第121回:モーターサイクルショー報告(その3)バイク業界は時計業界に似てるかも?

2004.04.18 エッセイ

第121回:モーターサイクルショー報告(その3)バイク業界は時計業界に似てるかも?

■アッチこっちへ行く名門ブランド

ところで今度、某スクーター誌にちょびっと寄稿するハメになった俺。だからスクーター関係を中心に取材していたのだが、一番面白かったのは“バイク業界のブランド再構築”に関する話だった。「ドゥカティ」とか「トライアンフ」とか「MVアグスタ」とかね。『MOTO NAVI』等の読者様には、いまさらって話題かもしれないけどさ。

だいたい、この手のブランドがいつ、どこで復活したか知らなかったのよ。たとえば「MVアグスタ」。1940年代にレース活動を開始したイタリアの名門レースブランドなんだけど、76年にレース活動を停止。77年には生産ラインも停まった。それがさ。その後、イタリアを代表するモーターサイクルメーカー団体のカジバグループに買われ、97年に復活してたのね。

そのときにデビューしたのが、レーサーレプリカとも言うべき「F4」シリーズで、今回はソイツの最新1リッター直4バージョン「F4 1000 タンブリーニ」が陳列されていた。
これがさ。驚くことにフェラーリF1の技術「ラジアルバルブ」を採り入れてんのよ。コイツは構造を見れば一目瞭然、4本のバルブの角度が、中心からすこしづつずらしてあって、混合気流入時に自然とスワールをつくるというもの。頭イイのと同時に、実にカッコいいメカニズムなのであーる。

それから「トライアンフ」ね。コイツは50年代以降に速かったイギリスのバイクメーカーで、昔なら2気筒エンジンが有名。
そしたらさ。ココは一度潰れて80年代にイギリスの不動産王、ジョン・ブローワに買われ、90年代に復活してたんだって。そのときにキーとなったのが「並列 3気筒エンジン」。これがなにを言わんとするかというと「街乗り中心」ということだ。そ、4気筒ほどシビアじゃなく、2気筒ほどダルくない。その中間の性格。いわばBMWのツーリングバイクのようなイメージだろうか。そこそこの速さと、そこそこの粘りを備えているという。
今はネオクラシックなデザインもあって、それなりに復活しているらしい。なんせ今回、2.3リッターエンジン(!)の「ロケットIII」なんてモデル投入してんだもん!!

それから「ドゥカティ」。コイツは70年代にカジバグループに入った後、98年にテキサスパシフィックってアメリカ系の投資家グループに買われてたんだって。知らなかった〜。で、今、日本でも年4000台レベルを販売と、かなり成功してんのね。

■トコトン“趣味”

ってな具合に、ほとんどしっちゃかめっちゃか、アッチ行ったりコッチ行ったりしてるバイクブランドなんだけど、驚くべきはそれなりに個性的な技術が付加されていること。単なるレトロデザイン、レトロテクノロジーを売りにしたものじゃないのだ。

それって実は、機械式時計の世界に似てて、たとえば90年の「ランゲ1」で復活した「ランゲ・アンド・ゾーネ」は独特のデザイン、独特の日付表示を持ってたし、最近、ムーブメント(時計でいうエンジン)メーカーとしてだけでなく、時計メーカーとして伸びてる「ゼニス」は、「エルプリメロ」って名作ムーブメントを、文字盤に窓を付けて見せる手法を取り入れた。

どちらもトコトン“趣味”の世界なのよ。個性的なフォルムに加え、個性的技術があったら最高。不思議と似てますな。ってなわけでもうすぐスイスで行なわれるバーゼル&ジュネーブの時計ショー。タイトスケジュールの弾丸出張してきたので、いずれご報告します。

(文と写真=小沢コージ/2004年4月)


第121回:モーターサイクルショー報告(その3)バイク業界は時計業界に似てるかも?
2.3リッター並列3気筒(142ps/5750rpm、20.4kgm/2500rpm)を積む「トライアンフ・ロケットIII」。車重320kg、2.25kg/ps(!)のパワー・トゥ・ウェイトレシオは、(フェアな例ではないが)「ランボルギーニ・ガヤルド」(2.86)、「フェラーリ・チャレンジストラダーレ」(2.78)を凌ぐ。
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「トライアンフ・スラクストン」のカスタムモデル。
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「トライアンフ・デイトナ600」
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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』