【スペック】全長×全幅×全高=4875×1825×1440mm/ホイールベース=2750mm/車重=1570kg/駆動方式=FF/2.5リッターV6DOHC24バルブ(167ps/6000rpm、22.9kgm/4000rpm)/220万2900円(テスト車=230万7900円)

ヒュンダイXG250(4AT)【ブリーフテスト】

ヒュンダイXG250(4AT) 2004.04.24 試乗記 ……230万7900円総合評価……★★★ジワジワっと販売台数を伸ばしつつあるヒュンダイ。約18年前、「ポニーエクセル」をテストした別冊CG編集室の道田宣和が、日本におけるフラッグシップ「XG」のベーシックグレード「XG250」に乗った。


価値ある★3つ

1980年代半ば、日本経済新聞社から取材を受けたことがある。『CAR GRAPHIC』(1986年3月号)に載った筆者の試乗記事を見て、今後韓国車は伸びるかどうか意見を求められたのだ。
くだんのクルマは、当時“駆け出し”のヒュンダイが一球入魂の思いで主力に据えていた「ポニーエクセル1500スーパー」。「三菱ミラージュ」を下敷きにした初のFF車だった。乗ってみると指摘すべきところは多々あるものの、すでに工業製品としての基本は押さえられていた。それに、あの熱心な国民性を考えると、大いに可能性を秘めているのではないかというのが率直な印象だった。後日、同紙一面のコラムを飾ったときも、そんな論調だったと記憶している。

とき移り、今世紀に入ってからのヒュンダイはまさに破竹の勢い。販売台数の世界ランキングでは、ここ数年ホンダや日産と7〜8位の座を巡って、抜きつ抜かれつの争いを演じるまでになった。
今回18年ぶりに乗ったクルマは、同社の成長ぶりを象徴する高級車。全長4875mmの堂々たるボディにV6エンジンを搭載する「XG」シリーズだ。2003年の日本における販売台数を2426台まで押し上げたヒュンダイの、約3割を担う中核モデルである。個人的にも、都内で時折見かける個人タクシーの存在が気になっていた。
テストしたのは、従来からある3リッターモデル「XG300」を下支えする形で、2004年2月に投入された2.5リッター版「XG250」。ベーシックグレードとはいえそこは高級車、期待されるだけの装備はそこそこ備わっている。にもかかわらず、220万2900円からという価格は、やはり驚異というほかない。たとえば、「トヨタ・クラウン2.5ロイヤルエクストラ」(330万7500円)に較べて、すくなくとも100万円以上は安いのだ。

乗ってみると意外なほど悪くない。筆者も人の子、乗りながらついつい「アラを探している」自分を発見するのだが、それでもコレといった欠点は見つからず、かえって戸惑いを覚えたほどだ。ただし、足まわりだけはいただけない。“並み”のペースならOKだが、ある程度以上になると弱点が露呈する。
つまり、普通に使ってさえいれば、これほど“バリュー・フォア・マネー”感のあるクルマもすくない。



【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
ヒュンダイ「XG」シリーズは、小型ハッチバック「TB」やSUV「サンタフェ」など、6モデル輸入されるなかの最上級車。日の出の勢いに惑わされがちだが、ヒュンダイのクルマはモデル寿命が比較的長く、XGも本国のデビューから数えてすでに6年、日本で販売が開始されてから3年が経った。それだけに随時改良が行われているようで、前後して乗った2003年モデルの「XG300L」に較べて、細部の仕様もさることながら、乗り味についてもすくなからず印象の違いが認められた。総じて、2.5リッターの方がよかったのである。
ボディサイズは“クラウン/セドリック級”だがホイールベースはやや短く、いっぽう全幅は対米輸出を考慮してか1825mmもある。
前輪を駆動するパワーパックはエンジン、トランスミッションとも自社製。いまやヒュンダイは、資本提携関係にあるダイムラークライスラーや三菱と組み、次世代の4気筒エンジンを共同開発し、それを主導する立場にあるのだ。XGはV6DOHC24バルブを搭載し、2.5リッターは167ps/6000rpmと22.9kgm/4000rpm、3リッターは184ps/5500rpmと25.8kgm/3500rpmを発生するが、数値はやや控えめといってよい。ATはコストの関係で2.5リッターが4段、3リッターが5段が組み合わされる。サスペンションは、前ダブルウィッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイルの4輪独立懸架。車重は2.5リッターが1570kgからと、外寸のわりに軽い。
(グレード概要)
前述した「そこそこの装備」はこんな内容である。電動格納式ドアミラー、プロジェクターヘッドランプ、フロントフォグランプ、レオスタット、フロント/リアセンターアームレスト、オートエアコン、CD/MD一体式6スピーカーステレオ、6:4分割可倒式リアシート、前席エアバッグ、EBD付きABSなどなどだ。ごくごく標準的だが、かといってこれで困ることもあるまい。テスト車には本革シートとシートヒーターのセットオプション(10万5000円)が付いていた。
「XG250」の上級モデル、「XG300」(278万400円)と「XG300L」(サンルーフの有無により309万5400円/315万8400円)は、上記のオプションを標準化。さらに、シートがパワー仕様になるほか、トラクションコントロールと前席サイドエアバッグ、クルーズコントロール、トリップコンピューターが加わる。XG300Lはシート調整などがメモリー付きになったりするが、逆にいえばその程度。お買い得感は“素”のXG250が圧倒的だ。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★
間近で見るXGは立派である。ただし、立派ではあるものの「どこのクルマかわからない」というのが正直なところ。ビュイックやマーキュリーに似た端正なグリルが、幅広のボディにマッチしてアメリカ車を彷彿させる。かと思えば、緩く垂れたテールは、明らかにイギリス車のそれを意識したに違いない。一方、ふつう“顔”づくりに欠かせないエンブレムが見当たらないのは、不思議といえば不思議だ。ユーザーから寄せられた購入理由のひとつに「肩の力が抜けるクルマ」があったというが、むべなるかなである。

無国籍な印象は室内についても同じ。やや古い日本車に近く、高級車だからと革や木が本物&フェイク入り乱れて多用される。ひとつ確実なことは、見た目のクオリティが着実に上がったことだ。数年前の「エラントラ」で感じた、素っ気なくもプラスチッキーな印象は影をひそめた。たとえば、木目はあくまで“調”であって本物ではないが、一見して偽物と見破れるほど安っぽくない。
ただし、子細に見れば、依然として詰めの甘さが指摘できる。せっかく本物なのに、ツルツルした感触がウレタン製と錯覚させるレザーステアリングホイールや、暖房の効きが弱めのエアコンなどだ。パワーウィンドウのオート機構が、運転席のダウン方向のみなのも不便。スイッチの位置が遠く、目で確認しないと誤って後席用を押してしまいがちだった。
(前席)……★★★
スペースは充分、シートサイズは余裕があり、これといった不満はない。すべて手動ながら、ポジション調節の幅も広い。ベージュの内装色も手伝って、明るく居心地のよい室内である。
ただし、テスト車固有の不具合かどうか判然としないが、スライド調節した際シートレールとの噛み合いにガタが認められた。ステアリングホイール同様、「革っぽくない革」のシートも好みが別れそうである。無臭なのはいいかもしれないが、やや柔軟性に欠け、風合いが乏しいのである。
(後席)……★★★
FF大型サルーンらしい圧倒的なゆとりは感じられないが、スペースはまずまずである。レッグルームこそ「マークII」並みに留まるが、ヘッドクリアランスは充分で、腰まわりの余裕はさすが。1.8m超の全幅を誇るだけのことはある。中央に引き出すアームレストはサイズもつくりも立派で、このクルマがどこを向いてデザインされているかがわかろうというものだ。もっとも、そのわりにCピラーが前傾気味で、乗り降りに際して上体をやや屈める必要があるのは惜しいところだが。
(荷室)……★★★★
前後ともオーバーハングが長めのプロポーションによる、いちばんの恩恵を蒙っているのがこの部分。フロアがやや高めというわずかな欠点こそあるが、それ以外に関して文句のつけようがない。前後長は、上体を投げ出してもバルクヘッドに手が届かないほどだ。そのバルクヘッドはトランクスルーで室内と繋がり、リッドはバンバーレベルから開いて使い勝手もよい。フロア下には、レギュラーサイズのスペアタイアが収まる。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★
特に急ぐでなく、かといって必要なペースは保つ走り方であれば(つまり常識人の常識的な走り方ということだ)、一見非力に思える2.5リッターV6の動力性能は充分以上である。端的にいえば、あえて過激な前後Gを求めないことだ。その限りでは、ボトムエンドでやや不足気味のトルクや、トップエンドでタレ気味のパワーが気にならないばかりか、6気筒ならではのスムーズさと静粛性を楽しむことができる。メーター読みの100km/hはDレンジ/4速で2250rpmと、6500rpmのリミットに対して余裕があり、クルージングは平和そのものだ。

ただし、せっかちなドライバーは、以下の2点が気になるかもしれない。
ひとつは、キックダウンで得られる2速の守備範囲上限が低く、必然的に多用される3、4速の瞬間的なパンチが効かないこと。もうひとつは、Dの位置から横にスライドして選ぶシーケンシャルモードの操作性だ。レバーがストッパー(と外側のコンソール)にぶつかってゴツンと音を立てるのは、いささかデリカシーを欠く。むろん、そんなときは素早い(つまり多少は乱暴な)動きに決まっているが、だからこそ、それを躊躇させるような要素は極力排除したいものなのである。失礼ながら、今後彼らがさらに学ぶべきことがあるとすれば、まさにこうした“マン・マシーン”のインターフェースこそだろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
そのよし悪しは別にして、乗り心地はバネの柔らかさに重きを置く古風な考え方だ。当然、街なかで強いハーシュネスを感じることなく、概して良好である。
ただし、それと引き替えにダンピング、特にフロントの伸び側が不足気味。タウンスピードをやや上まわる速度域ではノーズの上下動が顕著になり、同乗者が酔いを訴えることもあった。けれども、一旦そこを乗り越え、本格的な高速走行に移ると、収束してしまうから不思議だ。

ハンドリングは、パーキングスピードからワインディングロードに至るまで、終始重めのステアリングフィールが、頼り甲斐のある印象を与える。しかし、いざ飛ばしてみると、実はあまり得意でないことがわかる。日本仕様はタイヤに「ミシュラン・エナジーMXV4プラス」を選ぶなど、気を遣ってはいる。だが、それ以前に、フロントサスペンションもしくはサブフレームの剛性とロケーションが充分ではないらしい。接地感に乏しく、ハードコーナリングでフロントがドリフトアウトしかけたり、バンプステアしたり、横っ飛びしたり、ステアリングにキックバックを受けたりするのは、すべてそのためと思われる。問題はもっぱらフロントに限られ、リアは前輪の軌跡を忠実にトレースするだけだ。
ブレーキの耐フェード性も十分とはいえないだろう。箱根は、日本の自動車メーカーがブレーキ耐久テストを行う、つまり過酷な状況である。テスト車の走行距離が浅く、“焼き”が入っていなかった事情もあるとはいえ、フェードしたのは事実である。

(写真=峰昌宏/2004年4月)

【テストデータ】

報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年3月8日〜12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2004年型
テスト車の走行距離:689km
タイヤ:(前)205/60R16(後)同じ(ミシュラン エナジーMXV4プラス)
オプション装備:本革シート+フロントシートヒーター(10万5000円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(3):高速道路(6)山岳路(1)
テスト距離:526km
使用燃料:76.4リッター
参考燃費:6.9km/リッター

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