【スペック】全長×全幅×全高=4100×1695×1670mm/ホイールベース=2700mm/車重=1220kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブ(110ps/6000rpm、14.4kgm/4400rpm)/車両本体価格=173万2500円(テスト車=218万5050円)

トヨタ・シエンタ1.5G(CVT)【ブリーフテスト】

トヨタ・シエンタ1.5G(CVT) 2004.05.16 試乗記 ……218万5050円総合評価……★★★★トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」。トップグレード「G」に乗った別冊CG編集室の道田宣和は、ノリノリのTVCFから想像されるより、かなりマジメにつくられたクルマであることに気が付いたという。

インサイド・アウト!

「ノレバ・ソラ・シエンタ〜」
軽快なリズムのコマーシャルで可愛さムードばかりが目立つ「シエンタ」だが、実はクルマづくりの本質において、相当に真面目で実験的な取り組みがなされている。それは「外寸より中身の方が大きい!」と感じさせるほどのスペース効率であり、また、それほどの空間的ボリュームをわずか1.5リッター、それもハイブリッドなどではない、ごくコンベンショナルなエンジンで動かそうという試みだ。そんなところに「ルノー・カングー」や「フィアット・ムルティプラ」にも似た、一種の潔さを感じるのは筆者だけであろうか? クルマとしてのデキに若干未消化な部分もないではないが、その意気やよしである。



トヨタ・シエンタ1.5G(CVT)【ブリーフテスト】の画像
写真をクリックするとインパネのアップが見られます。

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【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
ジュラ紀・白亜紀の恐竜さながらに、手を替え品を替え次々と送り出されるミニバン。少々食傷気味のなかで、「シエンタ」のパッケージングはひときわ異彩を放つ。全長4100mはセダンを含むトヨタの全ラインナップ中、もっとも短い部類に属する。一方、対するホイールベースは2700mmと長大で、いかにも「ボディの四隅にタイヤを追いやった」感が強い。そのうえで全高をほどほどの1670mmとし、全幅は小型車枠にきっちりと収めた。そう、シエンタの本質は「賢さ」から来る「可愛さ」なのである。開発者のイメージしたターゲットは「赤ちゃんを抱えたママ」だそうだが、ママにいいならみんなにもいいはずだ。「カローラ」で十分なユーザーに「クラウン」は過剰なのだから、“コンパクトミニバン”は同時に“オプティマムな(最適)”ミニバンなのである。
フロアから下のコンポーネンツは、基本的に「ヴィッツ」系のものを流用している。フロント横置きのエンジンはVVT-i付きの1NZ-FE型、1.5リッター直4DOHCで、FFモデルはCVT変速機およびトーションビーム式リアサスペンションと、4WDは4ATおよびダブルウィッシュボーンと組み合わされる。ステアリングは電動パワーアシスト付き。
ところでその1NZだが、実は型式こそ同じでも、ひとりFF用だけが新設計だ。ヘッドを一新して、ピストンリングの張力調整やピストンスカート部への樹脂コート実施などでフリクションを低減。結果として4WD用の105ps/6000rpm、14.1kgm/4200rpmから、110ps/6000rpm、14.4kgm/4200rpmへのパワーアップと燃費改善(10・15モードで14.0km/リッター対19.0km/リッター)を果たした。もっとも、後者についてはリアデフの有無で100kgも違いのある車重の影響も考慮する必要があるだろう。
(グレード概要)
シリーズの構成は上から「G」(173万2500円)、「X」(156万4500円)、「X“Eパッケージ”」(143万8500円)と3種のみ。装備の違いは比較的少なく、Gがスマートドアロックリモコンや左側パワースライドドア、前席アームレスト、オートエアコンなどを標準で備える。一方、逆にEパッケージからは、上位2グレードにあるプライバシーガラスやリアワイパー、運転席のシートリフターなどが消える程度だ。マニュアルエアコンはXパッケージにも付いている。GとXに用意される4WD仕様はそれぞれ19万9500円高である。



トヨタ・シエンタ1.5G(CVT)【ブリーフテスト】の画像


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写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。

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【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
シエンタには失礼かもしれないが、テストを終えた瞬間思わず「大きな軽自動車」という言葉が口を突いて出た。けっしてけなしているのではない。むしろその逆で、例の「タイヤが四隅にある」プロポーションがそうなら、ありとあらゆる隙間を有効利用したポケッテリアがそう、という意味でだ。
たとえばメータークラスターを中央上部に配したダッシュボードの左半分がその典型だ。ここには一見ふつうのリッド付きグラブボックスと剥き出しの棚しかないように見えるが、実は棚の一部が助手席用カップホルダーを兼ねており、さらに棚の奥をよく見ると車検証と取り扱い説明書を薄い蓋で隠したもうひとつ別のグラブボックスが隠れている、といった具合である。こういった“創意工夫”はほかにも随所に見受けられ、その徹底振りは涙ぐましいばかり。軽自動車に限らず、小型実用車は本来そうあってしかるべきなのだ。
(前席)……★★★★
むろん、絶対的なスペースは軽自動車の比ではない。フロントシートはダッシュシフトの採用といった“小技”もさることながら、それよりもやはり十分なホイールベースとアップライト気味の着座姿勢がもたらす空間利用の巧みさが大半を決し、同クラスのセダンに望むべくもない余裕を実現している。特にヘッドクリアランスの大きさが目立つが、レッグルームや腰まわりの余裕も十分だ。ミニバンだからといって、あえてウォークスルーに固執しなかったのもかえって幸いした。
シートは必要なサイズを確保した上で完全なセパレート式が可能となり、ザックリとした木綿感覚のファブリック地には適度な型押しがされてフィット感を高めている。
(2列目シート)……★★★★
シエンタのパッケージ的成功の要因が独特のルーフラインにあると知ったのは、セカンドシートに座ったときである。一見単純な平面のように見えて、実は前席直後の真上あたりを頂点とし、後ろに行くにしたがって微妙に下降、最後のところで再びすこしだけ持ち上がるルーフは、スペースと見晴らし、そして空力とを絶妙にバランスさせている。空力? と怪訝に思うかもしれないが、Cd値はなんとミニバン・トップクラスの0.30なのだ。
それはともかく、定員で3名、実際には前席同様軽くシェイプしたクッション/バックレストが中央でスプリットされ、事実上の2人乗りであることを示唆するセカンドシートは、ヘッドクリアランスに十二分な余裕があるだけでなく、やや高めにセットされた着座位置のお陰で前方視界が抜群だ。それでいて不安感とは無縁である。
それに比べるとレッグルームはさほどでもないが、もちろん必要にして十分なだけは確保されている。いまやこの手のクルマで半ば常識となった「パワースライドドア」(左側)と「イージークローザー」(右側)も便利だ。操作の軽さもさることながら、不慣れな、あるいは不注意な同乗者による“半ドア”の心配がないからである。
(3列目シート)……★★★★
この項目のレイティングには注釈が要る。評価の基準に「このクラスとしては」というウェイト付けが含まれるのは当然だが、さらにこうしたコンパクトクラスでは広さが荷室とトレードオフの関係にならざるを得ず、その観点からの評価であることをまずはじめにお断りしておく。
ワゴンやミニバンのサードシートは、クラスによらずしょせん補助的なもの。まともには座れないのがふつうだが、このクルマの場合は1列目や2列目に比べてもさほど遜色のないスペースと居心地を提供するのが意外であり、収穫だった。シートのサイズそのものはやや小振りで、特にバックレストは肩の部分を十分には支えないものの、代わりに上下に伸縮自在なヘッドレストがそれを補うことができる。なにより、レッグルームやヘッドクリアランスがきちんと確保され、シートのつくり自体も手が抜かれていないのがいい。着座位置はリアエンジンバスの最後部のようにさらに一段高く、すくなくとも閉所感は免れているのが嬉しい。
(荷室)……★★★★
シートを全部立てたままだと背後に残されたスペースはミニマムだが、それでも手持ちのバッグや買い物袋程度なら、数個以上は楽に収まる。つまり、すくなくともセダン型軽自動車くらいの容量は最初から確保されているということだ。問題はむしろ、収容物を完全に目隠しできるトノーカバーなどがオプションでも用意されないことかもしれない。
それよりも、サードシートを倒し、ラゲッジルームとして活用するときの使い勝手が重要だ。通常はフルに7人乗ることのほうがすくないと思われるからである。その点、このシエンタの荷室はかなりのできと言ってよい。ここでも完全なセパレート式と割り切ったサードシートが功を奏している。必要に応じて左右のどちらか、あるいはその両方を倒せばいいし、倒したときの収まりかたもセカンドシートの真下にそっくり隠れて実に気持ちがいい。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★
当初、1220kgの車重に対して1.5リッターではいかにも非力と思われたが、結論から言えば、ふつうのペースで走るにはまずまずの動力性能であることが判明した。いや、むしろここぞというときには、ピックアップのよいCVTが幸いしてか、踏んだ次の瞬間に間髪入れず加速するのが美点である。フルスロットル時のエンジン回転は、6400rpmのリミットまで余すところあと500rpmだけの5900rpmに達する。もっと低い回転数でうち切る、あまり“まわらない”CVTにありがちな「余剰感」を免れている。ただし、まわすとそれなりにうるさいし、絶対的なパワーが限られているだけに高速になってからの伸びは鈍化する。

ところでこのエンジンとCVTの組み合わせ、おそらくは燃費のためだろう、発進直後からのマナーがとってもヘンというか、かなりせっかちである。セレクターのポジションにはスポーツモード/軽いエンジンブレーキのための“S”や、より強力なエンジンブレーキのための“B”もあるにはある。が、とにかくDレンジに任せつつ、ハーフスロットル以下の軽い踏み方をしているかぎり、ものの20km/hにも達しない頃から徹底した“省エネ運転”に突き進むのだ。
機械が勝手に選び出すのはいつも決まって1100rpm(!)の極低回転。ちょうど昔のズボラなタクシードライバーがよくやったように、カリカリというノッキングもものかは、まるでマニュアル4段のクルマでスタート直後からいきなりトップに放り込んだかのようだ。当時と違っていまはノックセンサーがエンジンを保護するはずだし、すでに述べたように踏めば即応するから、問題がないと言えばないが、それにしてもこれはいささかやりすぎ。その証拠に、ノッキングの直接的な音こそギリギリのところで抑えられてはいるものの、それ以前の低周波音がボディを震わせているとみえ、それが微かなハウリングとなって耳に届く。わざとそのまま様子を見ていると、あとはもっぱらCVTがプーリーの径を変化させるのに任せているらしく、タコメーターの針はピタリ1100rpmを指したまま。それでもなんとか流れに伍して行くだけの加速は披露するのだから、逆に大したものだともいえる。
その意味からも大いに注目された燃費は、主として深夜・早朝の首都高(つまりは高速道路並みということ)が約半分を占めた都内・近郊間の通勤で10.2km/リッターと、やはりこの種のクルマとしては優秀な成績だった。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
惜しむらくは全般に乗り心地が硬く、かといって操縦性もタウンスピードではまずまずながら、高速ではステアリングがいまひとつ安定感に欠けることである。
まず乗り心地だが、こうしたトールボーイで問題になりがちな縦横の姿勢変化、すなわちロールの深さやピッチングなどにはさしたる不満がないのに、ファミリーユースには似つかわしくない足の硬さだけがなぜか目立っている。その理由がバネやブッシュ、スタビライザーなどのサスペンションそのものにあるのか、あるいはタイヤなのか(標準は175/70R14 84Sとひとまわり細い)、それともボディ剛性が関係しているのかは判然としない。いずれにせよ、鏡のようにスムーズな路面でないかぎり、速度を問わず終始ゴツゴツとした感触が伝わってくるのは事実である。もしかしたら7人乗りということで荷重変化が大きいのに備えて、スプリングレートが高いものを、それもあえて非線形でないバネ定数のまま使っているのであろうか? 思わずそんな疑問さえ浮かんでくる意外なハーシュネスの強さだった。

それに比べればハンドリングへの不満は比較的小さい。電動パワーステアリングは繊細なフィールにこそ欠けるものの、操舵力は適度な軽さだし、特に不正確というわけでもない。ロック・トゥ・ロック3.5回転のレシオも強いて言えばやや遅いかなという程度で、要するにごくふつうなのだ。しかし、高速では、いうまでもなく法定速度の範囲内だが、なぜかどっしり座った安定感に乏しく、たまたま何かのきっかけで多少のヨーやロールが発生すると途端にステアリングに神経を集中させられる場面があった。ファミリーカーにはそこまで求めないという声もあろう。けれども、このクルマのパッケージングの秀逸さを考えるといかにも惜しいのだ。

(写真=清水健太/2004年5月)

【テストデータ】

報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年3月29日〜4月5日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:8885km
タイヤ:(前)185/60R15 84H(後)同じ(トーヨー・トランパスR25)
オプション装備:幅広タイヤ+アルミホイール(6万3000円)/ディスチャージヘッドランプ(マニュアルレベリング機能付き。4万7250円)/SRS全2席サイドエアバッグ+セカンドシート・センターヘッドレスト+盗難防止システム(4.0万円)/G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きワイドマルチAVステーション+音声ガイダンス機能付きバックガイドモニター(6.5型ワイドディスプレイ+CD・MD一体AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ&6スピーカー&ガラスアンテナ(30万300円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:660km
使用燃料:64.7リッター
参考燃費:10.2km/リッター

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