WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)【WRC 03】

2003.09.09 自動車ニュース

【WRC 03】WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)

2003年9月4日から7日にかけて開催された、世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・オーストラリア。モータースポーツジャーナリスト、古賀敬介による現地リポートもいよいよ最終回だ。
トップを走るプジョーのセバスチャン・ロウブと、2位のスバル・インプレッサ駆るペター・ソルベルグが繰り広げたトップ争いの結末は……。

■ガチンコ勝負

第3レグを迎えた日曜日の朝、パース上空はどんよりとした雲に覆われていた。天気予報によれば、西オーストラリアの天候は曇りのち雨。オーストラリアらしからぬ空模様にちょっとがっくりとするが、この時期は意外と雨が多いという。
ラリー・オーストラリアもとうとう最終日、残るSSは4本。トップのセバスチャン・ロウブと2位ペター・ソルベルグの差は僅か5.1秒。ガチンコ勝負となるのは火を見るよりも明らかという状況だ。

最終日のSSが行なわれるのは、パース南東のエリア。バニングスのビッグジャンプがあることで有名な名物ステージだ。ラリーカーはスキー場の中級者用斜面ぐらい斜度のある坂道を全開で駆け抜け、途中2回の大きなジャンプを経てウォータースプラッシュへと突入。その一部始終を見られるとあって、大勢の観客がステージ脇に鈴なりになる。

よく見ると日本人の姿も多く、その多くがブルーのシャツやジャケットを着ている。どうやらスバルチームの応援ツアーのようで、インプレッサがやってくると大歓声が沸き上がる。

その声援が届いたのか、ソルベルグは最初のステージで2位ロウブを5.7秒離すスーパータイムを叩き出し、0.6秒差で首位へと躍り出た。勝負に出た時のソルベルグの速さは尋常ではない。全盛期のコリン・マクレーを思わせる爆発力がある。

しかし、続くSS22ではロウブがベストタイムを刻み、再び首位を奪取する。凄まじいばかりのスクラッチ合戦。ここまで約328kmの距離を全開で走って差は僅か1.3秒。マシンも違えばタイヤだって異なるのに、この僅差。今年のWRCは本当に面白い。

その1番の理由は、プジョーの戦闘力が落ちてきたこと。
去年の圧倒的な強さが見られない。チャンピオン、マーカス・グロンホルムの力をもってしても優勝することが難しくなってきている。来年デビューするニューマシン、プジョー307CCの開発に全力を投じているため、現行のプジョー206の開発が鈍化しているというのがその最大の理由だ。プジョー307CCは、オープンカー(!)をベースとしたマシン。本来は電動格納式のメタルトップを溶接で固定し、小さな上屋を形作っている。一番のメリットは上屋にガラスエリアが少なく軽いために、重心が下げられること。空力面でもアドバンテージがある。なお、この新型307CCは、9月のフランクフルトモーターショーで一般に公開されるという。

■スバルのソルベルグ勝利!

F1ではフェラーリ&ミハエル・シューマッハーが勝てなくなり、若手のフェルナンド・アロンソやキミ・ライコネンが台頭してきている。WRCでも同じことが起こっているのだ。
プジョーが勝てなくなり、若手のソルベルグ、ロウブ、あるいはフォードのマルコ・マルティンが急成長を果たした。フォードにいたっては、高校生のドライバーをワークスカーのフォーカスに乗せるという大胆な采配も見せた。2003年は変革の年として、長く記憶に残ることだろう。

さて、残るステージはあとふたつ。と、その時、これまで我慢を続けていた空が突如はじけた。大粒の雨がバラバラと降りだし、赤褐色の路面がみるみるうちに暗い茶色へと変わっていく。ラリーマシンはすでにタイヤを交換し、走り始めた後だ。タイヤ選択が勝敗を決する予感がする。リバーススタートにより、ソルベルグが走るのは14番目。これまでのタイムは、マクレーがトップ。

しかし、ソルベルグはまたしても異次元のスピードを見せた。ベストタイムが更新され、マクレーとの差は5.5秒。誰もが最終走者ロウブのタイムを見守る。トップから遅れること9.3秒差の5位。タイミングモニターが冷徹な数字を刻む。勝負はあった。「タイヤ選択を間違ってしまった。路面は信じられないぐらい滑った」ロウブは事実を冷静に受け止め、そう静かにコメントした。

最終ステージはロウブ、ソルベルグともにペースを落とし、マクレーがベストタイムを奪取。そして、ラリー・オーストラリアは、スバルのソルベルグが通算3勝目をあげるという結果で幕を閉じた。
優勝後、ソルベルグは「この勝利を、故ポッサム・ボーンに捧げたい」と言い、帽子を脱いで一礼をした。先日交通事故で他界したスバルのベテランドライバー、ボーン。誰からも愛されたニュージーランド人。彼は間違いなくオセアニア地区のヒーローだった。去年は日本を訪れ、ラリー北海道で優勝を飾ったこともまだ記憶に新しい。きっとボーンも、空の上で豪快に笑いながら、ソルベルグの勝利を祝福していることだろう。

長かったラリーもようやく終わり、パースはすっかりと夕闇に包まれた。高層ビルが美しくライトアップされている。今日は久々に美味いものでも食べに行くことにしよう。インド洋名産の海産物を使った中華なんていいかもしれない。この街の中華街には、かなりレベルの高い店が多い。僕はお気に入りの一軒が休みではないことを祈りつつ、ホテルをあとにした。

(文と写真=古賀敬介)

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その3)
http://www.webcg.net/WEBCG/news/000013912.html
WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)
http://www.webcg.net/WEBCG/news/000013909.html
WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)
http://www.webcg.net/WEBCG/news/000013902.html

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)



WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)

来年デビュー予定のプジョーの最新ラリーマシン。オープンモデル「307CC」がベースだ。

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)



WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)



WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)



WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)



WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(最終回)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。