ルーキーはコレを買え! (ホンダ・インサイト)


月刊webCGセレクション2006年4月号

ルーキーはコレを買え!


















ハイブリッド車は、運転だって面白い



ホンダ・インサイト(FF/CVT)
……220万5000円




日本車の技術が世界の最高水準なのは常識。そのなかでも、環境対応のテクノロジー、特にハイブリッドは欧米の数歩先を行っている。せっかく日本に生まれたのだから、最先端の乗り味を楽しみたいではないか。

先進のハイテクとの対話はたまらなく知的

フレッシャーズのクルマ選びとして最後に提案したいのは、世界に誇れる日本のクルマを選ぶということだ。世界を席巻する日本車だけに、世界に自慢できるものはいくつもあるが、中でもひとつ挙げるとすれば、やはり先進技術ということになるだろう。その究極はと言えば、そうハイブリッドである。

そうは言っても、ここ日本でだってハイブリッド車の選択肢はまだそれほど多いわけではない。内容や使い勝手その他諸々を考えると、本当は「トヨタ・プリウス」のほうが適任かもしれないが、ここでは5段MT車がリッター当たり36.0kmという世界最高水準の燃費性能を実現した「ホンダ・インサイト」をプッシュしたいと思う。

ハイブリッド車の楽しさはたくさんある。その複雑なシステムの一番の目的は言うまでもなく燃費向上であって、その燃費を確認するだけでも歓びなのだが、実はそれと同じくらい、いやそれ以上に心をくすぐるのが、その独特の走行感覚だ。たとえば発進時や追い越し時などのモーターによるアシストが効いた独特の加速感や、停止時のアイドリングストップなどがそれ。それまでフツウのエンジン車では体験したことのない感覚に病みつきになっている人は多い。

しかも、プリウスは当たり前に運転していればそれらをすべてシステムが自動でやってくれるのに対して、インサイト、特に5段MT車の場合は、旨味を自分で引き出してやらなければいけない。しかし、それはちっとも面倒なことじゃないと、一度乗ればきっとわかるはずだ。そう、この先進のハイテクと対話して走らせる作業は、たまらなく知的で面白いのである。

ギアを1速に入れてアクセルを踏み込むと、995ccというエンジンの排気量から期待する以上の力強さで身体が前にグッと押し出される。この時、メーターパネル内の「ASST」のバーグラフが伸びて、モーターによるアシストが行われていることがわかる。かと思うとメーターパネル内にシフトアップを促す上向き矢印が点灯。それに合わせて2速に入れてアクセルを踏み込むと、またも「ASST」側にバーグラフが伸びるが、それはつまりバッテリーを消費しているということ。加速を鈍らせないよう、しかし無駄な電力を使わないよう、気付くとアクセルペダルを踏む右足を自然に微調整している自分がいる。









【スペック】
全長×全幅×全高=3940×1695×1355mm/ホイールベース=2400mm/車重=820kg/駆動方式=FF/1リッター直3SOHC12バルブ(70ps/5700rpm、9.4kgm/4800rpm)+交流同期式モーター(10.0kW/3000rpm、5.0kgm/1000rpm)/価格=220万5000円(テスト車=同じ)



グライダーで滑空するような加速感

一方、減速時にはモーターが発電機となって減速エネルギーを回生。バッテリーに蓄える。このエネルギー回生の度合いも「CHRG」のグラフで表示されるから、強めに減速したほうがいいのか、ゆっくり長めのほうがいいのか、ついついアレコレ工夫しながら走らせてしまう。完全停止すると、状況にもよるが基本的にエンジンは停止。周囲は静寂に包まれる。けれど、再発進に気を遣う必要はない。クラッチを踏んでギアを入れれば素早く自動でエンジンがかかる。

そんな風にクルマから身体に伝わる情報と、インジケーターなどで示される情報をもとに両手両足を動かしてインサイトを走らせる行為は、フツウに街中を流しているだけでも最高に知的で、全然退屈することがない。ハイブリッド車の先進のハイテクを、敢えて中味の見えないブラックボックスに閉じ込めず、こうしてドライバーを面白がらせる要素としてしまうあたりは、いかにもホンダらしい。

さらにインサイトには、その外観にも表れているように、空力性能を徹底的に追求したボディ形状と、オールアルミボディによる車重820kgという軽量設計がもたらす、グライダーで滑空するような独特の加速感という、他のクルマではまず味わえない魅力も備わる。これも、まさに体感できる先進技術である。

この5段MTのインサイトは最たるものだが、CVT仕様であっても、あるいは「シビックハイブリッド」やプリウス等々のモデルであっても、ハイブリッド車の走りには、知性を刺激する面白さが詰まっている。だから、もちろん燃費を一番の理由に選んでもいいし、ハリウッドスターよろしくファッションで選ぶのだって断然アリだ。その乗り味を知れば、きっと面白がれると思うし、そうじゃなくても少なくとも環境負荷が小さいことは間違いないのだから。

せっかく日本でクルマに乗ろうというのだから、日本が世界に誇るクルマを選ぶというのは、とてもクールなことではないだろうか。あるいは、今この時代にクルマを買う、十分な動機付けにもなるのではと思う。初期投資は多少高くつくけれど、ぜひ検討してみてほしいと思う。

(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年5月)




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