ホットハッチなんて要らないでしょ? (MINIクーパーS チェックメイト)


月刊webCGセレクション2006年2月号

ホットハッチなんて要らないでしょ?


















ミニは純粋にただミニなのだ



MINIクーパーS チェックメイト(FF/6AT)
……309万9600円

すべてのモデルがホットハッチだといってもいい「ミニ」だが、スーパーチャージャー付きの170psエンジンを持つ「クーパーS」が最強だ。今回乗ったのは、その特別仕様版たる「チェックメイト」である。

いつでもどこでも臨戦態勢

昨年1年間の「ミニ」の登録台数は、実に1万3602台に達し、車名別販売台数で前年の5位から3位へと躍進を果たした。当然、これは全部あのミニであり、しかもミニはほとんどのグレードがホットハッチ的要素を宿していると言っていいだけに、つまり輸入ホットハッチ市場を大きく拡大させたのは、ほぼコレ1台の力だったと言っても過言ではない。

今回連れ出したのは、そんなミニの中でもとびきりホットな「クーパーS」の「チェックメイト」。特別仕立ての内外装で仕立てた新しいラインナップである。トランスミッションは6段ATだ。

ドアを開けて、ボディカラーと同じくブルーとシルバーでコーディネートされたスポーティなセンスの冴える室内に乗り込むと、走りたいという気分が高まってくるのをひしと感じた。それはおそらく、メーターの存在が際立った特徴的なインストゥルメントパネルの造形や天地に狭いフロントウィンドウ、足を前に投げ出し気味にして低く座るドライビングポジションなども相まってのことだろう。

そして実際、ワインディングロードへ足を踏み入れると、やはりコレ、走りっぷりは相当に痛快だ。スーパーチャージャー付き170psのエンジンは、特に上まで引っ張らずとも、右足に力を込めるや特有のミーッという音を響かせながら、まさに猛然と加速してくれる。鼓動は荒々しいが、それもミニっぽくて悪くないし、このエンジン特性と6段ATもベストマッチ。いつでもどこでも臨戦態勢である。












【スペック】
全長×全幅×全高=3655×1690×1455mm/ホイールベース=2465mm/車重=1210kg/駆動方式=FF/1.6リッター直4SOHC16バルブ・スーパーチャージャー・インタークーラー付き(170ps/6000rpm、22.5kgm/4000rpm)/価格=307万6500円(テスト車=309万9600円/ETC=2万3100円)






いかにも攻めてるという気分になれる

ハンドリングはとにかくクイック。ステアリングレスポンスは、この手のFF車の中では群を抜いて鋭く、切り込むというより舵を当てた方向に瞬時に横移動するかのようだ。演出めいたものではなく、持てる資質が実現したシャープさは、この上なく痛快。あまりにレスポンスが良すぎて、一緒に持ち込んだ3台のどれから乗り換えても、しばらくは身体が馴染めなかったほどだ。

しかもホイールベースが短いだけに、あまり無茶をするとリアが結構暴れる。即座にDSCが介入するといっても油断はならない。また、うねりを乗り越える時など、クルマ全体が横っ飛びするような場面もあって、これまたスリリング。でも、単純だなぁと思いつつも、いかにも攻めてるという気分になれて、これはこれで悪くはない。

多分、それでも登場当初のモデルに較べれば多少はマイルドになってもいるのだ。瞬間のレスポンスもそうだが、特にそれは乗り心地に於いて顕著。依然としてソフトではないが角は取れて、ビシビシ突き上げるスパルタンさはだいぶ緩和されている。これなら隣に乗せる人を選ぶこともないだろう。

実用性という観点で見れば、リアシートもラゲッジスペースも小さなミニは、「ラクティス」のようなクルマに対して見劣りはする。しかし、それと引き換えにミニは、ゴーカートのようなどと評されるダイレクトなフットワークや、それを味わうための空間としてはおあつらえ向きの低くタイト感あるコクピット、そして何よりスペシャルな雰囲気漂うスタイリングを手にしている。

そんなミニは、まあ確かにどこに分類するのかという話になればホットハッチということになるんだろう。けれど、ホットハッチだ何だというより、本当はやはりミニは純粋にただミニなのだ。そう思うのは、実はこの乗り味、クイックなステアリングや跳ね気味の乗り心地等々、そこかしこでオリジナル・ミニに非常に近いテイストを感じさせるから。当然それは偶然なんかじゃなく、今のミニを生み出し育てたスタッフたちが、オリジナル・ミニをリスペクトしているからと見て間違いない。時に神経質な挙動にせよ騒がしいエンジンにしろ限られた室内空間にしろ、ネガな部分も含めたミニらしさが、最新のハードウェアの中に、しっかりご先祖様から踏襲されているのだ。

大容量なんか持ち合わせていないミニだが、ここにはほかに代わりになるものなどありはしない、理屈を超えた強烈な個性が宿っているのである。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年2月)



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