第51回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その4〜(矢貫隆)

2004.09.08 エッセイ
 

第51回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その4〜

 
氷河が流れてつくりだした大カール。写真からでは大きさが想像できないだろうが、とにかく大きい。カールのてっぺん(稜線)まで、たどり着くのに1時間以上は歩く。
氷河が流れてつくりだした大カール。写真からでは大きさが想像できないだろうが、とにかく大きい。カールのてっぺん(稜線)まで、たどり着くのに1時間以上は歩く。
断層面付近の岩と推測できる。岩のなかの黒い模様の部分に注目。断層のために擦られて、模様が変形している。
断層面付近の岩と推測できる。岩のなかの黒い模様の部分に注目。断層のために擦られて、模様が変形している。

 

■「クルマで登山パート2」スタート

あの日は各地の山で事故が起こっていた。北アルプスの白馬岳の隣にある唐松岳。そこからの縦走コース上に「不帰の剣」(「帰らずのキレット」)という、名前も実際にも恐ろしいピークがあるのだけれど、その逃げ場のないキレットに落雷があって3人が死亡し、群馬県の谷川岳では滑落事故で登山者が行方不明となっている。

実は、帰らずのキレット、僕が1年前に行った場所だ。谷川岳の滑落現場は、その前の年、「クルマで登山」で担当編集のA君と肝を冷やしながら歩いた道である。

A君も僕も、常に安心、安全登山をモットーに、度が過ぎるくらい慎重に山を歩いているつもりだが、こうした一連の事実を並べてみると、本当にちょっとしたタイミングで事故に遇う可能性を秘めているんだということがよくわかる。

「クルマで登山パート2」は、神奈川県の西丹沢にある檜洞丸から始まるが、僕たちはいままで以上に、心して安全登山を続けていこうと思う。

ところで、第1回目に檜洞丸を選んだのにはそれなりの理由がある。

この山は、乾燥した太平洋側には珍しくブナの森が全山に広がっていて、それはもう見事に美しい。標高が1600mと低いためにブナに覆われた頂上からの展望はまるでないが、そのことを差し引いても、ブナの森を見るだけで満足感に浸れる山なのである。

ところが、このブナの森が、頂上付近で大量に立ち枯れている。原因は大気汚染。
僕たちは、その実態を見るべく檜洞丸へと登ったのだった。(この回おわり)

(文と写真=矢貫隆/2004年9月)

【過去の記事は「webCG Archive」で】
「クルマで登山」(パート1)の記事は、「webCGメンバーズ」(http://www.webcg.net/WEBCG/members_top/)の「webCGアーカイブ」に収録されています(要ユーザーID&パスワード、登録無料!)。

 

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矢貫 隆

矢貫 隆

1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、 多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。 自動車専門誌「NAVI」(二玄社)に「交通事件シリーズ」(終了)、 同「CAR GRAPHIC」(二玄社)に「自動車の罪」「ノンフィクションファイル」などを手がける。 「自殺-生き残りの証言」(文春文庫)、「通信簿はオール1」(洋泉社)など、著書多数。