WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)【WRC 03】

2003.09.08 自動車ニュース
WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

【WRC 03】WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

2003年9月4日から7日まで開催された、世界ラリー選手権(WRC)第10戦ラリー・オーストラリア。モータースポーツジャーナリスト、古賀敬介による現地リポート2回目では、ショー的なスーパーSSから一夜明け、本番モードに突入した模様をお届けする。




WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

■本番突入のラリー・オーストラリア

パース市内の競馬場で行われたスーパーSSから一夜明けた金曜日、いよいよWRCは本番モードへと突入する。最近のWRCは、ほとんどが3日間にわたってSSを行ない、それぞれをレグ1、レグ2、レグ3と呼ぶ。1日目、2日目、3日目と考えればほぼ間違いない。ただし、木曜夜のスーパーSSもレグ1に含まれるから、少々ややこしいが。

WRCの朝は早い。第1号車は朝6時(!)にパースの街を出発し、まずは約70km離れたサービスパークへと向かう。早朝のパースはとても肌寒く、体感温度は日本の初冬ぐらいといったところだろうか。
パースの街を抜け、郊外へと向かう途中で道路に動物の死骸が転がっていることに気がついた。クルマにひかれたカンガルーだ。聞けば、オージー名物のカンガルーは集光性があるという。つまり、クルマのヘッドライトに吸い寄せられるというわけ。大きめのカンガルーに体当たりなどされたら、クルマはまずボコボコになる。エンジンにダメージを受ければ、走れなくなる可能性だってある。この国では、SUVによく見られる頑丈なアニマルガードは、決してエセではないのだなぁと思った。そして、よく見ればあちらこちらに「カンガルーに注意」の標識が。僕は茂みにカンガルーが潜んでいないかどうか十分に神経を使って走ることにした。




WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

■サービスパークは“道の駅”

広大な大地を走ること約1時間。広々とした敷地内に設営されたサービスパークに到着した。ここでは各チームがサービスのテントを広げ、マシンの整備を行なう。サーキットでいえばピットやパドックにあたるところで、ワークスチームは2〜3台、同時に整備できるような設備を整えている。ラリーカーはこのサービスパークを起点に、2〜3個所のSSをアタックしに行き、タイヤやサスペンションなどを交換するため1日に2〜3回戻ってくる。地図を見るとサービスパークを中心に、まるで葉っぱや花びらのようにSSが広がることから、このスタイルを「クローバーリーフ式」などと呼ぶ。昔は都市と都市を毎日移動しながら広範囲にわたって展開されていたWRCだが、最近はこのコンパクトなスタイルが主流。見るほうは楽だけど、ラリー全体のスケールが小さくなってしまったのはちょっとばかり残念にも感じる。


一般者に混じって公道を走るラリーカー。

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

ただし、このサービスパークにいればドライバーには会えるし、おみやげを買うこともできる。レストランやトイレだってあるから、ちょっとした“道の駅”状態だ。また、各ワークスチームの信じられないぐらい素早いサービスをじっくりと見物することも可能。たった15分間でタイヤ、サスペンション、クラッチ、その他もろもろを交換するさまは圧巻だ。ラガーマンのように屈強なメカニックがマシンに鈴なりになって作業する光景は、どこか格闘技を連想させる。

ラリーマシンは朝のサービスを済ませ、一般道を走ってSSまで向かう。そう、たとえモンスターマシンといえども、ちゃんとナンバープレートは付いている。堂々と公道を走れるのが面白い。爆音をとどろかせドグミッションをガキガキと鳴らせながら、それでも制限速度を守って走るWRカーの姿は、なんだかいじらしい。そう、パースはスピード違反の取り締まりが厳しいので、みんな実に“お行儀よく”走っているのだ。
その点、「ツール・ド・コルス」で有名なイタリアのコルシカ島なんて正反対。ラリーカーならずとも、タイヤはキャーキャー鳴かせて走るもの、老若男女全員がそう信じているふしがある。街なかのラウンドアバウトなんて、無数のブラックマークでヌタヌタと黒光りしているほどだ。


8月に引退を表明したベテランドライバー、トミ・マキネン。

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

■レグ1の結果&ビッグニュース!

話が横道にそれた。オーストラリアの場合、SSは多い日で10個所。1日に2〜3個所を見ることができる。最近はセキュリティが厳しく、コースのすぐ脇まで行くことはなかなか難しい。ビニールのテープで隔離された場所から見ることになる。しかし、それでも迫力は十分。マシンがはね上げた小石がビチビチと体に当たり、マニアなら喜びのあまり即失神することだろう。僕は昔、ユハ・カンクネンがはね上げた小石でカメラのレンズが割れてしまったことがある。それでも、すこしだけ嬉しく思ってしまった……。


マルコ・マルティンがドライブするフォード「フォーカスWRC」。

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その2)

レグ1はSSの数が全部で10個所。トップ争いは、シトロエンのセバスチャン・ロウブと、スバルのぺター・ソルベルグという若手ふたりが繰り広げている。2003年に入って、WRCは急速に世代交代が進みつつある。このふたりに加え、フォードのマルコ・マルティンの成長が著しく、“新御三家”といったところ。
ノルウェー出身のソルベルグは明るく陽気で「ハリウッド」と呼ばれている。フランス人のロウブは常に沈着冷静で、ニックネームは「アイスクール・セブ」。マルティンはエストニアの出身でひょうひょうとした性格。3人とも通算2勝づつ挙げており、実力は横一線で並んでいる状態だ。
若手台頭の一方、ベテランは影を薄めつつある。コリン・マクレーはこのところ下位を低迷し、来季はシトロエンから放出される可能性も高まっている。また、スバルのトミ・マキネンは今シーズン限りで引退を表明。4回もチャンピオンをとった帝王マキネンがWRCからいなくなるのは寂しいが、彼の顔に往年の鋭さが見られないのは事実。走りもどこか精彩を欠いている。それでも、今回は調子は悪くないようで、現在までのところトップ4をキープ。引退前に、もう一度光り輝いてほしいところだ。

ラリーは再びパース市内のスーパーSSでフィ二ッシュし、長い1日が終わった。と、ここで衝撃的なニュースが飛び込んできた。なんと、日本でのWRC開催がほぼ決定的になったという! 北海道で来週に行なわれるラリー北海道が、どうやらWRCに昇格しそうなのだ。詳しくはまたお伝えしよう。

(文と写真=古賀敬介)

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)http://www.webcg.net/WEBCG/news/000013902.html

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