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【スペック】
全長×全幅×全高=3955×1695×1640mm/ホイールベース=2550mm/車重=1170kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブ(110ps/6000rpm、14.4kgm/4400rpm)/価格=165万9000円(テスト車=217万7700円/16インチタイヤ&アルミホイール/ディスチャージヘッドランプ/SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグ/HDDナビゲーションシステム/ETC=51万8700円)
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■ 「単に良い」より、明確な主張を
では何年か何か月か乗って、パドルシフトを使わなくなったラクティスには、それでも走りの楽しさに繋がる要素は残されているか。これは正直、疑問である。いいクルマだが楽しくはない。そういうクルマがあってはいけないなんて言うつもりはなく、ヴィッツやベルタなどはそれでもいいと思う。けれどラクティスの走りは、狙いどころからすれば、それらと一緒の味付けではいけないのでは?
単に良いというだけでなく、個性や主張が明確で、あるいは平均点を下回る項目があっても、代わりに飛び抜けたところを持つクルマ。トヨタには、そろそろぜひそういう領域へと踏み出してほしい。「ファンカーゴ」とは違う文法だが、こちらも目を見張るスタイリング、インテリアの高いクオリティ、そして何より素晴らしい広さを誇る後席やラゲッジに、そうした走りの魅力が加わったなら、それこそホットハッチは顔色を失うこと請け合いである。
ここまで、今のホットハッチはそのスポーツ性を付加価値として認められ、人気となっていると書いてきた。しかし、それには補足が必要だ。少なくとも今回の他の3台の場合、それらは付加価値になり得るだけでなく、紛れもなく本物だということ。付いていないモデルもあるラクティスのパドルシフトのようなものではなく、スポーツ性がそのクルマの本質の根幹を占める要素となっている。
だから、本当に当世流のスペース重視型コンパクトカーの中から、今のホットハッチに取って代わるクルマが出てくるとすれば、それは方向性をハッキリ見定めて、もっと本質的な部分から改革を実行したクルマだろう。たとえば「ホンダ・オデッセイ」に始まり、「マツダMPV」そして「トヨタ・エスティマ」へと波及したアッパーミドルクラスのように、それに近い流れは他のセグメントでは、既に現実のものとなっているのだ。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年2月)
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