第54回:マイナースポーツチャンピオンを見てわかった イチバンになるヤツぁやっぱスゴい!

2003.08.04 エッセイ

第54回:マイナースポーツチャンピオンを見てわかった イチバンになるヤツぁやっぱスゴい!

■華麗なる戦績の持ち主

こないだ某週刊誌で、カワイイ男の子を取材いたしました。その名は有薗啓剛(アリゾノ ケイゴウ)クン、24歳。見ての通り、ジャニーズとか、若者向けファッション誌『smart』(宝島社)のモデルでもおかしくない。いまどきの“イケメン”なんだけど、実は彼、ななんとバイクトライアルの日本チャンピオン。ちなみに(というかコレが重要)、ボルボ「V70」のオーナー。
1995年から8年連続で全日本チャンプを獲り、96年には世界選手権のエキスパートクラスでチャンピオン。97年には、世界トップ25人で争うマスタークラスで5位と、華麗なる戦績の持ち主である。

でもね、「バイクトライアル」ってなんだ? 俺もそうだったけど、あまり知らないでしょう。ようするに「MTB」ありますね、マウンテンバイク。あれのプロで、種目がトライアル。オートバイのトライアル競技の自転車版ですよ。つまり、ロッククライミングよろしくえっちらオッチラ、おのれのバランス感覚とライディングテクニックを頼りに、設定された難コースを走破していく競技なのだ。見たことないケド。

■コイツはデキる!

「ボルボ・オーナーの取材」ということでインタビューしたんだけど、アタマいいのよ。勉強ができるとかそういう意味じゃなくてね。これに驚いた。

というのも、今まで日本の若いプロスポーツ選手、Jリーガーとかプロ野球の選手を何人か取材したことがあるんだけど、みんな“そっち方面”はパっとしなかった。いっちゃ悪いけど。
「いいクルマ乗ってる」「クルマ好き」っていうからハナシ聞くんだけど、結構な有名選手でも「カッコいいから」とか「先輩が乗ってた」ぐらいで、ほとんど返事がかえってこない。中身がない、経験がない、思い入れがない、アイデアがない。しょうがないっちゃ、しょうがないけど……。

「有薗クンもそうなのかなぁ」と思ってたら、全然違うでやんの。
「道具が積みやすい」などという返事はもちろん、「ヨーロッパの道具と日本の道具の違い」や、それを「チャリンコになぞらえた」り。インタビュアーの俺が欲しい答えを、見事にしゃべってくれる。
「コイツはデキる!」。幼い顔とはウラハラに、そう思わせる男でありました。

■鶏口となるも……

カメラマンのAさんとも話したけど、マイナースポーツのトップって、だいたいそうなんだって。簡単にいうとアタマがよくて、したたか。

考えてみれば当然だよね。マイナースポーツだから、その手のプロは、職業としては保障されない。Jリーグやプロ野球みたいに「一軍になれた」から成功とはいえず、お金はもちろん一般的な名誉もない。女の子が騒いでくれることもない。そこにプロとして飛び込み、トップとして君臨するっていうのは、ある種の“創業者的感覚”があるわけです。「プロになればなんとかなる」じゃなくて「俺がその世界をもっと有名にしてやる!」ぐらいの勢いね。だからマスコミ対応にしてもちゃんとしている、そう思わせるものがありました。やっぱ厳しい環境ってのは大切ですな。男にとって。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」。この言葉をつくづくかみしめた次第でございます。

(文=小沢コージ/2003年8月)

有薗啓剛クンと、愛車「ボルボV70」
第54回:マイナースポーツチャンピオンを見てわかった イチバンになるヤツぁやっぱスゴい!
彼のオフィシャルページもあります。
第54回:マイナースポーツチャンピオンを見てわかった イチバンになるヤツぁやっぱスゴい!

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』