第82回:やらない方がイイ〜!?日本初のWRC「ラリー・ジャパン」は“海外で食う江戸前寿司”なのか?

2003.12.19 小沢コージの勢いまかせ!

第82回:やらない方がイイ〜!?日本初のWRC「ラリー・ジャパン」は“海外で食う江戸前寿司”なのか?

2003年のラリー北海道を走るスバル。ドライバーは、市販車に近いマシンで戦う「PCWRC」にも参戦する、新井敏弘選手。(写真=スバルテクニカインターナショナル)
第82回:やらない方がイイ〜!?日本初のWRC「ラリー・ジャパン」は“海外で食う江戸前寿司”なのか?

■やらない方がいいかも……

ガ、ガビーン!! 驚きました。っていうか、理由を聞いたら「それもそうか……」と納得した部分もあったんだけど。なにって、2004年9月に開催されることが正式決定した日本初のWRC(世界ラリー選手権)「ラリー・ジャパン」。いままで「アジア・パシフィックラリー選手権」に含まれていた、ラリー北海道にまつわるハナシだ。

先日某試乗会に行った時、顔見知りのラリーに詳しい、辛口モータースポーツジャーナリストに会った。で、「ラリー・ジャパン、どうですかね?」と聞いたのだ。ノー天気な俺は、もちろん好意的な返事を期待してね。
そしたら、「ダメだね」ときっぱり。「やらない方がいいかもよ」とまで。ゲゲー、そうきたか。
でも理由を聞いて納得する部分もあった。いわく、「あのコース設定を見ると、本当にWRCの魅力が伝わるとは思えない。特に海外ジャーナリストなんか、メチャクチャになるんじゃないの?」

リチャード・バーンズ操る「プジョー206WRC」@フィンランドラリー。開催国によって、道やまわりの景色はもちろん、観客の性格も違う。フィンランドやイギリスの人たちは、わりとおとなしい。(写真=プジョージャポン)
リチャード・バーンズ操る「プジョー206WRC」@フィンランドラリー。開催国によって、道やまわりの景色はもちろん、観客の性格も違う。フィンランドやイギリスの人たちは、わりとおとなしい。(写真=プジョージャポン)
雪のモンテカルロを走るのは、マルコ・マルティンが乗る「フォード・フォーカスRS WRC」(写真=フォードモーターカンパニー)
雪のモンテカルロを走るのは、マルコ・マルティンが乗る「フォード・フォーカスRS WRC」(写真=フォードモーターカンパニー)

■真のWRCの魅力

それはそうだ。これまでの北海道ラリーは、一部ドロドロのぬかるみ、かつ狭い道で行なわれるため、平均スピードが極端に遅かったという。轍が深くてドリフトできなかった、というハナシもある。さらに、04年はWRC の開催スケジュールが厳しく、経済的理由などから全チームはこない、というウワサもあるのだ。

さらに、WRCはFIAの管理下で行なわれるのだが、そうは言っても日本の領土。一部は公道を使用する。安全を理由に、警察が「観客席をコースから遠ざけ」「コース横断禁止」など、移動を相当制限するに違いない。そのなかで、はたして「真のWRCの魅力」が伝わるのか?
具体的なトラブルが見込まれるのが、ヨーロッパからのジャーナリスト。本場の取材スタイルに慣れた人が、日本の官僚的な規制に出会ったら、いざこざ間違いなし。「だったらやらない方がいい」って意見なのだ。

要するにね。ヨーロッパで寿司食って「これが本物の味」って思われちゃ困るように、日本でラリー・ジャパンみて「これが本物のWRC」って思われちゃ困る、というわけ。
ホテルの従業員やマーシャル、救急スタッフ&病院での、外国人選手、ジャーナリストの受け入れ体制にも、不安が残る。たしかにそれは理解できる。「2004年の1回だけで、存続しなくても困る」という意見もあるし……。

WRCのサブカテゴリー「JWRC」で戦う「スズキ・イグニス Super 1600」。ドライバーはダニエル・カールソン。(写真=スズキ)
WRCのサブカテゴリー「JWRC」で戦う「スズキ・イグニス Super 1600」。ドライバーはダニエル・カールソン。(写真=スズキ)
WRCカタルニアラリーの「スバル・インプレッサWRC」。ラテンの国スペインでは、マーシャルの警告笛が鳴るギリギリまで、コース上でマシンを待ったり、手を伸ばしてクルマにさわったりする人がいる。(写真=スバルテクニカインターナショナル)
WRCカタルニアラリーの「スバル・インプレッサWRC」。ラテンの国スペインでは、マーシャルの警告笛が鳴るギリギリまで、コース上でマシンを待ったり、手を伸ばしてクルマにさわったりする人がいる。(写真=スバルテクニカインターナショナル)

■“一歩前進”は確か

だけどね、俺は思うな。“リアルWRC”ではないからといって、WRCが日本にこないわけにはいかないって。それは、寿司が海外へ輸出されたように、もしくは、柔道がオリンピックの正式種目になったように、日本モータースポーツが間違いなく「一歩前進」するからだ。

カラー柔道着に違和感を感じる方も多いだろう。「青い柔道着ってなに?」と。だけど、それこそが“真の国際化”なんじゃないでしょうか。日本人の舌にはマズい寿司だって、向こうの人がうまそうに食ってたら、それもまたあり!
おそらく、日本の国土の個性を完璧に反映し、オーガナイズされる、面白いWRCが開催されることは、現状では難しいと思う。もちろん、実現できれば理想的だけれど、可・不可のせめぎあいというか、戦いでしかない。

ニッポン警察の頭の硬さを考えると「やめた方がいいんじゃない」という意見もわかる。しかも、WRCはクローズドコースで開催されるF1とは違う。F1なら「鈴鹿」とか「富士」、それぞれがもつキャラクターがあり、ある程度のスペクタクルが見込めるけど、公道開催のWRCじゃ、まさに輸出寿司と同じ。ご当地の素材(=道)による部分が大きいから、ますます、本当のスペクタクルが味わえるか疑問だ。

だけどね。やっぱり期待しちゃうじゃないの。ラリー・ジャパン。もしや“ポッと出”の、日本の道を知り尽くした地元のラリードライバーが活躍するかもしれない。マラソン中継みたいに、日本独自のアットホームなイベントになるのかもしれない。理想的には、諏訪神社の御柱祭りのスタッフでも呼んできて、「祭りに危険は付き物」って思想を啓蒙できたらいいんだけど。

まずは日本のラリーバカたちのお手並み拝見、ってとこですかね。

(文=小沢コージ/2003年12月)

小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』

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