【スペック】全長×全幅×全高=3810×1670×1410mm/ホイールベース=2475mm/車重=1100kg/駆動方式=FF/2リッター直4 DOHC16バルブ(169ps/6250rpm、20.4kgm/5400rpm)/価格=285.6万円(テスト車=同じ)

ルノー・ルーテシアルノースポール2.0ルノーF1チームリミテッドエディション(5MT)【試乗記】

ロールに身を任せる 2004.08.13 試乗記 ルノー・ルーテシアルノースポール2.0ルノーF1チームリミテッドエディション(5MT)……285.6万円“曲がりやすい”「カービングスキー」に違和感をおぼえるという、自動車ジャーナリストの金子浩久。ルノーのホットハッチ「ルーテシアルノースポール2.0」に乗り、懐かしいスキー板のフィールを思い出した。

スキーとルーテシア

シーズンはとっくに終わってしまったけれども、スキーの世界ではここ5〜6年の間に「カービングスキー革命」が進行している。
カービングスキーとは、スキー板の内部構造を従来のものから大幅に革新することによって、板の全長を短くし、すくない荷重移動でターンを終えることができるようにしたもの。そのメカニズムの詳細は、スキー専門誌を読んだり、プロショップで解説を聞いたりしたのだが、詳しいことは正直、よくわからなかった。
でも、4年前に購入し、毎シーズン履いてみたところ、たしかに、簡単に曲がる。でも、ターンの最中の微調整を受け付けてくれない。ターンのキッカケをつくるのはたやすく、失敗もすくないのだが、「0か1」のデジタル的な反応ばかり感じてしまう。

そこへ行くと、10年前に買って履いていた「ブリザード・コンプSL」というカービング以前の旧式スキー板はコントローラブルだった。あたかも自分の爪先と踵が前後に1メートルずつ伸びたかのように、自由自在にターンをコントロールできた。ターンの最中に細かく修正を加えることができたし、なによりもアナログな感覚が、刻々と変化する雪面を捉えるのに役立ってくれた。
おそらく、人によって好き嫌いが小さくなかった板だろうし、荷重移動をキチンと行わないと曲がらないという“古さ”はあったが、それもいまから考えれば、の話だ。コンプSLの新品がつくられているならば、来シーズン用に買いたいくらい気に入っている。

スキーのことを長々と書いたのは、「ルーテシアRS」のコーナリングの気持ちよさが、コンプSLとどこか共通することに気付いたからだ。

絶妙のロール

試乗したルーテシアRSの正式名称は、ちょっと長い。「ルノー・ルーテシアルノースポール2.0ルノーF1チームリミテッドエディション」という。
これまでのRSとの大きな違いはESP、リアスポイラー、専用エンブレムとグラブボックス上のシリアルプレートなどなどで、7万円高の285.6万円。
2リッター直列4気筒エンジンは、可変バルブタイミング機構を備え、169psを発生する。

最近では珍しい、ちょっと寝ている、ルーテシアRSのステアリングホイールを握り、背もたれを立たせ気味にしてコーナーに進入していくと、タイヤとサスペンションが踏ん張るより前に、絶妙のタイミングとスピードでボディがジワ〜ッとロールを始める。
世のほとんどのスポーツカー、スポーティカーではなるべくボディをロールさせまいとする方向性でシャシーとサスペンションが設計されているが、ルーテシアRSは正反対。「レーシングカーじゃないんだから、ロールは当たり前。だったら、積極的にロールを運転の楽しみや速さに転化できないか」というエンジニアの声が聞こえてきそうだ。
ロールも一様ではなくて、コーナリングスピードやコーナー径、ステアリングを切るタイミングと速さ、量などによって千変万化する。このアナログぶりが、コンプSLを思い起こさせた。

もちろん、ルーテシアのソフトで快い乗り心地が基本にあるから、コーナリングが気持ちいいという大前提がある。気持ちいいだけでなく、コーナリングを手の内に収めている感覚が強い。シャシーやタイヤの能力に任せきってコーナリングを行っているのではなく、ロールしたボディに身を任せながら、クルマと路面の状況を推し量って運転できる。そこが、ルーテシアRSのコーナリングの気持ちよさなのだと思う。





濃厚なコーナリング

同じ体験を、筆者はかつての「メガーヌ・クーペ」でもしたことがある。右に左に、大きくボディをロールさせながら箱根ターンパイクを駆け上がっていく快感は麻薬的で、何度もUターンを繰り返した。

この“ロールに身を任せる”快楽が、ちょっと昔のフランス車の魅力となっていたのだ。ルノーだけでなく、「プジョー205」や「505」、その前の「504」。最近なら、例外的に「406スポーツ」。ハイドロニューマチックであるかどうかを問わず、シトロエンは「2CV」「AX」「BX」「XM」。もちろん、「GS」や「CX」なども含まれる。
最近のメガーヌや「307」、「C2」などでは、かつての“フランス車らしさ”が薄らいでいる。それは、間違いない。でも、このルーテシアRSルノーF1チームリミテッドエディションには強く残っている。誰でも楽に滑れるが薄味のカービングスキーではなく、昔のコンプSLの濃厚な滑走感覚を思い出したのは、ルーテシアRSにも濃厚なコーナリング感覚が存在しているからだった。速いわけじゃないのに、これが楽しい。

……それにしても、フロントフェイスはもうちょっとどうにかならなかったのだろうか。これじゃ、虫だ。

(文=金子浩久/写真=郡大二郎/2004年8月)

関連記事
  • アペリティフ365 in東京の会場から 2017.5.19 画像・写真 東京・渋谷区の代官山ヒルサイドテラスで、「アペリティフ365 in東京」が開催された。フランス人が好むとされる、食事の前に飲み物とアミューズ(おつまみ)を楽しむ“アペリティフ”という習慣を、日本でも楽しもうというイベントである。会場の様子を写真でリポートする。
  • アバルト595コンペティツィオーネ(FF/5AT)【試乗記】 2017.4.26 試乗記 マイナーチェンジでデザインや装備が改められた、ホットハッチ「アバルト595コンペティツィオーネ」に試乗。「スポーツ性能を限界まで高めた」とうたわれる走りの質を、ワインディングロードで確かめた。
  • アバルト595(FF/5AT)【試乗記】 2017.5.19 試乗記 FCAが擁する高性能スポーツブランド「アバルト」のラインナップにおいて、最もベーシックなモデルとなるのが「595」である。刺激的な走りと門戸の広さを併せ持つAT仕様に試乗し、“さそり印”のスポーツカーに受け継がれる伝統に思いをはせた。
  • 「ルノー・キャプチャー」の特別仕様車、2タイプ同時に発売 2017.5.11 自動車ニュース ルノー・ジャポンは2017年5月11日、コンパクトクロスオーバー「ルノー・キャプチャー」の特別仕様車「キャプチャー エクスプレッション」「キャプチャー プレミアム」を発表。同日、販売を開始した。
  • 仏プジョー、本国で「308」をマイナーチェンジ 2017.5.8 自動車ニュース フランスのグループPSAは2017年5月5日、「プジョー308」のマイナーチェンジモデルの概要を発表した。フロントまわりのデザインが変更を受けるほか、先進運転支援システムが強化される。
  • レクサスLC500“Lパッケージ”/LC500h“Lパッケージ”【試乗記】 2017.5.4 試乗記 “製品化を前提としない”はずだったコンセプトカーの発表から5年。ほとんどそのままの姿で登場し、世間を驚かせた「レクサスLC」がいよいよ日本の公道を走る。新開発のFRプラットフォームや10段AT、マルチステージハイブリッドなどの技術を満載した、新世代のラグジュアリークーペの出来栄えは?
  • ルノー・ルーテシア インテンス(FF/6AT)【試乗記】 2017.2.9 試乗記 マイナーチェンジを受けた「ルノー・ルーテシア」に試乗。弟分「トゥインゴ」の、日本での人気の高まりもどこ吹く風で、本国フランスでは2016年ベストセラーカーの座を射止めたその実力とは? 愛される理由はどこにある?
  • ルノー・トゥインゴ ゼン(RR/5MT)【試乗記】 2017.1.6 試乗記 「ルノー・トゥインゴ」に追加されたエントリーグレード「ゼン」の、自然吸気エンジン+5段MTモデルに試乗。ベーシックであることを突き詰めたフレンチコンパクトには、普通であることの素晴らしさが凝縮されていた。
  • ルノー・トゥインゴ インテンス キャンバストップ(RR/6AT)【試乗記】 2016.9.14 試乗記 パリジャン&パリジェンヌはシンプルで合理的なクルマがお好き? ルノーのAセグメントコンパクト「トゥインゴ」が3代目にフルモデルチェンジ。RRの駆動方式がかなえる走りと、このクルマならではの魅力をリポートする。
  • ルノー・ルーテシア ルノースポール トロフィー(FF/6AT)【試乗記】 2015.11.25 試乗記 ルノーのホットハッチ「ルーテシア ルノースポール」の中でも、“最高峰モデル”とされる「トロフィー」に試乗。専用チューンのエンジンや足まわりを吟味しつつワインディングロードを走らせてみると、ルノースポールならではの職人技が見えてきた。
ホームへ戻る