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【スペック】全長×全幅×全高=4075×1740×1395mm/ホイールベース=2435mm/車重=1160kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4SOHC16バルブ(118ps/6600rpm、14.7kgm/4800rpm)、モーター(20ps/2000rpm、8.0kgm/1000rpm)/燃費=23.0km/リッター(JC08モード)/価格=257万5000円(テスト車=304万4000円)

ホンダCR-Z α(FF/CVT)【試乗記】

ますます、キビキビ 2012.12.08 試乗記 ホンダCR-Z α(FF/CVT)
……304万4000円

ハイブリッドのスポーツカー「ホンダCR-Z」がマイナーチェンジ。“走りの裏技”を得たという最新モデルの実力を試した。

今でも「オッ」と思わせる

早朝。「吐く息が白いなァ」と思いながら待っていると、けっこうな勢いで、真っ赤な「ホンダCR-Z」が路地から飛び出して来た。

“スポーティー"をウリにするクルマらしい登場の仕方……と感心していると、「スイマセン、待ち合わせ場所を間違えていまして」と、『webCG』編集部のSさん。運転席から助手席に移ると開口一番、「CR-Z、なんだか新鮮味がなくなっちゃいましたね」。

ホンダCR-Zが日本で発売されたのは2010年の2月。そう早々と古くなられては困るのだが、CR-Zの精神的祖先(!?)、かつて「サイバー」と通称された1980年代の2代目「CR-X」が最後まで“近未来感"を失わなかったのと比較すると、21世紀のハイブリッドスポーツは、ちょっと腰高で、天地に厚いゴロンとしたフォルムが鋭さに欠け、うーん、でも、高速道路で後ろ姿を見ると、今でも「オッ!」と思うんだけどなぁ……とブツブツ言いながら、手を伸ばしてクローブボックスを開ける。取扱説明書を取り出すためである。

2012年9月にCR-Zはマイナーチェンジを受け、ホンダのハイブリッド「IMAシステム」搭載車としては初めて、バッテリーがニッケル水素からリチウムイオンに変更された。モーターの最高出力が、14psから20psに上げられ(8.0kgmの最大トルクは同じ)、1.5リッターシングルカムも、113psから118psにアップした(CVTモデル/14.8kgmの最大トルクは同じ)。“運転の楽しさ"を掲げるクルマらしく、パワーアップを果たし、そのうえカタログ燃費まで向上したのだから立派だ(CVT車で、22.8km/リッターから23.0km/リッター)。

テスト車は、オプションのレザーインテリアをチョイス。シートの座面上に縦方向の縫い目が入れられるのは、左右の足を動かしやすくするための工夫だという。
テスト車は、オプションのレザーインテリアをチョイス。シートの座面上に縦方向の縫い目が入れられるのは、左右の足を動かしやすくするための工夫だという。 拡大
2012年9月のマイナーチェンジを機に、ベースとなるガソリンエンジンは、高回転・高出力型の1.5リッターi-VTECに変更された。
2012年9月のマイナーチェンジを機に、ベースとなるガソリンエンジンは、高回転・高出力型の1.5リッターi-VTECに変更された。 拡大
リアのディフューザーは、よりワイド感を強調するデザインに。先進性を演出すべく、マフラーエンドは目立ちにくいブラック仕上げとなった。
リアのディフューザーは、よりワイド感を強調するデザインに。先進性を演出すべく、マフラーエンドは目立ちにくいブラック仕上げとなった。 拡大
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“一瞬で出し切る”秘密のボタン!?

取扱説明書を確認したのは、「一瞬で加速力を最大にする」という、話題の「PLUS SPORT(プラススポーツ)システム」を試すためである。経験者によると、作動にあたっての手順がなかなか煩雑らしい。

作動の条件は……
・時速30km以上
・IMA バッテリー残量表示が4目盛り以上

メーターナセル内に「READY S+」が表示されているのを確認し、
(1)ハンドルにある「S+ボタン」を押す
(2)「READY S+」表示が点滅
(3)アクセルペダルを踏む

……ということである。

「S+ボタン」を押すだけで加速するのではなく、アクセルペダルをスイッチにしたのは、運転者に心の準備をさせる、安全上の配慮だろう。スポーツプラスモードの加速といっても、エンジンのチューンが上がったり、モーターの出力が増すわけではない。エンジンとモーターが最大限の力を出し、CVT車の場合、可能な限り低いギアが選ばれるだけ。つまり、アクセルペダルを床までベタ踏みしたのと変わらない。

できれば、あまり試乗リポートを目にしない「MTモデルのそれ」を報告したかったのだが、「CVT車の方が違いがハッキリ出ますから」とホンダサイドから耳打ちがあったそうで、今回の試乗もCVT車とあいなった。まあ、いまどき3ペダルのMTを繰る人は、S+ボタンに頼らずとも、ギアを落としてアクセルペダルを踏みつけることに、躊躇(ちゅうちょ)したりはしないだろう。


ホンダCR-Z α(FF/CVT)【試乗記】の画像 拡大
運転席まわりの様子。たくさんのスイッチ類が、ステアリングホイールを囲むように配される。
運転席まわりの様子。たくさんのスイッチ類が、ステアリングホイールを囲むように配される。 拡大
ホンダが“秘密のボタン”と呼ぶ「S+ボタン」は、ステアリングホイールの右下に添えられる。
ホンダが“秘密のボタン”と呼ぶ「S+ボタン」は、ステアリングホイールの右下に添えられる。 拡大
大開口のハッチゲートから見た荷室。後席の背もたれを倒すことで、容量を拡大することができる。なお、背もたれは、車内側だけでなく、荷室側からも容易に倒すことができる。
(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
大開口のハッチゲートから見た荷室。後席の背もたれを倒すことで、容量を拡大することができる。なお、背もたれは、車内側だけでなく、荷室側からも容易に倒すことができる。
(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます) 拡大
長い登坂路をひた走る「CR-Z」。坂道発進時に車体のズリ下がりを防止するヒルスタートアシスト機能は、新たにCVT車にも与えられた。
長い登坂路をひた走る「CR-Z」。坂道発進時に車体のズリ下がりを防止するヒルスタートアシスト機能は、新たにCVT車にも与えられた。 拡大
荷室の床下に搭載される、リチウムイオンバッテリー。ニッケル水素電池が用いられた従来モデルに比べ、モーターの出力はアップ(14ps→20ps)。より強力な発進・追い越し加速を実現したとされる。
荷室の床下に搭載される、リチウムイオンバッテリー。ニッケル水素電池が用いられた従来モデルに比べ、モーターの出力はアップ(14ps→20ps)。より強力な発進・追い越し加速を実現したとされる。 拡大

新奇な試みに拍手

「S+ボタン」は、初めてハイブリッド車に取り付けられたころの「EVボタン」みたいなものだと思った。取りあえず試してみたい。実用性うんぬんより、そういう機能が付いていること自体が楽しい。

プラススポーツシステムは、ステアリングを切っていると作動しないし、「READY S+」表示が点滅しているうち(約5秒)にアクセルを踏まないと、オフになってしまう。「システムを作動させるのだ!」という、運転者の強い意志がいる(やや大げさ)。

「READY S+」表示の点滅を視界の隅に捉えてアクセルペダルをちょこっと踏む。と、「1.5リッター+モーター」の全力加速が始まる。交通量が少ない高速道路では、意外や、なかなか楽しい体験で、穏やかなハンドル操作も受け付けるので、緩いカーブが続く登り坂などで、最も効果を堪能できる。「そんなの、アクセルペダルを踏みつければいいだけじゃん」とは、言わない約束だ。

ちょっと驚いたのは、100km/hを超えそうになってもグングン加速を続けること。アクセルを全開させるデバイスだから当たり前のことだが、日本の交通行政の下で、よく実現したものだと思う。そもそも、速度を「殺す」のではなく、「上げる」方向のシステムが認可されたのは、慶賀すべきことだろう。

デジタルのメーター値は、走行視界との焦点差を減らすべく、奥の方に浮かび上がるように表示される。
デジタルのメーター値は、走行視界との焦点差を減らすべく、奥の方に浮かび上がるように表示される。 拡大
マイナーチェンジでフロントグリルは新デザインに。ヘッドランプユニット下端に並ぶLEDポジションライトの玉数は、片側4灯から8灯に倍増した。
【テスト車のオプション装備】
Hondaインターナビ+リンクアップフリー=28万円/レザーインテリア=10万5000円/前席用 i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム=8万4000円
マイナーチェンジでフロントグリルは新デザインに。ヘッドランプユニット下端に並ぶLEDポジションライトの玉数は、片側4灯から8灯に倍増した。
【テスト車のオプション装備】
Hondaインターナビ+リンクアップフリー=28万円/レザーインテリア=10万5000円/前席用 i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム=8万4000円 拡大

CR-Zは、クルマ全体としてもリファインされた印象で、パンチを増した動力系の恩恵もあって、ホンダ得意の「キビキビ」感がグッと増した。あらためて感心したのが、「3モードドライブシステム」でのキャラクターの切り替えで、やや意気地のない「ECON」モードから「SPORT」モードに変更すると、たちまちステアリングの重さが増し、ペダル操作に対するトルクのつきがよくなる。一皮脱いで、スポーティーなCR-Zが現れる。エンジン、ギア、ステアリング、エアコンを電子制御する「ドライブ・バイ・ワイヤー」を採用しているがゆえの豹変(ひょうへん)で、スポーツプラスシステムも、その延長線上にある。

「技術的にできるからといって、ゲーム的デバイスのインフレを起こしていいのか」という考え方もあるが、新奇な試みを率先して搭載するのは、スポーティーなクーペの伝統的な役割でもあるから、目くじらを立てるには当たらない。販売台数を稼ぎにくいこの手のクルマは、デビュー当初の熱気が冷めると、ともすると放っておかれ、ラインナップのなかで朽ちててしまいがち。外観だけでなく、中身まで「新鮮味がなくなっちゃいましたね」と言われないため、バッテリーのリチウムイオン化を、まずCR-Zからスタートしたホンダの判断に、拍手!
ただ、今回のプラススポーツシステムは、近い将来、きっと「かつてあった珍機能」のひとつに入れられることだろう。

(文=青木禎之/写真=小林俊樹)

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