【スペック】全長×全幅×全高=4765×1800×1550mm/ホイールベース=2830mm/車重=1640kg/駆動方式=FF/2.4リッター直4DOHC16バルブ(200ps/6800rpm、23.7mkg/4500rpm)/車両本体価格=273万円(テスト車=349万6500円)

ホンダ・オデッセイ アブソルート(5AT)【ブリーフテスト】

ホンダ・オデッセイ アブソルート(5AT) 2004.04.06 試乗記 ……349万6500円総合評価……★★★★強化シャシーに専用エンジンを積む「オデッセイ」のスポーティグレード「アブソルート」。別冊CG編集室の道田宣和が、身内のライバル「アコードワゴン24Tスポーツパッケージ」と比較しながら試乗した。


別のところに行っている

「アブソルート」の専用色「ミラノレッド」が人を惹きつけたのか、街では注目の的だった。しかも、その眼差しはかつてスポーツカーに向けられたように熱かった。「オデッセイ」そのものがガラッと変わったうえに、“エアロ”のアブソルートときては、窓越しに覗いてみたくなるのも無理はない。ともあれ、新車効果は上々である。
それにしても、ホンダはもはや、このクルマを“真っ正直なミニバン”として売るつもりはないらしい。たしかに、カタログには依然としてミニバンと大書してあり、その気になれば最大7人が乗れるピープルムーバーであることに変わりはないとしてもだ。
新型の開発にあたってより重点が置かれたのは、ドライバーズカーとしての雰囲気づくりと使い勝手である。その象徴が「立体駐車場にも入れる」1550mmの全高だ。エアロパーツも、そしてオプション設定ではあるが、スポーツカー顔負けのバケットシートを用意したのも、その表れに違いない。
自ら種をまいておきながら、気づいた時にはもう別のところに行っている。いかにもホンダらしいクルマではないか。

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
ホンダが今日あるのは、オデッセイのお陰といっても過言ではない。初代は自他ともに認める和製ミニバンのパイオニアであり、販売面でも大成功を収め、その後の怒濤のような新車攻勢の先駆けとなった。2代目は、1代目のコンセプトを継承・発展させた、いわゆるキープコンセプト型だったが、3代目となる今回は、ミニバンとしては異例に低いボディが特徴である。旧型に比べて80mm低い全高は、偏平燃料タンクとコンパクトなリアサスペンション、薄型ツインのマフラーによって、床を低めることで実現した。それでいて、室内高が旧型に比べて5mm高いのは、マジックというしかない。全長4765mmは充分に長いが、それでもフロントオーバーハングの短縮によって、旧型比で10mm短くなっている。
グレードは、下から「S」「M」「L」の3タイプと、スポーティさを売りものにする「アブソルート」の計4車種。それぞれ、前輪駆動のほかに4WDが用意される。エンジンは全車DOHC2.4リッター直4を積むが、Lタイプ以下とアブソルートではチューンが異なり、アブソルートは前者に対して40psと1.5mkg増し、200ps/6800rpmと23.7mkg/4500rpmを発生する(ただし、4WDの場合は190ps/6800rpm、23.2kgmと若干低い)。ギアボックスはLまでの前輪駆動がCVT、それ以外はすべて5段ATが組み合わされる。
となると、ライバルとの比較もさることながら、身内「アコードワゴン」との関係が気になる。いまやオデッセイは、アコードに比べて全長が15mm長く、全幅が40mm広く、全高は80mm高いだけ。そのうえパワートレインも共通となると、両者はどこがどう違うのか、ファンならずとも興味のあるところだ。幸い、テスト車のアブソルート(前輪駆動)をアコードにあてはめると、『webCG』で取材済みの「24Tスポーツパッケージ」に相当するモデル。今回のインプレッションは、そのへんに焦点を当ててみた。
(グレード概要)
Sタイプの231万円(前輪駆動。以下同様)から手に入る新型オデッセイは、全車にテールゲート連動式リモコンドアロックやオートエアコンなど、必要にして充分な装備が備わる。その後はヘッドランプがHID式に、エアコンが前後ツインに進化する、241万5000円の「Mタイプ」を経て、2つの方向に分化。ラクシュリー志向の「Lタイプ」(288万7500円)と、スポーツ志向の「アブソルート」(273万円)とに分かれる。Lタイプには、豪華なパワーシート(3列目も電動格納式に)や“トリプルゾーンコントロール”式エアコンが付く。一方、アブソルートは上記のハイパワーエンジンを確保したうえで、専用チューンのサスペンションと17インチの55タイヤ、VSA(ABS+TCS+横滑り抑制)、アルミペダルを独自に持つ。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
これはまた、素晴らしく未来的な光景だ。昼間でもダークな黒一色のコクピットから浮かび上がるのは、メーターをはじめとするディスプレイ/情報系の燃えるような赤と、ステアリング、シフター、ペダルなど、操作系のそこここに散りばめられた鈍い金属の色。まるで、ケープ・カナヴェラルのNASA司令室にでも迷い込んだかのようだ。うーむ、なるほど、デジタル世代ならずとも一度この雰囲気に浸ると、ハマってしまいそうな気配がある。
できればテスト車のように、35万7000円と少々お高いけれども、純正オプションのHDDナビを付けるといい。ステアリング脇に生えたジョイスティック風のシフターはシリーズ共通だが、さらにその横に控える花弁のようなナビ専用のスイッチが、未来感を一気にブーストするからだ。ただし、そうした演出の余波を受けてか、手前に大きく湾曲したダッシュボードの中央下端に付く灰皿などは使いづらい。
(前席)……★★★★
これまで、ピープルムーバーのドライバーは、いわば“車内的弱者”であった。後席で無頓着に楽しむ家族や仲間から疎外され、ただ黙々と運転手を務めるだけ……。けれども、アブソルートの場合はもしかしたら逆かもしれない。いかに広くて乗り心地がよかろうと、トンネルのような空間のなかで前後左右にGがかかれば、車内の“快適重心”が移動するのは必至である。ドライバーは嬉々とする一方、パセンジャーは押し黙ってしまうに違いない。
それを、よくも悪くも助長するのが、同じくオプションで付いていたレカロのバケットシートである。アコードと違い、“乗用車”としてはすこしだけ着座位置が高めだから、バックレストが肩までまわり込むほどの本格的な形状にもかかわらず、乗り降りは案外に楽。もちろん、飛ばせば飛ばしたで、サポート感が抜群なのだ。ちなみに、どのくらいの高さに座っているのだろうと周囲を見まわすと、普通のセダンや小型ハッチバックよりウエストラインが若干上。ちょうど、新型「クラウン」と同じくらいの位置だった。
(2列目シート)……★★★★
全長はアコードワゴンとほとんど変わらない(+15mm)のに、ホイールベースはなんと110mmも長い。もはや、国産車でこれを凌ぐのは「セルシオ」くらいなもの。そのこと自体が、アコードとの違いを余すことなく物語っている。アブソルートは室内がダークなだけに、旧型と比べて気分としての開放感には乏しい。しかし、足下をはじめスペースの余裕は歴然としており、乗り心地そのものもフラットだ。アブソルートはスタビライザーが強化されるはずだが、幸いアコードで目立ったハーシュネス(当たりの強さ、荒さ)は感じられず、マイルドな印象は好感が持てた。
タイヤの違いも、乗り心地に一役買っているに違いない。同じスポーティモデルでも、アコードはブリヂストンのポテンザRE050「215/45R17 87W」とかなり過激なのに対して、こちらはヨコハマ・アスペック「215/55R17 93V」。乗り心地を重視し、大きな荷重に備えてのタイヤ選択なのである。ただし、このタイヤ、ロードノイズは大きめで、特にセカンドシートでは路面の不整を拾う音が支配的だ。
(3列目シート)……
アコードワゴンとの大きな違いは、つまるところ、サードシートの有無にあるはずだ。実際には、ファミリーマンであっても滅多に使わないだろうが、エクストラシートがあればこそ、普段とは別の仲間も気軽に誘えるという心理的な余裕は大きい。
(荷室)……★★★★
サードシートをたたまずとも、小型ハッチバック並みのラゲッジスペースは確保されるが、初代からの美点で、不要な時にはそれをまるごと床下に格納することができ、大型サルーン並みの広くスクエアな荷室が出現する。
ただし、若干の失望もある。すべてのシートを倒した時の絶対的な荷室容量は、VDA法で最大1052リッターと、アコードワゴンの921リッターを14%も上まわる。しかし、セカンドシートの畳み方が少々複雑で、しかも完全フラットにはならず、倒したシートの間を橋渡しするボードも重量物に耐えられそうにないからだ。この点では、アコードの方がはるかにスッキリ、ハッキリしている。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★
ホンダのエンジンらしくよくまわる。とはいっても、200psと23.7kgmを発生するエンジンにとって、アコードよりさらに90kg重いオデッセイでは、かなりこたえるとみえる。アコードではちょっと元気すぎるほどだったのに、オデッセイではそうした印象がない。全体としてはよく走り、必要にして充分なパワーではあるものの、逆に本来もっともトルクが厚いはずの4000〜5000rpmでトルクが薄い感じがした。つまり、ここ一番というところでアコードのようにはいかず、やや期待を裏切るのだ。メーター読みの100km/hが5速で2050rpmと、ギアリングが事実上変わらないことも一因らしい。
もっとも、エンジンがスムーズなことは相変わらずで、ステアリング脇にあるシフターも手首の捻りだけで操作できる小気味よいもの。ギアをマニュアルモードでカチャカチャと切り替えながら走るのも、それはそれで楽しい作業といえるだろう。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ロールはまずまずの範囲内に抑えられている。ステアリングは革巻きでしっとりと手に馴染み、アコードで顕著だった(荒れた路面での)進路の乱れもない。けれども、なぜかアコードのような面白さ、痛快さに欠ける。おそらく、この手のクルマとしては結構な横Gを出せるわりに、アイポイントが高めなので、両者のバランス感のちょっとしたズレが、ある種の気持ち悪さとして感じられるのではないか。したがって、真っ直ぐ走るぶんには、イメージどおりの“マシン”を務めあげる。
乗り心地がいいのはすでに述べたとおり。角のないスムーズさとフラットさが特徴だ。あいにくサードシートだけは試さなかったが、フロントシートでもアコードを凌ぐのは間違いない。

(写真=清水健太/2004年4月)



【テストデータ】

報告者:道田宣和(別冊CG編集室)
テスト日:2004年1月21日〜26日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2562km
タイヤ:(前)215/55R17 93V(後)同じ(ヨコハマAspec)
オプション装備:HDDナビゲーションシステム(35万7000円)/プレミアムサウンドシステム(14万7000円)/レカロ製バケットシート(13万6500円)/AFS(5万2500円)/コンフォートパッケージ(トリプルゾーンコントロール・フルオートエアコン+オートライトコントロール+熱線入りウィンドスクリーン/7万3500円)
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(7):高速道路(3)
テスト距離:405.0km
使用燃料:54.18リッター
参考燃費:7.5km/リッター

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