第58回:緊急マジメ提言!ハイテク逆効果か?“西部警察のアクシデント”について

2003.08.12 エッセイ

第58回:緊急マジメ提言!ハイテク逆効果か?“西部警察のアクシデント”について

■ハイテク化の逆効果

悲惨である。まっことヒサンである。例のテレビドラマ『西部警察』、名古屋ロケにおける観客巻き込み事故。不幸中の幸いは死者が出なかったことだが、悲しいとしかいいようがない。っていうかダサい。

事故車を運転していた若き俳優の罪はもちろん、ロクに観客のコントロールもしなかったスタッフの責任も非常に大きい。だが、果たしてそれだけで済ませていいのかとも思う。
今回の事故は、“クルマのハイテク化による逆効果”が引き起こしたとも思えるからだ。

事故を起こしたTVR「タスカン」は、350psもあるのに車重1トンちょっと。俺たちからみれば、メチャクチャ楽しそうなスペックだが、同時に「こりゃ要注意だな」でもある。
TVR はご存じのように、トラクションコントロールはもちろん、ABSすら付いてない。しかも、エンジンは極太低速トルクが予想される、3.6リッター直6。おまけに、パワーがタイヤにダイレクトに伝わるMT。ちょっとペダル操作を誤れば、ドリフトしまくりは目に見えていた。
でね。発進でいいとこ見せたくって、アクセルちょっと多めに踏むのも予想できたと思うんだよね。キュルキュルキュル! ってさ。本番前、ちょっとやったらうまくできたんじゃないの? 勝手な予想だけど。でもね、やっぱそれは難しいのよ。特に、今みたいにパワーが完全に“ハイテク管理”されたクルマばっかりに乗ってる人には。

■夢のナイフ

『webCG』の読者なら、なにをいいたいかわかってもらえると思うけど、今のクルマが搭載するトラクションコントロールとか、走行中のGコントロール技術ってホント凄い。ナンビャクpsのポルシェだろうがGT-Rだろうが、むしろベンツとかメジャーなクルマになるほど、アクセルベタ踏みしても“なにも起きない”。優秀なヤツになると、ちょっと「キュルキュル」っていって完璧な加速をみせる。
馬力をナメちゃうつくりなんだよなぁ。
いわゆる「切れるナイフ」でも「切れないナイフ」でもない。「切れるけどギリギリで切りすぎないナイフ」。ある意味、夢のナイフ。しかしその分、人間がバカになる。

確かに“スーパーハイパワー車”が出るほど、雨の日も雪の日も走ることを予想するほど、必要な技術ではある。なんだけど、自動車メーカー全部がそれをよしとするワケじゃないし、そういうのがないTVRってのがあってもいいよねぇ。「切れるナイフ」みたいなクルマがあってもさ。

かといって、TVRは「A級ライセンス以上保持してる人しか乗っちゃいけない」とか「モータースポーツ経験者にしか売れない」って決まりをつくるのもつまらない。
一番いいのは、それこそ教習所や学校でサーキット走行、それも「楽しい速さ」を学べるサーキット走行ができればいい。もちろん、ABSもトラクションコントロールも付いてないマシンで。具体的には、「モータースポーツ部」とか「モータースポーツの時間」。
そういう真の意味での“啓蒙ドライビング教室”があれば、こういう事故も多少は防げた気もするのだが……。ケンカや暴力に対してスポーツとしての柔道があり、ボクシングが認められ、学校教育の一環としても行われている。しかし“暴走”に対して“スポーツ”としてのサーキット走行やレースの地位が、日本はあまりにも低い。これは問題だと思うんですけど、いかがなもんでしょうか。

(文=小沢コージ/2003年8月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』