「UAEデザートチャレンジ」第4レグ(最終日)

2003.11.01 自動車ニュース

「UAEデザートチャレンジ」第4レグ(最終日)

2003年10月20日〜24日の日程で開催された、「FIAクロスカントリーラリー・ワールドカップ」第8戦「UAEデザートチャレンジ」。最終日の第4レグを終えて、砂漠を制したのは? モータースポーツジャーナリスト古賀敬介のリポート。

「UAEデザートチャレンジ」第1日目“プレイベント”」:http://www.webcg.net/WEBCG/news/000014254.html
「UAEデザートチャレンジ」プロローグラン〜第1レグ」:http://www.webcg.net/WEBCG/news/000014255.html
「UAEデザートチャレンジ」第2レグ:http://www.webcg.net/WEBCG/news/000014257.html
「UAEデザートチャレンジ」第3レグ&パリダカマシンの凄さ:http://www.webcg.net/WEBCG/news/000014281.html




■たったの13分差

2003年の「UAEデザートチャレンジ」もいよいよ4日目、最終の第4レグを迎えました。ここまでのトップは、三菱のステファン・ペテランセル。それを、フォードのディーゼルエンジンを搭載したバギーに乗るジャン−ルイ・シュレッサーが、約13分差で追う展開です。3位には、シュレッサーとクロスカントリーラリー・ワールドカップの王座を争っている、カルロス・スーザ(三菱ストラーダ)がつけています。

第4レグは、UAEの首都アブダビ南方にある「リワ・オアシス」からスタート。途中ふたつのSSを経て、ドバイへと戻るコースです。走行距離は529.45km、そのうちSSの合計距離は393.35kmとなっとります。
トップのペテランセルが、シュレッサーに対して築いた13分の差は、大きいようで意外と小さいもの。パンク、ミスコース、スタックの“トラブル御三家”が発生すれば、アッという間に消し飛んでしまいますから。


ステファン・ペテランセル

2003年のペテランセルは、パリダカ、イタリアンバハでラリーをリードしておきながら、さいごの最後にトラブルが起こって、増岡浩(三菱)に逆転されるパターンが続いている。完全にゴールするまで、安心できない精神状態なんです。ましてや、2番手は“砂漠の妖怪”シュレッサー。百鬼夜行……じゃあなくて、百戦錬磨のオヤジなだけに、不気味なプレッシャーを感じないわけにはいかない。実際、ペテランセルはスタート前「本当に勝てるかどうかなんて、わからないよ」と、ちょいとばかり弱気な発言をしていました。




しかし、いざ走り出してしまえば、ペテ&パジェロエボは好調そのもの。必死に追いすがるシュレッサーをグイッと突き放し、みごとトップでドバイにフィニッシュ! 過去6回バイクでパリダカを制した男は、去年に続きUAEデザートチャレンジ2連覇を達成しました。2位はシュレッサー、3位はグレゴワール・ド・メビウス(BMW X5)。
4位に入ったカルロス・スーザ(三菱ストラーダ)は、総合ポイントでシュレッサーを退け、見事シリーズチャンピオンを決定しました。「勝てたのは、よいマシンとサポートしてくれた人たちのお陰です」とは、ナイスガイのスーザ。謙虚に喜びを表現したのでした。


空力を追求したことがうかがえる、日産「ピックアップ」のサイドビュー。

■王者三菱 vs. ライバル

とまあ、このようにして、今回も三菱パジェロエボリューションが勝利を収めました。とはいえ、去年、そして今年前半ほど、そのアドバンテージは大きくないのでは? という気がします。パジェロエボが、依然最強であることに変わりはないけど、日産ピックアップやBMW X5も、確実に力をつけてきています。

日産は、風洞実験で空力を見直し、ピックアップに凄まじいデザインのカウルと、日本のチューニング小僧もブッ飛ぶようなGTウイングを装着。ボディは全幅を拡げ、リアオーバーハングを削って、ディパーチャアングルを確保しました。赤い砂漠を走る姿は火星探査機のようで、サンダーバード世代の僕にジャストミート。エンジンも低速トルクが太り、「ドライバビリティが上がった」と、アリ・バタネン先生もおっしゃってます。今回はドライブシャフトのトラブルで戦列を去ったものの、全体的なスピードは間違いなくアップしていました。


BMW X5のツインターボディーゼル

BMW X5は、3リッターディーゼル・ツインターボのパフォーマンスがさらに向上。約61kgm以上の最大トルクを2200rpmで発生するという、モリモリエンジンになりました。規定により、ディーゼルはガソリンエンジンより、吸気リストリクターの径をかなり大きくできます。エンジンパフォーマンス面では、かなり有利なんですな。駆動系の信頼性が高まれば、三菱にとってかなり手強いライバルとなるかもしれません。

対する三菱パジェロエボも、黙ってはいません。外観的には、02年モデルと較べてリヤウイングが小さくなった程度ですが、中身はかなり刷新された様子。エンジンはさらに低速トルク指向が強まり、SSで聞こえるエンジン音から、上までまわしていないのがわかるほど。吸気系は、インテークマニフォルドを金属からカーボン製に変更。高効率&軽量化を断行しました。さらに、スタビライザーを特殊なシステムでコントロールしている模様です。詳しく見せてはくれませんでしたが「コーナリング性能は格段に上がった」と、増岡選手がコメントしています。また、ミキ・ビアシオンのマシンにのみ、新しいサスペンション冷却システム(ファンで冷却する空冷式)が装着されていたので、パリダカ本番では全マシンに採用される可能性もあるでしょう。


日産「サファリ」で18位完走を果たした池町佳生選手

■盛り上がるパリダカ

1月1日に始まる2004年の「パリ・ダカールラリー」には、これら3ワークスのマシンとシュレッサーのバギー、そして今回は出場しなかったフォルクスワーゲンのニューマシン、「トゥアレグ」が加わる予定。なんだか、久々にパリダカが盛り上がる雰囲気を感じます。うがった見方をすれば、各社とも利益効率の高いSUVのプロモーションが目的でしょうケド。
とはいえ、僕らにとっては、増岡浩選手をはじめとする日本人に頑張ってもらいたいところ。今回のUAEに、日産「サファリ」(パトロール)でジュニアチームとして参加し、18位完走を果たした池町佳生選手や、同じく日産ジュニアの三橋淳選手など、元ライダー勢がパリダカに4輪で出場する予定。頑張ってもらいたいもんです。


エンツォとマダム

ドバイの高級マリンリゾート、「ジュメイラビーチ」のヨットクラブには、4日間にわたる砂漠の激闘を終えた選手たちが次々と帰還。1460.4kmのSSを含み、総距離1932.31kmを走りきった彼らの表情は、アラビアの赤い夕日に照らされ光り輝いています。やがてフィニッシュランプには2輪、4輪、そしてカミオン(=トラック)のウイナーが次々と上り、詰めかけた大勢の観客から暖かい拍手が贈られました。ふと見れば、フェラーリ「エンツォ」の上に座って拍手をしているマダム(?)がいらっしゃる。苛酷な砂の世界と、石油でウハウハのゴージャスなムード。相反する要素のマリアージュもまた、UAEデザートチャレンジの魅力なのです。


エンツォと“アラビアンダンディ”

さて、僕もそろそろ“本当の”ホテルへ帰ることにします。4日ぶりのベッドで寝る前に、シャワーで全身の砂を洗い流さないと。なんてったって鼻、耳のなかまで、砂でジャリジャリですからね。

(文と写真=古賀敬介/2003年10月)

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