第109回:「ゴルフV」でチューリッヒまで それでも残った「ゴルフっぽさ」が凄い(前編)

2004.03.26 エッセイ

第109回:「ゴルフV」でチューリッヒまで それでも残った「ゴルフっぽさ」が凄い(前編)

 
第109回:「ゴルフV」でチューリッヒまで それでも残った「ゴルフっぽさ」が凄い(前編)の画像
【スペック】
ゴルフV 2リッターFSI:全長×全幅×全高=4204×1759×1485mm/ホイールベース=2578mm/車重=1279kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(150ps/6000rpm、20.4kgm/3500rpm)
【スペック】
	ゴルフV 2リッターFSI:全長×全幅×全高=4204×1759×1485mm/ホイールベース=2578mm/車重=1279kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(150ps/6000rpm、20.4kgm/3500rpm)
ゴルフVのボディは、ねじれ剛性が静的で80%、動的では15%高められたという。
ゴルフVのボディは、ねじれ剛性が静的で80%、動的では15%高められたという。

■多様化の時代

あのですねぇ。昔、とある作家さんが「個性はわざと残すもんじゃない、仕方なく残っちゃうものなんだ」って言ってたけど、ホントだよね。
新型フォルクスワーゲン・ゴルフ、つまりゴルフV。先日、ジュネーブショー取材の際にジュネーブからチューリッヒまでの区間を初めて乗ったけど、まさしくそう思いました。物凄くよくなって、ゴルフとは思えないくらいデカくなってるんだけど、「不思議とゴルフっぽい」。そういうクルマなのだ。

報道によると、「ヨーロッパでゴルフVは“思ったより”売れてない」とか。ジュネーブショーで仲良くなった通訳さんが教えてくれたけど、VW会長のベルント・ピシェッツリーダーさんは、こう言ったという。「これからはゴルフだけに頼る時代じゃない。派生車種も含めて勝負していかないと」。
「(ゴルフ)トゥーラン」はもちろん、シュコダやセアトなど、VWグループ全体で「ゴルフクラス」を盛り上げていこうと。つまりは多様化の時代ということだ。

とはいえゴルフV。ヨーロッパでもゴルフIVの倍ぐらい売れてるらしいけどね。発売直後の2003年7月から12月までの販売台数は、IVが約4万5000台だったのに、Vは約10万7400台。倍以上の伸び。しかし「本当は4倍ぐらいを狙ってた」とか。先代がそんなに売れてなかったとは知らなかったが、とにかく「ゴルフ」は昔と同じではいられない存在なのである。

マルチリンク式となったゴルフVのリアサスペンション。IVはコンパクトハッチの定番(?)、トーションビーム付きトレーリングアームだった。
マルチリンク式となったゴルフVのリアサスペンション。IVはコンパクトハッチの定番(?)、トーションビーム付きトレーリングアームだった。
パワーステアリングはモーターがアシストする電動式。
パワーステアリングはモーターがアシストする電動式。
 
第109回:「ゴルフV」でチューリッヒまで それでも残った「ゴルフっぽさ」が凄い(前編)の画像

■高級化……?

ってなわけでゴルフV。ハッキリ言って様変わりしてます。デザインはもちろん、ボディサイズは長さで55mm、幅で24mm、高さで41mmデカくなった。全幅なんて1759mmもある。全然「コンパクトカー」って感じじゃない。ちょっと小さなミニバンぐらいだ。一緒に乗った自動車ジャーナリストの日下部さんが「今までと同じだったらミニバンと勘違いしちゃうから、このデザインにしたのかもね」って言ってたけど、それも一理あり。
それから、レーザー溶接部分が、全部合わせると70mもあるというボディが凄い。剛性感もさることながら気密性が高く、すごく静か。特にリアシートの静粛性は驚異的で、後ろのピラーのあたりから妙な共鳴音がしまくってたゴルフIIが懐かしいほど。

ハンドリングはまさに「これがゴルフか?」ってくらい軽く、ナチュラル。切った方向に自然とノーズを向け、高速でも低速でも思うように曲がる。昔ほどビシッと「なにがなんでも真っ直ぐ行くぞ〜」って感じの直進性はなくなったけど、けっして怖くなったワケではない。より「思い通りに動くようになった」だけだ。
乗り心地も確実によくなった。リアの新しいマルチリンク・サスペンションの性能が高く、全体を柔らかくできたようで、昔あった「ゴワゴワ感」はほとんどない。

でもね。はたしてそれが「高級化」かといわれると、疑問なんだよね。格別にデザインが先鋭的、前衛的かっていうとそうでもないし、乗り心地がフワフワかっていうとそうでもない。それより「不満がなくなった」と表現する方が適切な気がする。それも、ほとんどあらゆる方面での不満が。
たとえばデザインに「実用車っぽさ」をほとんど感じないわけだし、リアシートは大人が足組んで座れるほど広い。それでいて、トランクは俺の海外旅行用のバッグが縦に積めるほど。(後編に続く)

(文=小沢コージ/2004年3月)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。

ゴルフの他の画像を見るためには、写真一覧をご覧ください。

小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』

関連記事
  • フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/6MT)【試乗記】 2016.1.19 試乗記 220psのエンジンを搭載する「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のスポーツグレード「GTI」に、3ペダルの6段MT仕様が登場。そこに優秀なデュアルクラッチ式AT仕様を避けてまで選ぶほどの“操る喜び”はあるか。箱根のワインディングロードで確かめた。
  • フォルクスワーゲン・ゴルフGTIクラブスポーツ ストリートエディション(FF/6AT)【試乗記】 2016.9.8 試乗記 「GTI」シリーズの誕生40周年を祝う限定モデル「フォルクスワーゲン・ゴルフGTIクラブスポーツ」に、第2弾となる「ストリートエディション」が登場。エンジンやドライブトレインなど、各所に施された独自のチューニングが織り成す走りを試した。
  • フォルクスワーゲン・ゴルフR(4WD/6MT)【試乗記】 2015.10.1 試乗記 280psの高出力エンジンに4WDの駆動方式を組み合わせた「フォルクスワーゲン・ゴルフR」に、6段マニュアルトランスミッション仕様が登場。VWが誇る全天候型ハイパフォーマンスモデルにあえての“人力変速”で乗ることでリポーターが実感したこととは?
  • フォルクスワーゲン・ザ・ビートルRライン(FF/7AT)【試乗記】 2017.2.14 試乗記 「フォルクスワーゲン・ザ・ビートル」のラインナップに、優れた走行性能と環境性能の両立を掲げる1.4リッターモデル「ザ・ビートルRライン」が登場。その走りの印象や乗り心地、燃費の計測結果を報告する。
  • アバルト124スパイダー(FR/6AT)【レビュー】 2017.2.13 試乗記 コアなファンから熱狂的な支持を得ている「アバルト124スパイダー」。でも輸入元は、MTモデルばかりが注目されることに少々悩んでいるらしい。今回は、不遇をかこつ(?)ATモデルに試乗。スポーツカーとしての出来栄えを確かめた。
ホームへ戻る