WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)【WRC 03】

2003.09.05 自動車ニュース
WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)

【WRC 03】WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)

2003年の世界ラリー選手権(WRC)も、残すところあと5戦となり、ドライバーズ、マニュファクチャラーズ両タイトル争いもいよいよ佳境に入ってきた。
9月4日から7日まで、陽光燦々とふりそそぐオーストラリアを舞台に、第10戦ラリー・オーストラリアが開かれている。現地に飛んだモータースポーツジャーナリスト、古賀敬介が、開幕早々のラリーの模様をお届けする。


「ボールベアリングロード」は、玉砂利のようなもので覆われている。

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)

■“アホさ加減”がWRCの魅力

たおやかに流れるスワン川のほとりに広がる緑豊かな公園。小高い丘の上には近代的な高層ビル群が立ち並んでいる。WRC第10戦「ラリー・オーストラリア」の舞台となるパースは、世界でも指折りの美しい都市だ。広大な西オーストラリア州の州都であるこの都市は、一年を通して気候はとても温暖。南半球ゆえ9月は冬にあたるが、それでも日中は強烈な太陽に照らされ、ポカポカと暖かい。オゾンホールを突き抜けた(?)紫外線に、ジリジリとつむじの部分が焼かれるのを実感できる。
そのパースを起点として、これからいよいよラリー・オーストラリアが始まろうとしている。街なかにはいたるところにポスターや垂れ幕がかかり、気分はいやおうなしに盛り上がってくる。州政府が全面的にイベントをバックアップをしているため、街全体にお祭りムードが漂い、華やいだ雰囲気に包まれている。

WRCといえば、F1 GPと並ぶモータースポーツのトップカテゴリー。ラリーの頂点に位置するビッグイベントだ。日本のスバルを始め、プジョー、フォード、シトロエン、シュコダ、ヒュンダイなど各自動車メーカーのワークスチームがエントリーし、年間14戦を戦っている。
ラリーマシンは市販車の面影を残しているが、その中身はピュアレーシングマシンそのもの。とくにトップマシンは「WRカー」と呼ばれ、1台あたりの製作費は数千万円ともいわれる。そんなスーパーマシンで野山を全開で駆け巡り、時には180km/h近くで大でんぐり返しもやらかすという、“アホさ加減”がWRCの魅力だ。


シェイクダウンテストを待つシトロエンチーム

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)

■ラリー豆知識

ラリーのコースは大きく分けて「グラベル」と呼ばれる未舗装路と、「ターマック」と呼ばれる舗装路の2タイプがある。
そして、このラリー・オーストラリアは典型的なグラベルラリー。赤茶けた道に顔を近づけて見ると、パチンコ玉のような砂利に覆われていることがわかる。普通に歩いていても足もとがズルズルと滑り、気を抜くと一気にステンといく。実際、僕も尻っぺたを痛打した。誰が名付けたのか、通称「ボールベアリングロード」。当然、人間だけでなくラリーマシンもよく滑り、WRCのなかでももっとも難しいラリーのひとつとされている。コースアウト&クラッシュは日常茶飯事で、おまけに道の両わきには木々が立ち並んでいるからタチが悪い。コースアウトしたマシンは固い木々にぶち当たり、まるでピンボールの球のように弾かれ無残な姿へと変身する。しかも、平均スピードはWRCのなかでもトップクラス。ジャンピングスポットもいたるところに用意され、見る側としては最高に愉しめるラリーのひとつだ。


これがスーパーSS

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)

■目でなく耳で走る

ここで、簡単にラリーウィークの流れを見てみよう。選手は、月曜日から「レッキ」という作業を始める。これは簡単にいえばコースの下見で、走りながらコーナーの特徴ひとつひとつをコドライバーがノートに書き記していく。このノートがペースノートと呼ばれるものだ。
ラリー本番では、コドライバーが書き込んだ内容を次々と早口で読み上げ、ドライバーはいわれた通りに走る。自分の目よりも、耳から入ってくる情報を信じて運転するわけだ。有視界走行をしているようでは、トップドライバーにはなれない。道が右に曲がっているように見えても、「左!」と言われれば条件反射的に左にハンドルを切る。それだけにこのレッキという作業はとても重要で、ペースノートのデキが勝負を大きく左右するといえる。レッキは約3日間かけて行われ、水曜日には車検、木曜日にはシェイクダウンテストが実施される。

シェイクダウンテストというのは、レースに例えるのならフリー走行のようなもの。本番前の最終的なセッティングをチェックするのが本来の目的だ。主催者が用意した短いコースを何度も走行し、タイヤやサスペンションと路面のマッチングを見る。最近は観客も見物することが可能となり、何度も走りを見られるのでお得度は高いかもしれない。


スーパーSSの対決はサーキットさながら。

WRC第10戦ラリー・オーストラリア報告(その1)

■SS1はスバルがトップ

そして、ラリーによっては木曜日の夜から早くも本番が始まる。オーストラリアもそのタイプで、市内にある競馬場内で約2.5kmの「スーパースペシャルステージ」(スーパーSS)が開催された。これは、2台が特設コースを同時にスタートし同じ距離を走ってゴールするというもの。勝ち負けはラリーに関係ないのだけど、ドライバーはみな闘志満々。横目でライバルをチラチラと意識し、マシンをスライドさせながらコンクリートウォールぎりぎりまで攻め込む。ゴール地点で2台が競り合うと観客もオールスタンディング。満員のスタンドは異様な熱気に包まれ、手に持ったビールが興奮のあまりあたり一面に飛び散る。
結局、第1ステージ=SS1は、スバル期待の若手ドライバー、ぺター・ソルベルグがトップタイムをマーク。大輪の花火が澄んだ夜空に広がり、ラリー初日は無事に終了した。

木曜日のスーパースペシャルステージは顔見せ興行的な意味合いが強く、本格的なラリーは金曜日から日曜日までの3日間が勝負。いよいよ明日から、チャンピオンシップをかけた南半球決戦がスタートする。

(文と写真=古賀敬介)

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