ねがより高度なITSの実現へと向かわせるのは間違いなく、その意味でもITSの世界を身近に感じるイベントとして十分納得のいくものだったことはたしかだ。

■クルマの楽しみを活かしつつ

このイベントでは、ITSによる可能性を数多く見ることができたが、次なる課題はそれをいかにユーザーが使いこなし、豊かな近未来のクルマと交通社会に関わっていくか。
今回の内容を見ると、ITSによって実現できる技術は過去のITS世界会議ですでに披露されているものがかなり含まれていた。あとはそれらの技術をどう具現し、一般ユーザーでも自由に使いこなせる仕様へと改良が加えられるかにかかっている。

さらには、ITSによる制御によってクルマのコントロールが自動化へ向かえば向かうほど、「クルマを操る」という楽しみを奪ってしまうのではないかという懸念もある。
クルマ自体の魅力が低くなれば、おのずとITSへの関心を持つユーザーも減っていってしまい、それは結果として「絵に描いた餅」となってしまう可能性もある。

クルマとしての楽しみを活かしつつ、ITS社会の実現を目指す。このあたりのバランスをいかにコントロールしていくか、このあたりが今後のITSの普及へのカギが隠されているような気がする。

(文=会田肇)

 

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