【スペック】全長×全幅×全高=4795×1790×1780mm/ホイールベース=2900mm/車重=1840kg/駆動方式=4WD/2.4リッター直4DOHC16バルブ(131ps/5600rpm、19.4kgm/4000rpm)+フロントモーター(13kW/1130-3000rpm、11.2kgm/0-1130rpm)+リアモーター(18kW/1910-2500rpm、11.0kgm/0-400rpm)/車両本体価格=399万円(テスト車=446万2500円)

トヨタ・エスティマハイブリッド Gセレクション 8人乗り(CVT)【ブリーフテスト】

トヨタ・エスティマハイブリッド Gセレクション 8人乗り(CVT) 2004.05.20 試乗記 ……446万2500円総合評価……★★★★ジマンのハイブリッドシステム「THS-C」を改良し、ミニバンとしては異例の燃費のよさを実現した「エスティマハイブリッド」。大型連休に長距離ドライブに出かけた、別冊CG編集室の道田宣和の評価は?


さりげなく、しかし、まだ一歩も二歩も……

初代「プリウス」のときはあれほどの話題になり、また実際テストする側としても大感銘を受けたのに、いまはそれほどワクワクしない自分が不思議だ。馴れとは恐ろしいもので、かつて“未来の象徴”と囃されたハイブリッド車ももはや特別な存在ではないらしく、そのこと自体はさしたるニュースにならない。なんだかちょっぴり寂しい気もするが、メーカー自身もそれでよしとするフシがなくもない。ハイブリッド車固有の装備であり、パワー伝達の様子が一目でわかって見るだけで楽しい、例の「エネルギーモニター」が、もはや積極的に画面を呼び出さないかぎり表示されなくなったのだ。
けれどもこのクルマ、マイナーチェンジを機にハイブリッドシステムに磨きをかけ、特に燃費の面でさらなる向上を果たした。コンベンショナルな方式に対する価格差は、対応するモデル同士(2.4リッター/4WDの最廉価版)においてなお約85万円高い。とはいえ、これには装備の差が含まれておらず、考え方を変えて“一番高い”グレード同士では、ハイブリッド「2400Gセレクション 7人乗り」が、3リッターのトップモデル「3000G」より32万1500円高いだけとなる。つまり、充分に現実的な検討対象となり得るのだ。
それにしても「エスティマ」というクルマ、久しぶりに乗ってみて世の中にはこんなにも多かったのかと再認識させられた。おりからの連休に乗り出し、高速道路のサービスエリアで停めたら、周囲を同じ現行型3台に取り囲まれた。

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
ハイブリッド化で先鞭をつけ、かつ業界をリードし、自ら早くも事実上の“世界標準”となりつつあるトヨタが「プリウス」に次いで送り出した意欲作である。コンベンショナルな駆動方式のモデルとボディ/シャシーを共有するハイブリッド車としては、「エスティマハイブリッド」が初めて。2003年7月末のマイナーチェンジでバンパーやグリル、リアランプまわりの化粧直しを受けるとともに、ハイブリッドシステムや安全対策、内装、装備品が一部変更された。なかでも「THS-C」(トヨタ・ハイブリッド・システム-CVT)と呼ばれる中核技術の改良が注目される。
ひとことで言えばエンジンはほぼそのままに、制動エネルギーの回収、いわゆる回生ブレーキの作動範囲を拡大し、全体としての燃費効率を向上させたのだ。具体的には、モーターによる走行領域の拡大、回生ブレーキ開始車速の引き上げ、ハイブリッド用バッテリーの内部抵抗や電動-油圧パワステ用オイルポンプモーターの消費電力低減、エンジン駆動/電動切り替え式2ウェイエアコンコンプレッサーの採用(世界初)などである。これらにより、もともとコンベンショナルなエスティマに対して2倍弱を誇った燃費の10・15モード国交省審査値は、従来の18.0km/リッターから18.6km/リッターへと3.3%の改善をみた。同時に、リアモーターのアシスト量を増大することで発進時の駆動トルクと加速時のアシスト範囲/頻度を拡大し、加速性能を向上させたとしている。エンジン本体にも1点だけ改良があり、VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)をよりスロットル開度の低い段階からエンジントルクを高める特性とした。
(グレード概要)
同じエスティマでも、グレード構成と中身がかなり異なるコンベンショナルシリーズとは対照的に、ハイブリッド版は“標準車”とより豪華な「Gセレクション」の2種しかなく、それぞれ8人乗り(351万7500円/399万円)と7人乗り(354万9000円/402万1500円)にわかれる。メカニズムは共通で、“G”はアルミホイールをはじめディスチャージドヘッドランプ、コンライト、クルーズコントロール、運転席パワーシートなどが標準装備される。
マイナーチェンジの特色のひとつが、より充実したAV機器の登場だ。“G”にはもともと「ライブサウンドシステム」と呼ばれる「G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション」が標準搭載。テスト車はさらに、DVDビデオも見られる9スピーカー+後席用9型ワイドディスプレイ付きにグレードアップされた、新設の「シアターシステム」が、ブラインドコーナーモニターなどとのセットオプションで付いていた。





写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
Cd値=0.30の先鋭的なスタイリングも助長しているのか、鼻先が見えないのはたしかである。けれどもそれを補うべく、いずれもオプションではあるものの、「音声案内クリアランスソナー」や「音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター」が付いており、大きな図体で狭い路地に入り込んでもブザーや「右前!」「左後ろ!」と(ナマっぽい)声で、障害物の存在とその距離を的確に知らせてくれるのがありがたかった。
小物入れやカップホルダーの類はダッシュボードやドア周辺に数多く設けられ、サードシートにもそれ専用に設置される周到さだ。メーターやスイッチ、AV機器などの操作性も問題なく、当初付いていないのでは? と勘違いしたエネルギーモニターも、「車両情報」を呼び出せば楽しむことができる。唯一残念なのはもはやこのクルマには不要と判断したか、タコメーターがどこを探しても見当たらないことで、ドライバーとしては重要情報のひとつが失われた思いだ。
(前席)……★★★
余裕あるスペースを活かしつつ、居住空間と操作性の両立を図ったダッシュボード中央の湾曲が、適度なバランスの元になっている。すなわち、足下にはたっぷりしたゆとりがある一方、ステアリングやCVTのセレクターレバー/スイッチ類、空調/AVなどへのリーチは容易で、前後・左右方向のウォークスルーに関しても、すくなくともアームレストを畳めば普通の体型であるかぎり可能なはずだ。
(2列目シート)……★★★★
個人的な話で恐縮だが、このクルマをテストしていちばん喜んだのが、ウチの年寄りである。どうせならそれらしく使ってみようと、連休中に渋滞を覚悟しつつ(幸いにもほとんど順調だった)片道250km+の遠出を敢行した。いつもは小型のヨーロッパ車で窮屈な思いをしていた当人は、60対40分割式のセカンドシートがえらく気に入った。スペースそのものの余裕もさることながら、バックレストを倒してサードシートのクッションと繋げ、うち“60”の方を独占。長旅でも、休憩時に横になれて身体が楽だったとのことだ。
実際、485mmのスライド量を持つこのシートはレッグルームはもちろんのこと、ヘッドクリアランスも十分以上。ボディ内側に一段低いステップが設けられていることもあって、乗降時のアクセスもよい。オプションのパワースライドドアを運転席からも操作することができ、勝手がわからない年寄りを乗せても確実に閉められるのが安心だ。
(3列目シート)……★★★★
8人乗り仕様の場合、サードシートへはセカンドシートのウォークイン機能を利用して出入りすることになるが、それによって初めて生まれる通路は、正直いってあまり余裕のあるものではない。後席住人にとってよりホールド製の高い「リラックスキャプテンシート」なる、セパレート式セカンドシートの7人乗りを選ぶ手もある。しかし、その場合は当然上記のような使い方ができなくなるわけで、要は目的に合わせて選ぶことだ。一旦収まってしまえば、3列目はレッグルームもそこそこ確保されている。天井が若干低めなのを除けばこれといった問題もなく、むしろ補助的なシートとしては上々の部類に属する。
(荷室)……★★★
全長が一定だとすれば、荷室の広さはそれ以前のスペースとトレードオフの関係にある。結論からいってこの場合、まずまずではないかと思う。乗員は3人だったが、それに見合うだけの手荷物は収容できたし、足りなければ空いたシートの一部を潰して載せればよいのだから。広さよりも、セキュリティのため、この部分を覆うカバーなりシェルフなりが欲しい。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★
コンベンショナルなエスティマシリーズは、ハイブリッド版が積むユニットと同じ2.4リッター直4のほかに、3リッターV6も用意される。その事実からも想像されるとおり、車重1.8トン超におよぶミニバンとして、動力性能はごく平均的。特に速くも遅くもない。
動力性能はさておき、注目すべきは、それが異例な好燃費と両立していることである。トータル800km+に及んだ走行距離のうち、前半は都心-近郊間の通勤や目的地での市街地走行が多く含まれたが、それでも8.9km/リッターを記録。高速巡航が大部分を占めた後半は11.3km/リッターまで伸び、平均で9.8km/リッターとなった。高速巡航区間だけを取り出せば、12〜13km/リッターは確実だったはずだ。しかも、指定燃料はレギュラー。ともすると“ガソリンがぶ飲み”のイメージが強く、ランニングコストも嵩みがちなこの種のクルマとしては、まさに例外的というべきだろう。燃料タンクも70リッターと余裕があり、長距離にはもってこいなのである。
ところで、例のエネルギーモニターを観察しているといろいろなことがわかって、結構面白い。発進の瞬間は、バッテリーの蓄積量にもよるが、エンジン(最大トルク19.4kgm/4000rpm)より、むしろ低速のピックアップが鋭いフロントモーター(同11.2kgm/0-1130rpm)とリアモーター(同11.0kgm/0-400rpm)を使い、“電気自動車”としてスタートすることが多い。そのあとはエンジンでの走行を中心に、状況によってフロントモーター(加速時)あるいはフロント/リアモーター(全開加速時)がアシストしたり、エンジンを切ってモーターが回生ブレーキ・モードに転じたり(減速時)と様々だ。見ているとずいぶんと目まぐるしく、なるほどエネルギーの一片たりとも逃すまいとしているのがよくわかる。相手が機械とはいえ、その奮闘ぶりに、労りの言葉をかけてやりたくなるほどだ。
反面、さしもの高度なコンピューターも、特定の状況では一瞬迷うことがあるとみえる。たとえば、減速中に一転して再加速する際などはコンマ何秒かの間反応がなく、ドライバーはやや歯痒い思いをすることがある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
2900mmの長大なホイールベースと、ミニバンとしては比較的ボディ中央にある着座位置とで、乗り心地はドライバーズシートでも概してフラットである。間違っても昔のキャブオーバー型ワンボックスのように、路面の起伏をモロに拾ってエレベーション(垂直な上下動)を喫することはない。バネ自体には特に硬い印象はないものの、タイヤあるいはフロア剛性のせいか、強いて言えば若干ゴツゴツした感触と微振動は指摘できる。
背の高いプロポーションのわりに、ロールはよくチェックされている。重量配分も前55:後45程度と適度にバランスがとれているためか、アンダーステアも軽めだ。要するに、操縦性はなかなか良好である。ただし、電動-油圧式のパワーステアリングが、フィーリングの点でやや不満。操作途中にカクカクとした段付きが認められた。そのせいもあってか、ときとして若干重めに感じられることがある。スタビリティの点でも矢のように突き進むタイプではない。

(写真=峰昌宏/2004年5月)

【テストデータ】

報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年4月30日〜5月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6702km
タイヤ:(前)205/65R15 94H(後)同じ(トーヨー・トランパスJ39)
オプション装備:音声案内クリアランスソナー(4万2000円)/レーダークルーズコントロール(8万4000円)/デュアルパワースライドドア(12万6000円)/エスティマハイブリッド・シアターシステム(G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション/6.5型ワイドディスプレイ+DVD・MD一体AM-FMマルチ電子チューナー付きラジオ+TV+ビデオ端子+9スピーカー、後席9型液晶ワイドディスプレイ、ブラインドコーナーモニター&音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター(19万4250円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:822.6km
使用燃料:83.86リッター
参考燃費:9.8km/リッター

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