第166回:えーっ、台風で運転中に水没ーっ!讃岐の国で聞いたウソみたいなホントの話

2004.10.12 エッセイ

第166回:えーっ、台風で運転中に水没ーっ!讃岐の国で聞いたウソみたいなホントの話

 
第166回:えーっ、台風で運転中に水没ーっ!讃岐の国で聞いたウソみたいなホントの話

■讃岐を襲った恐怖!

いやー、台風22号、凄かったですねぇ。家が吹っ飛ぶかと思いました。台風はわりと好きなタチだけど、今回ばかりはシャレにならん! ってレベル。
と思ったら先日、取材で行った讃岐うどんの国(!?)四国は高松で驚くべき話を聞いてしまいました。話の主は四国はもちろん、西日本で最大級の規模を誇る時計屋Iの専務、Fさん。この方、時計マニアであると同時に結構なクルマ好きで、愛車は「アルファロメオ156スポーツワゴン」。ところが取材の合間、うどん食いに行く際に乗せてもらったら、以前とはビミョーに異なる雰囲気が漂うのだ。

F:小沢さん、このクルマに乗って、なんか気付きません。
小沢:凄くキレイ。なんとなく新車の匂いがしますねぇ。
F:外、見ました?
小沢:そうねぇ、前見たときはもうちょっと明るかったような……。
F:気づいてくださいよ。前のはシルバーだったじゃないですか。実はアレ、水没しちゃったんですよ。
小沢:えーっ!
F:しかも運転中に。
小沢:ええーっ!!

俺も長らくこの仕事をしているが、駐車中に水没はともかく、運転中というのはまず聞いたことがない。いったいどういうことか。

 
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■あっという間

F:先日、台風大きいのがあったじゃないですか(8月28日の16号)。あのときですよ。
その日は一日中雨風だったんですが、夜中は結構おさまってたし、クルマで帰ったんですね。途中、喉渇いたんでコンビニでいったんジュース買って、道に出ました。海岸から3kmぐらい内陸のところで、午前12時ごろでしたね。道路は一部、15cmぐらいの深さまで水が来てて、風は強かったんですけど、雨は普通だったし、イケるイケると。実際、私の前後にも20台以上はクルマが走ってました。
小沢:ほほう。
F:そしたら、そのときちょうど冠水が始まってて、数100m走ったところでエンジンストップ。もしやと思って窓を開けたら、タイヤが隠れるくらいまで水が来てる。床に手を伸ばしたら水がチャプン。ビビりましたね。
小沢:うっひゃー。
F:そっからは、もうあっという間。もう一回、エンジンかけたんですけど、当然かからなくて、徐々にオシリが濡れてきて、冷たくなって……。
小沢:で……?
F:案外冷静で、荷物まとめてクルマを置いて外に出ました。一度気付いて車検証も取りに行きましたもん。すでにボンネットまで水に漬かってましたね。歩いてるときは腰上くらい、深くても胸元近くでした。その日は仕方ないんで、近くの健康ランドで夜を明かしましたよ。
小沢:周りはどんな感じでした。
F:みんなクルマ捨ててましたね。あ、そうそう、初めて人が乗ったままクルマが流されてるのを見ました。軽四輪で、渡った交差点が深かったみたいで。
小沢:どんな顔してました。
F:いや、こっちもそれどころじゃないんで。
小沢:そりゃそうだ。ところで時計は。
F:大丈夫です。そのときしてたのはブランパンのエアコマンドだったし、お客さんの時計はカバンに押し込んで、頭の上にあげてましたから。
小沢:さすが……。

 
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■色んな意味でラッキー

ってな感じで恐怖の体験を語るFさん。聞けばその頃は大潮と満潮が重なってたらしく、さらに台風による基本水位の上昇と相まって、このようなことが起きたという。近隣の水没車はおよそ1000台以上。不幸にも死者がでたようで、後日、警報や対策が遅れたことに対して、市長が謝罪したとか。
というのも瀬戸内に面し、外海から守られた高松では、記録が残ってるかぎり、このようなことが起きたことはない。しかし、今回にかぎって台風は高松に真横から当たる形で進入しており、こうなったようだ。Fさんが怪我一つしなかったことはラッキー。しかも、その後の保険のハナシもあるのだ。

小沢:で、このクルマは買い直したんですか?
F:それがね、小沢さん。ラッキーなことに車両保険に入ってたんですよ。それも風水害保険だけに。
小沢:えっ……どういうこと?
F:車両保険には自損と対人対物と風水害の3種類があって、自損とかは高いから、風水害だけ入ってたんです。ですから全額出ました。
小沢:うわー、ラッキー。高松の人はみんなそういう保険の入り方するんですか。
F:僕だけです。今回もディーラーに持ってったら、その店で水没した50台のうち、保険が下りたのは僕のだけって言ってましたもん。あのときは市内のレンタカー屋が凄かったですね。貸すクルマがないって(笑)。
小沢:そりゃそうだ。でも無事でなによりでしたね。
F:ホント、今、冷静に考えると恐くなりますよ。パワーウィンドウ下げるのが遅れてたら、死んでたかもしれません。
小沢:そっか、水圧があるもんなぁ。窓閉まってて、半分ぐらいまで水に浸かったらまずドア開けられないし、電気系統がいつ壊れるかわからないですもんね。
F:埠頭でダイブしちゃったクルマなんか、それでやられるんですってね。
小沢:まさかクルマが水没するなんて、予想も付かないもんなぁ。あわてて窓を開け忘れる可能性も十分にある。うー、恐ぇぇ〜。ところで、うどん屋まだですかね。
F:……。

ってなわけでみなさん、水が近づいたらとりあえず窓を開けるように。それから“風水害保険”もね!

(文と写真=小沢コージ/2004年10月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』