長くて短いウィークエンド……「チームゴウ」のルマン(後編)

2004.06.26 自動車ニュース
 

長くて短いウィークエンド……「チームゴウ」のルマン(後編)

2004年6月13日、日本のプライベートチームとして、ルマン24時間レースで初優勝を遂げた「アウディスポーツ・ジャパン・チームゴウ」。その瞬間に立ち会うことができた自動車ジャーナリストの生方聡が、長くて短かったウィークエンドの模様をリポートする。


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■寝過ごした!

4台のアウディのうち、2台がコースアウト、トップ争いは、事実上チーム・ヴェロックスとチームゴウのアウディR8 2台に絞られた。序盤のコースオフから、じわじわと順位を上げていくチームゴウだが、レースはやがて膠着状態に入った。夜もふけてきた深夜3時、私は荷物をまとめにホテルに戻った。今回、アウディのご厚意で用意してもらったのが、知る人ぞ知る「アウディ・ホテル」。サルト・サーキットのすぐ側にあるホールに、即席で客室とシャワールームを設置した仮設のホテルだ。


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部屋は約2畳ほどのスペースで、その半分がベッド、さらにテーブルが置かれているので、スーツケースを広げるとドアが開けられない大きさだ。しかし、ベッドもシャワーもトイレも清潔で、なにより、サーキットから徒歩で戻れるのがうれしい。この時期ルマン市内に宿を確保するのは難しいし、サーキットから往復するだけでもクルマで30分はかかるから、狭いながらも“最高のホテル”である。


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ちょっと横になる……つもりが、気がつくと朝の6時半をまわっていたからさあ大変! シャワーを浴びて、荷物をまとめて、サーキットに急ぎ、チームゴウの順位を確認する。
と……トップだ! 私がサーキットに到着するちょっと前に、それまで首位を走っていたヴェロックスのR8が左リアのサスペンショントラブルでピットイン、プッシュロッドの交換に手間取り2周分の時間をロス、その隙にチームゴウのR8がトップに躍り出たのだ。レース開始から約15時間後、午前7時過ぎのことだった。

トップに立った瞬間を見逃したのは悔しかったが、結果はもちろんうれしい。このまま走りきれば念願の優勝……そう思った途端、追われる側の不安を感じ始めた。郷監督も同じ気持ちだろうか? きっと追う立場の方が気が楽だったに違いない。


レース期間中、サーキット内にはブックストアやグッズショップなど、様々な土産物屋さんが出現する。写真はミニカーショップ。
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■目が離せない展開

いつもならレース終盤ともなると、順位争いも一段落して、「おみやげでも買いに行こうか」とピットを抜け出すのだが、今年は最後まで目が離せなかった。たとえば、チームゴウのエース、トム・クリステンセンがドライブを担当しているときに、立て続けにスローパンクチャーに見舞われ、2回のピットインを強いられたり、給油後にマシンから火が出て、消火作業に手間取ったりして、そのたびに2位との差が詰まっていったからだ。


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23時間を過ぎてもトップ争いは続いていた。2台のR8は同一ラップを走っていて、その差はわずか30秒ほど。予定外のピットストップで簡単に順位がひっくり返るリードでしかない。ドライバーは荒選手。路面の熱さと、同じタイヤで通常よりも長く周回を重ねていることからタイヤのグリップは低下気味、モニターからもコーナーで苦労しているのがわかる。マシンをふらつかせ、ときにはタイヤスモークを上げながら、荒選手はゴールを目指す。

ゴールまであと30分、午後3時半を過ぎても2位のジョニー・ハーバートは追撃の手を緩めない。いつもなら、そろそろお祭りムードが高まるのだが、同一ラップでトップ争いをしている状況では、同じアウディ同士でもパレードランはありえないだろう。


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だが午後3時50分頃、ジョニーがコースアウトをきっしたおかげ(?)で、チームゴウの優勝がようやくたしかなものになってきた。この瞬間、私はチームゴウのピットでモニターにかじりついていたが、横で荒選手を見守る郷監督にも、ようやく笑顔が戻った。

しかし、最後まで慎重な郷監督である。午後4時を過ぎて、チームゴウのR8が最終コーナー手前に辿り着くまでは、モニターの前を離れようとしなかった。そしてゴール。荒選手がドライブするR8をピットウォールで出迎える郷監督の喜びの表情が、泣けるほど印象的だ。

おめでとう郷監督、おめでとう荒選手! 私にとっても最高のルマンだった。

(文=生方聡/写真=生方聡、アウディジャパン/2004年6月)

アウディジャパン:
http://www.audi.co.jp/

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