第159回:勝手にラリー・ジャパンの○と×(その2)果たしてどこまで「非日常」だったか

2004.09.08 エッセイ

第159回:勝手にラリー・ジャパンの○と×(その2)果たしてどこまで「非日常」だったか

WRCよかったけど問題も。コースのほとんどが、このように遠いのだ……。
WRCよかったけど問題も。コースのほとんどが、このように遠いのだ……。
お孫さん連れの微笑ましい光景。
お孫さん連れの微笑ましい光景。
露天でミニカー! うーん、ニッポン。
露天でミニカー! うーん、ニッポン。

■ミーハー心、全開!

前回からの続き)
その“モータースポーツ的ユートピア”は、翌日訪れた車両保管場所である「北愛国サービスパーク」でも感じました。そこでは、別にWRカーがぶっ飛んでるわけではなく、ラリー車が単にサービスを受けにくる場所なんだけど、いわば土曜深夜の大黒ふ頭の“世界ラリー版”って感じ。もしくは、もっとピュアで“ネイチャー志向の幕張オートサロン”か。
バリバリバリバリ! っていいっぱなしのインプレッサやプジョー307が、手の届きそうな距離を走り、なかにTVでしか見たことがないドライバーが乗っている。
そのまわりには、当然ミーハー日本人がわんさか。子供を連れて、デジカメ、カメラ付き携帯を掲げ、ビシバシ撮影しまくり。あっちでカルロス・サインツを見かければ集まり、そっちでペター・ソルベルグを見ればまた集まるという烏合の衆。でもね、それがなんとも微笑ましく、「ああ、WRCって実はそういうもんなのかも」って、勝手に発見しました。ホント、繰り返しになるけど“非日常性”を楽しむものなのだ。日本人にとっては、これがラリーを楽しむ正しい姿であり、ミーハー心大全開! で結構。

逆に一昨年、伝統のモンテカルロラリーに行ったときは、それがわからなかった。すべてがお上品で、なんかピンとこないのよ。有り難味がイマイチわいてこないっつうか。そういう意味では俺も“真性日本人”なんだなぁって、つくづく再確認した次第。

 
第159回:勝手にラリー・ジャパンの○と×(その2)果たしてどこまで「非日常」だったかの画像
写真のように、観戦できる場所は一部に限られる。
写真のように、観戦できる場所は一部に限られる。
ちょっと遠い……。
ちょっと遠い……。

■ちょっと薄いスペクタクル性

ただね。一方、ちょい残念な部分、っていうか根本的に問題になるであろう部分も感じました。

それは実際の走りのスペクタクル性なんだよね。聞けば、ラリー・ジャパンは低グリップ、細道、高速のスリリングなコース。よってスペクタクル性は十分なはずなんだけど、それがあんまり伝わってこない。もちろん俺が全部のコースを見られなかったってのもあるかもしれないけど、それ以上に取材体制が厳しいのだ。

さらに、一部公道を走るケースはあるらしいが、それがすべて林道で、見た目ほとんど公道っぽくない。これがアスファルト舗装で、いつも俺たちが走ってる道、コーナーだったら“ウッソー”“スッゲー”がもっとあった気がする。

それから、見られる場所がコースから相当隔離されていて、ラリーっていうよりサーキットみたい。ほとんど“世界スーパーダートラ選手権”って趣き。チケットを買って入るところはほとんどダートラコースさながら、俯瞰でコースを眺めるところも多く、“非日常性”にやや欠ける。
ま、ダートラ見るのが初めての人には新鮮味もあっただろうし、ダートラ、ひいてはラリーの魅力を知るうえでは有意義だったけど、果たしてこれだけで一般のじいさんばあさん、孫ひ孫までシビれさせられるかどうか。

クローズドコース(風)のトコロを、クルマが速く走っても普通でしょう。普段走ってる俺のヴィッツが、普段走ってるあのコーナーを、4速全開でブッっとんだぜ! ってシンプルな驚きがあってこそ、WRCじゃないでしょうか。そこで、マシンに対する驚愕と、ドライバーに対する尊敬の念が生まれるような気も……。
ま、安全第一主義の日本、そうなったのもわかるけど、もうちょっとねぇ。聞けば「こっから先は入れません」に使われる黄色いテープは、50km分も(!?)使われたとか使われないとか。とにかく、スペクタクル性と安全のバランスポイントはまだまだ、といわざるをえない。

ここはかなり近かった。
第159回:勝手にラリー・ジャパンの○と×(その2)果たしてどこまで「非日常」だったか

■お馴染みになれるか?

そもそもWRC自体、俺はヨーロッパで見ても、そう簡単に“お馴染み”にはなれるかどうか? と思った。というのも、山奥へ一日かけて観戦に行っても、知ってる有名なクルマが目の前を走るのは、ほんの一瞬。ラリー・ジャパンはワークス4チーム、WRカーは計8台だから、正味5分あればいい方なのである。この、ある種非効率なエンターテイメントを、日本人がどこまで楽しめるか。それに比べて、同様の労力を経て得られる海外サッカー観戦、F1観戦の方が、わかりやすさでは確実に上。もちろん、俺がまだまだ不慣れで、勉強不足なせいもあるけど、疑問なところは大きい。

ただね、サービスパークやセレモニーで楽しむ“非日常性”は十二分にアリだと思った。もしや日本独特の発展をみせるかも? そうも思わされた、第1回ラリー・ジャパンでありました。

(文と写真=小沢コージ/2004年9月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』