第138回:ホンダ・エリシオンに試乗 最近“ホンダっぽさ”復活してます

2004.06.14 小沢コージの勢いまかせ!

第138回:ホンダ・エリシオンに試乗 最近“ホンダっぽさ”復活してます

【スペック】
G:全長×全幅×全高=4840×1830×1790mm/ホイールベース=2900mm/車重=1800kg/駆動方式=FF/2.4リッター直4DOHC16バルブ(160ps/5500rpm、22.2kgm/4500rpm)/車両本体価格=286万6500円
【スペック】
	G:全長×全幅×全高=4840×1830×1790mm/ホイールベース=2900mm/車重=1800kg/駆動方式=FF/2.4リッター直4DOHC16バルブ(160ps/5500rpm、22.2kgm/4500rpm)/車両本体価格=286万6500円
 
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■ヘンテコ高級ミニバン!?

先日、ホンダ初の高級ミニバン、エリシオンの試乗会に行ってきました。結論から言いますとね、「ホンダらしさ」が復活してきてると思った。それも昔のホンダが持ってた「ちょっとヘンクツな」ホンダらしさ。個人的には喜ばしいかぎりです。

最初は「よくわかんないミニバンだなぁ」って思ってたわけよ。サイズは特別デカくないし、エンジンも最大3リッターV6だし、中身も普通の3列シートで「3列目に気を遣った」っていうけど、そのぶん、シートアレンジメントは物足りない。「クルーザーをイメージした」っていうデザインもね……悪くはないけど、特別印象に残らない。「ちょっと奇をてらったか?」って感じの小アヴァンギャルド・デザインでしょうか。
乗っても最初はピンとこなかったわけよ。オデッセイ同様「低床プラットフォーム」っていうけど、それほど床は低くないし、今までの日産エルグランド、トヨタ・アルファードよりは乗りやすいかなぁって程度。

だけどね、走り込めば走り込むほど、エンジニアに話を聞けば聞くほど、わかってくる。エリシオンが狙ってる「ヘンテコな高級ミニバン像」がね。

 
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■床高の“微妙な事情”

まず、驚いたのが乗り心地のよさ。助手席の人が「こんなに乗り心地のいいクルマ、乗ったことない」って連発したのもあるけど、確かにかなりいい。
ある意味、ベンツをちょっとマイルドにしたようっていうかな? 柔らかでしっとりしてて、独特の安定感があって、個人的には高速道路の継ぎ目を越える時の「ドン、ドン」って振動の伝わり具合がキモチいい。ハンドリングも悪くない。「楽しい!」ってほどじゃないけど重心が低い分、高速でのロールの少なさは特筆モノで、この点ではライバルは比べ物にならない。エルグランドなんかの場合、重心が高すぎて時々不安になるもんね。
3列目の居住性は言うほどよくはなかったけど、悪くない。アレで長距離ドライブもイヤではないかな。

でね、試乗を終えてエンジニアに聞いてみると、この床の高さ、なんとも微妙な事情でこうなってんのよ。
基本的にはモノコックボディで、ライバル車に比べてかなり低くなってる。っていうか、エルグランドとかアルファードって「わざと床を高くしてる」らしい。特にFFベースのアルファードはそれが顕著で、「見晴らしのいい高さ」を実現するためにあえてそうしてある。
一方、エリシオンはまったく逆で、乗り降りのしやすさや、室内の広さを狙って低くはしてるけど、乗り心地をよくしたいがためにボディとサスペンションの間にはフローティング式のサブフレームを入れてある。
つまり、絶対的には低くしてあるんだけど、サブフレームのぶん、効果は薄れてる。ちなみにエルグランドやアルファードを含め、サブフレームを採用しているミニバンはほかはないという。
要するにパッと見のインパクトより、長く乗ってわかる乗り心地を取ったのであーる。

 
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■妙な理想主義

このサブフレームに代表される「わかりにくいクルマ作りへのこだわり」。久々にホンダっぽいと思ったなぁ。ある意味、“昔っぽい”かもしれない。FF縦置きミッドシップとか、ATの“★(スター)ゲート”とかいろいろあったじゃない。妙な理想主義を感じさせるんだけど、いうほどその効果は出てないという構造。
というのもエリシオンの乗り心地、確かにいいんだけど、「わかんない人にはわかんないんじゃないかなぁ」って感じなのよ。クルーザー風のエクステリア・デザインもそうだし、「とにかく質を高くした」っていい張るインテリアもそう。新型オデッセイもそうだよね。「とにかく床の低いミニバンを作ろうと思った」ようで、なんでもかんでも床の下にパーツを押し込んであって、ある意味、昔のプレリュードのようじゃない。
でもさ、だからいいのよ、ホンダ車は。「ちょっと無理やり」だけど「キモチはわかる」ってのが魅力であり面白さ。それから絶対的にメインストリームにはなりえないクルマ作りの方向も、実にホンダらしい。最初からエルグランドやアルファードのお客さんなんか狙ってないモンね。でもそれでいいと思う。

あとさ。国内専用モデルでなおかつほぼオール新設計だから「そんなにお金かけて大丈夫かぁ?」とも思ったけど、全然大丈夫なのね。
実はエリシオン、「まともに売れる高価格車」としてはある意味ホンダ初。レジェンドとかもあるけど、アレって正直、最初っからあんまり売れそうもないじゃない?
しかし日本はいまやミニバンがメインだし、何割かはホンダファンがいることがわかってるわけだから、マジメにホンダらしい高級ミニバンを作れば、ある程度は売れることがわかってる。実際、5月13日の発売から6月7日までに、目標の約2.5倍(!)、1万台を受注したらしいしね。

ってなわけでエリシオン、個人的にはわりと好印象でした。その妙に個性的で、地味マジメなところがね。これからもホンダはこうあって欲しい、そう思った今日この頃です。

(文と写真=小沢コージ/2004年6月)

小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』

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