第48回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その1〜(矢貫隆)

2004.09.01 エッセイ
 

第48回:トラブルは起こる〜「クルマで登山パート2」前口上その1〜

 
木曽駒ヶ岳を登山中に撮ったスナップ写真たち。今回は、氷河地形の名残を辿る現地講座に参加した。
これは、稜線に向かってカール地形を登る途中、「ほら、ここに断層がありますよ」と教えられ、わからぬままシャッターを押したもの。断層部は岩が細かく、植物が入り込んでいる。
木曽駒ヶ岳を登山中に撮ったスナップ写真たち。今回は、氷河地形の名残を辿る現地講座に参加した。
	これは、稜線に向かってカール地形を登る途中、「ほら、ここに断層がありますよ」と教えられ、わからぬままシャッターを押したもの。断層部は岩が細かく、植物が入り込んでいる。
稜線から見下ろしたカール地形。ロープウェイ駅が見える。
稜線から見下ろしたカール地形。ロープウェイ駅が見える。
稜線づたいを眺めると、斜面の岩や小石がいまも移動している(下に転がっている)部分と、そうでない部分がはっきりわかる。既に移動しなくなった部分には植物が入り込み、緑の地帯をつくりだしている。
稜線づたいを眺めると、斜面の岩や小石がいまも移動している(下に転がっている)部分と、そうでない部分がはっきりわかる。既に移動しなくなった部分には植物が入り込み、緑の地帯をつくりだしている。

久方ぶりの更新となる「クルマで登山」。パート2として、心機一転、再スタートをきる。
“第2章”は、神奈川県の西丹沢にある檜洞丸から始まるが、その前に、この夏ニュースとなった“あの事故”に、幸か不幸か巻き込まれてしまったお話をお届けしたい。

■トラブルは僕にも起こる

それはまさに一瞬の出来事だった。ピカッと光ったらゴロゴロッと鳴る前に建物内の電気が一斉に消え、次の瞬間にゴロッと雷鳴が響くと同時に大勢の人たちが「キャーッ」と悲鳴をあげた。
僕は雷ではびっくりしなかったけれど、それから10分ほどしてロープウェイの係のおじさんの状況説明を聞いたときには目眩がしたような気がする。

「落雷がロープウェイの電気系統を直撃して運行不能になりました。復旧の目処は立っていません」

近くに登山道はない。だから僕たちは、いつともわからぬ復旧を、ただ待つしか下山の手段はなかったのだ。

そう、忘れもしないあれは2004年7月25日のことである。翌日、テレビのニュースが大々的に報じていたから覚えている読者も多いと思うが、木曽駒ヶ岳のロープウェイが落雷で停止してしまい、標高2611m地点で乗客が14時間も足止めを喰らったというあの事故である。取り残された乗客は1200人。
僕はそのなかのひとりになったのだ。

滑落とか落雷直撃とか遭難とかヘリコプターで救助とか、その種の山のトラブルは自分には無縁だと思っていた。その種のニュースを見聞きするたびに、何て不運な、何て不幸な、何て間の悪いとか思っていた僕だ。今回のことでよくわかった。その種のトラブルは僕にも起こるのだ、と。(つづく)

(文と写真=矢貫隆/2004年9月)

 

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矢貫 隆

矢貫 隆

1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、 多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。 自動車専門誌「NAVI」(二玄社)に「交通事件シリーズ」(終了)、 同「CAR GRAPHIC」(二玄社)に「自動車の罪」「ノンフィクションファイル」などを手がける。 「自殺-生き残りの証言」(文春文庫)、「通信簿はオール1」(洋泉社)など、著書多数。