第104回:「コージのジュネーブショー通信」その2 アウディ和田師匠の金言(前編)

2004.03.22 エッセイ

第104回:「コージのジュネーブショー通信」その2 アウディ和田師匠の金言(前編)

向かって右が、デザイナーの和田智さん。アウディデザインのシニアデザイナーとして、「アバンティッシモ」や「パイクスピーク クワトロ」など、新しいデザインの提案を行う。新型A6は、和田氏が手がけた初の量産車。
第104回:「コージのジュネーブショー通信」その2 アウディ和田師匠の金言(前編)
2004年のジュネーブショーで新型が発表された、アウディのミドルサルーン「A6」
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■デザイナー業界のナカタ

コンセプトカーやニューモデルとか、いろいろ面白かったジュネーブショーだけど、心に残ったのがコレ。俺が一方的に敬愛するアウディの和田智シニアデザイナーとのトークです。

和田さんについては、知ってる人も多いかもしれないけど、数年前からアウディに在籍する日産出身のデザイナー。SUVコンセプトモデルの「パイクスピーククワトロ」とか「アバンティッシモ」とか、超ステキな話題作の線を引いた人物で、一部では「デザイナー業界の中田!」とも呼ばれている。今回のジュネーブでは遂に、アウディは和田さんデザインによる初の量産車作品、新型「A6」を出品したわけ。ま、ヨーロッパの雑誌なんかでは、和田さんの上司にあたる人が表に出てるけどね。
マジなハナシ、これは凄いことよ。新A6はそんじょそこらのニューモデルではない。特徴的なフロントマスクを見ればわかるように、「今後のアウディデザインはこうなる!」ぐらいの提案が込められたモデルなのだ。ただでさえ、アウディは現在のカーデザインを一部ひっぱっているメーカーだというのに。

その超重要モデルを、いくら優秀とはいえ、ニッポン出身のデザイナーが担当したなんて、お世辞抜きで「デザイナー界の中田」だと思う。和田さん以前にも、オペルの児玉英雄さんとか、ピニンファリーナの奥山清行さん、ザガートの原田則彦さんなど、凄い人はいるけどね。
ただ、和田さんは年齢的に俺のちょっと上、兄貴ぐらいの雰囲気だし、なにより人柄がイイのよ。俺みたいなデザインオンチのパープリンにも、優しくわかりやすく、デザイン学の手ほどきをしてくれる。ハッキリいって俺は大ファンです。とにかく下読んで!

アウディのコンセプトカー3車種。左から、「パイクスピーク クワトロ」「ヌボラーリ クワトロ」「ルマン クワトロ」
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ニューA6のリアビュー
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■心の奥底が美しい

小沢:お久しぶりです。
和田:2003年だっけ? 小沢くんと雑誌の取材で会ったのは。
小沢:そうです。取材の後、飲んで寝ててスイマセン。
和田:もうわかったよ、君の芸風は(笑)
小沢:ところで、新しいA6は、和田さんの初の量産車だそうで。おめでとうございます。カッコいいですね。デザインオンチの俺が言ってもイマイチ説得力ないですけど。写真ではちょっとエグいか? と思ったけど、実物は素直にカッコいい。
和田:ありがとう、うれしいよ。
小沢:ところで、先日どっかで聞いたんですけど、大型化した“ダブルグリル”に代表されるアウディの新しいデザインテイストって、「キレイだけど印象が残らない美人」ではなく、「ブスだけど美人」を狙ったって説があるんですが。たとえば、ジュリア・ロバーツって口がデカいでしょ?(このヘンで和田さん怪訝そうな顔)……って「ブス」なんて言ったら怒ります?
和田:怒る(笑) アレはブスじゃない。
小沢:スイマセン。
和田:ではお教えしましょう。ニューA6のデザインは、ドイツ語で言うと「wahre Schönheit」。日本語に訳すと「心の奥底が美しいもの」なんです。かみ砕くと、美しいモノはハデではない、装飾じゃない、ってこと。これは元々、ドイツのバウハウスから来た思想です。A6のボディラインはシンプルでしょう。プロポーションが優れている場合もあるけど、とにかく、求めるものは本当にシンプル。数少ない要素を磨きに磨きこんだデザインが、新しいA6。無意味な線や加飾は一切ない。
(後編に続く)

(文=小沢コージ/2004年3月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』