【スペック】全長×全幅×全高=4782×1928×1699mm/ホイールベース=2855mm/車重=2245kg/駆動方式=4WD/4.5リッターV8DOHC32バルブ(340ps/6000rpm、42.8kgm/2500-5500rpm)/車両本体価格=860.0万円(テスト車=955.0万円)

ポルシェ・カイエンS(6AT)【短評(前編)】

流転しないもの(前編) 2003.06.19 試乗記 ポルシェ・カイエンS(6AT)……955.0万円ポルシェ第3の柱として、世界中の注目を浴びて登場したスーパーSUV「カイエン」。ついに日本上陸を果たした同モデルに、『webCG』記者が試乗した。


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テスト車のオプションは、「電動サンルーフ(19.0万円)」「バイキセノン・ヘッドランプ(20.0万円)」「前席&ステアリングホイール・ヒーター(7.0万円)」「CDチェンジャー(9.0万円)」「特別色(チタニウム・メタリック/14.0万円)」が装着される。以上に加え、「フルサイズスペアタイヤ(リアマウントタイプ/26.0万円)」が付く。

テスト車のオプションは、「電動サンルーフ(19.0万円)」「バイキセノン・ヘッドランプ(20.0万円)」「前席&ステアリングホイール・ヒーター(7.0万円)」「CDチェンジャー(9.0万円)」「特別色(チタニウム・メタリック/14.0万円)」が装着される。以上に加え、「フルサイズスペアタイヤ(リアマウントタイプ/26.0万円)」が付く。

SUVを主張する

「SUVのポルシェ」
この言葉が比喩としてではなく、つまり“ポルシェみたいにスポーティなSUV”という意味ではなく、ズバリ“ポルシェのSUV”そのものを指す日がやってこようとは、夢にも思わなんだ。ポルシェが絶不調だった1990年前後、さかんにスクープされた−−多くの場合かなり不格好だった−−“フル4シーターポルシェ”が、大柄なクロカン(5人乗り)のカタチで実現するとは、まさに“君子豹変す”というか“3日会わざれば刮目して……”というか、なにはともあれ“万物は流転する”のである。
「世情に合わせて変化する経営主体に対して、“ポルシェ”というブランドは普遍性をもつのか?」。本稿の主旨をカッチョよく表現すると、そうなる。

「ポルシェ・カイエン」は、遅れてきた……失礼、ニュージェネレーションの北米向けSUVである。だから東京において、駐車場から出して狭い一方通行の道を行くのに、路肩に停まったクルマと反対側に立つ電柱との間を通る際に「非常に気を遣う!」などと箱庭的評価を下すのは間違っている。4782mmの全長、1920mmの全幅は、“SUVのロースルロイス”と形容される「レンジローバー」と、SAV(Sports Activity Vehicle)を標榜する「BMW X5」の中間の大きさだ。1699mmの全高は、3車のなかで一番低い。

見まがうことのない最近のポルシェ顔、ヘッドライトからリアに続くサイドのショルダーライン、そして力強く張り出したフェンダー。グラフィカルな表現に頼りにくいリアビューを含め、カイエンは上手に“ポルシェらしさ”を表現している。
ただ、ひとたび車内に乗り込むと、かつてキザなクルマ好きが“ポルシェを着る”なんて表現したタイトな雰囲気は、ない。ガランと広い。Aピラー付け根に設置されたドアミラー調整スイッチには、上体まで伸ばさないと手が届かない。助手席との間に設けられた、頑丈な逆V字型の握りが、無言でオフロードでの性能を主張する。



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写真をクリックするとリアウィンドウの開閉が見られます。

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ブランドの神様

ポルシェ・カイエンは、4.5リッターV8をツインターボ(450ps!!)で過給する「カイエンターボ」(1250.0万円)と、NA(自然吸気/340ps!)バージョン「カイエンS」(860.0万円)に大別される。いずれもステアリングホイールの位置は左右からえらべ、いまのところトランスミッションは6段ATの「ティプトロニックS」のみとなる(6段MTがカイエンSに加わることがアナウンスされている)。
また、“ターボ”と“S”があるので、いずれノーマル(?)カイエンが登場するのだろう。普及版は、2種類の高性能モデルでカイエンの評価が確定してから、ということだ。
そもそも年間5万台規模のスポーツカーメーカーが新たに8気筒エンジンを開発できたのは、プラットフォームをフォルクスワーゲンと共同開発して、全体のコストを抑えられたからである。914(と924)の苦い思い出をもつポルシェが、スーパーSUVたるカイエンをリリースするにあたり、細心の注意を払って従姉妹車「VWトゥアレグ」との差別化を図るのは当然のことといえる。

ポルシェ・カイエンSに乗った。できるだけバリエーションを見せたい広報車の都合か、スペアタイヤを背負っている。カイエンのテールゲートは、ハッチ全体のほか、リアウィンドウだけでも開閉できる便利なものだから、「リアマウントスペアタイヤホルダー」でその機能を殺してしまうのは、ちょっともったいない気がする。
インパネまわりは、もちろん意図的にだが、従来のポルシェ車そっくり。テスト車は、贅沢なレザー内装。硬めの座り心地と前後にたっぷりした座面は他の一族と同じだが、しかし、背中を左右から羽交い締めにするようなバックレストのサポート感はグッと薄れた。シートは、「スライド」「リクライニング」「ハイト」に加え、背もたれの一部を盛り上げる「ランバーサポートの位置」も電動で調整できる。オモシロイので、出っ張る量を最大にしてバックレスト内を上下に動かしながら、「これならマッサージ機能も追加できる」と悪い冗談を考える。……悪い冗談ならいいのだが。

試乗車は左ハンドル。ポルシェの流儀通り、キーを左手に持ち替えてエンジンをかける。ブランドの神は、以前にも増して、細部に宿るのである。

ドライサンプ方式を採る新開発V8。前後、横方向に45度の斜面でも正常に作動するという。圧縮比は11.5:1。

カイエンターボの透視図。トルクは、プラネタリーギアで、通常、前:後=38:62で振り分けられる。そのうえでPTMは、前後のスリップのみならず、「車速」「横方向加速度」「操舵角」「スロットルペダルの開度」をパラメーターに、電動モーターで多板クラッチを圧着、駆動配分を変動させる。



ポルシェのよう

90度のバンク角ももつオールアルミの4.5リッターV8は、340psの最高出力を6000rpmで発生。吸気側バルブの可変タイミング機構「ヴァリオカム」の恩恵で、2500から5500rpmの広範囲にわたって、42.8kgmの最大トルクを得る。排気量でまさる8気筒のアウトプットは、911の3.6リッターフラット6のそれ(320ps、37.7kgm)を優に上まわる。
気楽に流していてもハミングが聞こえる存在感のあるエンジンは、ひとたびスロットルペダルを踏み込めば、わずか7.2秒で2トン超のボディを100km/hにもちこむ。これは、「ホンダNSX-T」の加速に、0.3秒遅れるだけだ(『CG』計測値)。8本のシリンダー、32枚のバルブを精緻に、かつ軽やかに動かしながら、6600rpmのレッドゾーンに向かって駆け上がるさまは、カイエンに乗っていてなんだが、SUVに積んでおくのが惜しい感じである。余談だが、エンジン開発の投資対効果を考えて、「ニュー928」というべきスポーツカーが登場するのではないか、とのウワサが盛んにささやかれる。

試乗に供されたカイエンSは、オプションのエアサスペンションではなく、コンベンショナルな「コイルスプリング+ダンパー」のサスペンションをもつ。シュアなステアリング、ボディの高い剛性感、しっかりした足まわり。カイエンのステアリングホイールを握っていると、“まるでポルシェを運転しているようだ”。911の運転席を地上から高い位置に置いただけ、というのは褒めすぎだが、自己を模倣したかのインテリアによる幻惑を差し引いても、ポルシェらしい乗り味にすべく、ヴァイザッハのエンジニアはそうとう頑張ったに違いない。印象的なのはロールが少ないことで、首都高速のカーブを曲がるたび、“視線の高いポルシェ”感が、リポーターのココロのなかで高まる。
ただ、255/55R18と大きく重いタイヤを履くこともあってか、舗装の継ぎ目がひどい場所ではハーシュを抑えきれず、特にリアからの突き上げが気になることがあった。まだ、日本向けのセッティングに、余地が残っているのだろう。市販車をローンチしたあとも地道に改良を続けるジャーマンメーカーのことだから、順次、背の低いファミリーの“フラットライド”が移植されることと思う。(後編につづく)

(文=webCGアオキ/写真=峰 昌宏/2003年6月)

・ポルシェ・カイエンS(6AT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000013434.html

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